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Downton Abbey から学ぶ英国的英語表現~シーズン1~

ダウントン・アビーとは

ダウントン・アビーは2010年から2015年にかけてイギリスで制作・放送され、世界的にヒットした歴史ドラマ。
様々な賞で評価され、イギリスでは見ていない人の方が少ないのではないかと言われていました。あのRolling Stonesのメンバーが夢中になり、ドラマの放送時間にはリハーサル中でも家に帰っていたと言われています。
原案・脚本は”ゴスフォード・パーク”のジュリアン・フェロウズ。

舞台は20世紀前半、イギリス、ヨークシャー地方の貴族のマナーハウス”ダウントン・アビー”。第一次世界大戦前後の制度の変化や人々の意識の変化等目まぐるしい時代の移り変わりを描いた作品。

ダウントン・アビーに出てくる英語は実際どうなの?

ダウントン・アビーに出てくる英語はもちろんほとんどがイギリス英語。

私の知っているイギリス人の評価によると、昔ながらの(悪く言えば古臭いしお堅い)英語だけど、基本的にとても丁寧なので失礼になることは絶対ない。だそうです。
英語には敬語がない!なんて嘘。より丁寧な表現は存在します。

劇中で話される英語は大まかにわけて2つ。

・Received Pronunciation(RP)
いわゆる外国人のイメージするお堅い”イギリス英語"。劇中では貴族階級の登場人物と上級使用人が話す英語。Upper-middle classであるマシューとイザベルもRP。
現在は女王、Royal Familyや上流階級、BBC(イギリスの国営放送)が使用している英語
・Yorkshire Accent
ダウントン・アビーはヨークシャー地方の設定なので、貴族以外の登場人物はヨークシャー訛り。特徴がよくわかる登場人物は 1st Footmanのトマス・バローと2nd Footmanのウィリアム、キッチンメイドのデイジーと料理長のミセス・パットモア。
・その他
グランサム伯爵夫人コーラとその母マーサはアメリカ英語(コーラはRP寄りのアメリカ英語)、トム・ブランソンはアイルランド訛り。

アクセントの違いも聞きながら、英語表現(主にイディオム)を見ていきます。
日本語字幕や日本語訳との違いはどうでしょう?
筆者は日本語字幕ではなく全て英語と英語字幕で見ているので、もしかしたら全然違ったりするのかもしれませんね。

できる限りネタバレしないように頑張っていますが、説明の流れで多少なりともネタバレがを含みますので注意してください。鑑賞と同時に読み進めていくと、会話の雰囲気とか使い方も一緒に学べてお勧めです。

それではシーズン6まできっと長編になりますが本編へどうぞ!

*間違いや解釈の違いなどあったら優しくコメントで教えてください。

シーズン1

シーズン1は第一次世界大戦が始まるまでが描かれます。
オープニングはタイタニック号沈没のニュースから。
1912年4月ごろから、1914年8月ごろまでのお話。

・第1話

No rest for the wicked. 
”貧乏暇なしね。”
メアリーのベルを下で聞いたヒューズさんの一言。
直訳すると、悪者には休みはない。元々は聖書の一節から由来しているとのこと。しんどいけどやらなきゃ、的なニュアンス。
There is no rest for the wicked. が正確な表現だそうです。

I didn't run Downton 30 years to see it go ,lock, stock and barrel to a stranger from God knows where.
"私はダウントン丸ごと全部、どこの誰だかわからないような人の手に渡るのを見るために30年間離れていたんじゃないわよ。"
lock, stock and barrel:”丸ごと全部”
ヴァイオレットがクローリー家の財産についてコーラと話しているシーン。
元々は銃の主要なパーツであることから、全部、という意味として使われるようになったそうです。
”全部”をとても強調する言い方です。

There's more than one way to skin a cat.
"方法は一つじゃないわ。"
skin a cat:策を講じる
トマスとオブライエンさんの嫌いになれない悪だくみコンビを象徴するような会話のシーン。
絶対に直訳してはいけません・・・

One swallow doesn't make a summer.
"あまり勘違いしないほうがいい。"
伯爵がトマスに放った一言。
英語のことわざで、1匹のツバメが飛んだからと言って、夏が来たわけではない。つまり一度の出来事は今後の良い状況を暗示するものであるとは限らない、という意味。

* He was too like his mother, and a nastier woman never drew breath.
"彼は母親にそっくりだった、あの堪えがたい女にね"
これは特にイディオムやことわざではないのですが、ヴァイオレットのキャラクターを表すキツーイ台詞として有名なので紹介します。

draw breath: to pause for a moment to take a breath or breathe more slowly
引用元:Cambridge Dictionary

