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なぜ「メイドインアビス」を読みにくく感じたのか


1.漫画地獄変@秋葉原

ここ数年、ワイ将色々あって燃え尽きてしまっていた。

もう歳だ、キツい、行き詰まりを感じる。いいかげん店を畳んで実家へ帰って山岳ゲリラでも始めようか、だがAKやRPGやスティンガーミサイルなんて手に入るわけもないし、実家に転がり込むにしても軽トラックは新調しないとなぁ、何かを新しく始めるにあたっても元手は本当にないし、(自主規制)や(自主規制)や(自主規制)もあるし(自主規制)だし、うーん…。

そんなことをウジウジ考えていたのだが、結局会社の保健師の勧めもあり、ここ2年ほどリハビリ施設みたいな所へ通っていた。

リハビリ内であったことは一切口外無用とされているのだが、なぜか一緒にリハビリを受けていたメンバーが、口々に「メイドインアビス」が面白いという。そして、オタキングこと岡田斗司夫先生も「こんなにすごいのに、見ている人が少なすぎる」と嘆いておられた。

「でもどーせまたゲームが元かなんかのくだらねぇモエモエいってるアニメだろ?」と思っていたのだが、漫画喫茶に行ったらたまたま原作漫画が置いてあったので、なんとなーーく読んでみた結果、「面白かったんだよこれが!!」というのは確かなんだが、それ以前に気になる事があった。

なんかわからんが、とっても読みにくい。

話が頭に入ってこねぇ。
なぜだ?
かつては漫画千人斬りと呼ばれたワイ将、
こんなはずじゃねぇ、
もっと簡単に二次元にダイブできるはずだ、
なぜだ?

………その