つまり、やることなすことすべてがイラつく、というとても辛口なお言葉になります。

・第2話

For good or ill.
"吉と出るか、凶と出るか"
マシューがクローリーハウスに到着した時の一言。全く違う環境で過ごすことになる今後への不安を表しているようなセリフ。
少し古い言い回しのようで、現在は for better or worseの方がよく使われます。
I will accept their offer, for better or (for) worse. "良かれ悪かれ、彼らの提案を受け入れるよ。"

Are we heck as like !
"もちろんNoに決まってるじゃない!"
マシューをクローリー家の後継者として扱うのかというウィリアムの問いに対するオブライエンさんのお答え。強めの否定を表します。
heck または 'eckは主にYorkshireで使用される方言で、ネガティブな意味での驚きを意味するスラング。hellの代わりに使ったりもするそうです。

heck : an expression of usually slight anger or surprise, or a way of adding force to a statement, question, etc.:
Oh heck! It's later than I thought.
Where the heck have you been?
引用元:Cambridge Dictionary

Are we の部分は問いかけ方によって動詞が変わります。
Did you vote Trump ?  トランプに投票したの?
Did I heck as like!   そんなことするわけない。

He is very full of himself.
"彼はとても自己中心的"
メアリーがコーラ伝えたマシューの印象。
selfishやself-centredの方がよく聞きますね。 

by all means
”もちろん”
クラークソン医師とイザベルの会話。
もちろん、ぜひとも、等の同意の意味として会話でよく使います。

I'm going to pull my forelock and curtsey to this Mr Nobody from Nowhere...
"どこの誰だかわからないやつにへこへこしたりお辞儀したり・・・"
オブライエンさんのいつもの悪口の一部。
Pull (tug at/touch) one's forelock : 自分より上の立場の人に敬意を示す
curtsey : 膝を曲げてお辞儀をする
二つとも割と古い表現のようです。日本のお辞儀はbow。
こちらがcurtsey⇓

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You are sailing perilously closer to the wind.
"越えてはいけない一線があるのよ。"
オブライエンさんの言葉をたしなめるコーラの一言。
直訳すると、あなたは危険なほど風上に向けて帆走している。つまり、危険なこと、ぎりぎりのことをしているという意味になります。
sail close to the wind だけでも同じ意味になりますが、perliouslyがコーラの感情をより表しているように思います。

Don't push your luck.
"それくらいにしておきなさい。"
こちらはトマスを諫めるヒューズさんの言葉。
push one's luckは図に乗る、調子に乗る、という意味。

Yes my lady, no my lady, three bags are full.
"結局はご機嫌取りか。"
イギリスの童謡、Baa,Baa, Black Sheepの一節から。実際は"Yes sir, No sir, -"だが、トマスはコーラのことを揶揄しているので、SirがLadyに変わっている。比較的古い言い回しで、なんでも言いなり、媚びへつらうこと、人を表現する言い方。
ちなみにBlack sheepは(家族の中の)ダメな人、という意味があったりします。

Don't come all high and mighty with me.
"偉そうにするな。"
カーソンさんに会いに来た昔の友人が屋敷の正面玄関から通してくれないベイツに言った言葉。

The lawyer I write to only huff and puff.
"弁護士に手紙を出したんだけど、みんな文句ばっかりで取り合ってくれないのよ"
huff and puff:文句ばっかり!
ヴァイオレットはメアリーに家を継がせるため、法律的に何とかできないか手紙を出したようです。
ちなみに"(運動の後で)息を切らせている"、という意味もあります。

・第3話

Mary won't take Matthew Crawley, so we better get her settled before the bloom is quite gone off the rose. 
"メアリーがマシュー・クローリーを選ばないのであれば、手遅れになる前に相手を見つけないと。"
before the bloom is quite gone off the rose :手遅れになる前に
直訳すると、"花がバラから落ちてしまう前に"。花が落ちてしまったらもうおしまい、というところから。

I'm in the grip of madness.
"そうだ、僕はおかしくなっているんだよ"
 be in the grip of ----  ----に取りつかれている、逃れられないでいる(自分ではコントロールできないものである)

Just the ticket!
"いいタイミングね"
丁度会話の合間にお茶が運ばれてきたシーン。

Old lady Grantham hasn't give up the fight, not by a long chalk.
"ヴァイオレット様はまだ諦めていらっしゃいませんよ、ほんの少しもね。"
not by a long chalk:全然、一切
自分は幸せになれないんじゃないかと落ち込むメアリーにカーソンさんがかけた言葉。
アメリカ英語だとnot by a long shotで使うみたいです。
ちなみにby a long chalk/by long chalks=by far はるかに、断然という意味があります。

Carson and I were just making sure that everything was ship-shape and Bristol fashion.
"カーソンと私は全てきちんと整えられているか確認していたの。"
ship-shape and Bristol fashion:きちんと整えられている
イギリスの都市Bristolは西海岸一の港で、Bristolの造船が作る船は一番の品質であったことから、適切である、きちんとしているなどの意味の語源となったそうです。

・第4話

I don't see why not?
"もちろん。"
Why not?だけでもYesの意味がありますが、I don't see-の方が丁寧。

I'll pay you the compliment.
”これは誉め言葉だけれど”
pay someone compliment- 誰かを誉める、称賛する

Putting it bluntly, do you think Robert has thrown in the towel prematurely?
"正直な話、あなたはロバートがこんなに早く諦めたと思っているの?"
To put it bluntly/Putting it bluntly  "率直に言うと、正直な話、"
throw in the towel 直訳すると大変なことになりますが、ボクシングでタオルを投げると試合をストップする意思表示であることから、諦める、という意味になります。

deed of the gift
土地や建物を無償で譲渡する法的な取り決め。

steady on!
"落ち着いて"
ちょっと古い言い回しだそうです。

You can cut him a bit of slack in his second day.
"まだ2日目だぞ、大目に見てやってくれ。"
新入り運転手のトムを庇うベイツの一言。
cut someone some slack で大目に見る、理解を示す、猶予を与えるなどの意味があります。

If she's got a boyfriend, I am a giraffe.
"もし彼女に男ができたって言うんなら、笑っちゃうわ"
調べても全然出てこなかったのですが、おそらくイギリスのスラング、You are having a giraffe(=You are joking!)から来ているのかなと。
giraffeとlaughが韻を踏むことから。スラングとして定着したらしいです。
違う意味だったら誰か訂正してください。

waiting for her hand and foot
"あれこれ彼女の世話をする"

My imagination is running riot.
"あることないこと考えてしまうわ。"
想像力が暴徒のように抑えが効かない、という意味から。
モールズリーさんの症状が良くならないという話を聞いたヴァイオレットの言葉。

・第5話

You're all thumbs.
"手元があぶなっかしいわよ。"
グウェンの暖炉の掃除道具を倒してしまったデイジーに対しての発言。
all thumbsで不器用な、下手な、苦手な等の意味があります。 all fingers and thumbsも同じような意味があります。

She's barking up the wrong tree.
"誘う相手を間違えているよ。"
bark up the wrong tree:見当違いだ、勘違いをしている
イーディスがマシューに好意があるんじゃないかと思ったイザベル、デートを上手いことセッティングしようと思ったけどマシューは脈なしでした・・・・

Your dear sister is such a harbinger of joy.
"あなたの妹君はいつもいい話を持ってくるのね。"
harbinger of - :何かの兆しや噂を運んでくる物/人(皮肉的表現)
ロンドンでのメアリーの良くない噂を届けてきたロザムンドへの皮肉。

Mrs. Patmore looks ready to eat her alive.
"パットモアさんは彼女をダメにしてしまいそうよ。"
eat someone alive:(相手を強い態度や力で)ダメにする、挫折させる
パットモアさんに怒鳴られるデイジーを見て、コーラの言葉。

Don't keep harping back to that.
"そればっかりじゃない。"
タイタニック号のことを言い始めたデイジーへのオブライエンさんの一言

this and that
”あれやこれや”

She's no used to man or breast in that state.
"彼女はこの状態じゃ仕事は無理でしょうね。"
no use to man or breastで全く使い物にならない、役に立たないという意味。

Is it in aid of anything?
"今夜は何か特別なディナーなの?"
in aid of - は~のための、という意味。直訳すると、”それは何かのためなの?”
グランサム伯爵のディナーに訪問しようと思っているマシューが、特別な場ではないことをメアリーに確認する一言。

Spare me your boasting, please.
"自慢話はいい加減にしてちょうだい。"
ディナーに招いたストララン氏との会話がはずんで気分のいいイーディスにストレートすぎるメアリー。

Mea Culpa.
”私が悪かったよ。”
さすがご貴族様ということでラテン語。英語に直訳するとthrough my fault.

She'll be back in the shake of lamb's tail.
”すぐ戻っていらっしゃいますよ。”
in the two shake of lamb's tailで使用するのが一般的なようです。
すぐに、もうすぐ、などの意味。
シビルが戻ってこないのを心配しているコーラへのオブライエンさんの言葉(オブライエンさん、グランサム伯爵夫人には優しい・・・)

・第6話

Sometimes even to deny these things is only to throw paraffin onto the flames.
"こういったことを否定しても火に油を注ぐだけのことがあるわ。"
throw paraffin onto the flames:火に油を注ぐ。
パラフィンはろうそくの蝋の主成分なので、火に加えると燃え続けることから。

Stranger things happen at the sea.
"何が起こるかわかりませんからね。"

You big softie
"優しいのね。"

He says I've got a touch. He thinks I should pack this in and be a groom.
"彼は僕に才能があるって言うんだ。彼は僕は田舎に帰って結婚するべきだって思ってる。"
touch:才能
be a groom:花婿になる

I don't care a fig about rules
"私は規律なんて気にしないけど。"
not care(give) a fig : 全く気にしない
figはかつて価値のない、または軽蔑に値するものを表す表現に使用されていたそうです。

Blimey, batten down the hatches
"なんだって?何を言い出す気なの?"
batten down the hatches: 万が一に備える、(身)構える
船のハッチを閉めるのは、大雨などに備えるため。そこから派生した言葉。

I could wring Branson's neck.
"ブランソンを殺してやる"
直訳するとwring one's neck: - の首を絞める 
通常実際の意味ではなく、脅しの意味が強い。 日本語のいわゆる殺してやる、とか死ねばいいのに、的な意味合い

I'm afraid Lord Grantham hit the roof.
"グランサム伯爵は非常にお怒りになるわ。"
hit the roof:激怒する

I assume you speak in a spirit of mockery.
"僕はからかわれているのかな?"
a spirit of mockery:他人をよくからかう人のこと

・第7話

I can't take it in.
"信じられない。" 
I can't believe it/ I can't accept itと同じ意味。

The suspense is killing me.
"私の一番知りたくてたまらなかったことよ。"
少し古い言い方だそうですが、知りたくてたまらない、結果がどうなるかわからなくてどきどきするときなどに使います。

I do not like to play the part of Pontius Pilate.
"ピラトのような役割はごめんだよ。"
なんというかもう教養!
Pontius Pilate(ポンテオ・ピラト)は新約聖書でイエスを十字架刑に処す判決を下したローマ帝国時代の総督。
ここではカーソンさんはベイツの処遇の判断に加担したくないと言っています。

Any port in a storm.
 ”溺れる者は藁をもつかむのよ。”
嵐の時は港に着けばどこだっていい、という直訳から。
ヴァイオレットのキレ味抜群すぎる発言。

I know those men of the moral high ground. If she won't say yes when he might be poor, he won't want her when he will be rich.
"ああいう道徳的観念の高い男はね、貧乏になるかもっていうときにYESって言っておかないと、お金持ちになるとわかったら見向きもしないんだから。"
ヴァイオレット様キレキレです。メアリーがプロポーズの返答をしていないことに対して。
moral high ground:モラル、道徳観念が高い立場であること

Thank you, Mr. Cannon Fodder.
"どうも、犠牲になってくれる兵士くん。"
cannon fodder: 使い捨ての人/兵士

He normally comes down on this sort of thing like a ton of bricks.
”彼は普段こういったことには非常に手厳しいんだよ。”
come down on / hit something (someone) like ton of bricks:猛烈な勢いで咎める、大きな衝撃を与える

This should do the trick, my lady.
"それで解決ですよ、奥様。"
do the trick: うまくいく、効果がある、解決する

That's about the size of it.
"まぁ要するにそういう事ね。"
三女シビルには割と甘いグランサム伯爵・・・・

What a long-faced lot.
"しけた顔ばっかり並べやがって"
long face:浮かない顔、悲しそうな顔

Hark at him.
”馬鹿言うなよ!”
イギリスの割と古い表現で、何かを自分のせいにされたとき、それをやった張本人(であろう人)に対しての言葉。

I don't want to cast a dampener on the party.
"パーティに水を差したくないわ。"
cast/put a damper/dampener on -:-に水を差す、勢いを止める

He's keep himself to himself.
"彼は人付き合いが悪くてね"
keep oneself to oneself: 人付き合いを避ける、自分の殻に閉じこもる


第1シーズン7話とは思えないほどのボリュームでしたが、第2シーズンからは20話越え、どうなることやら・・・・

→第2シーズンへ続く

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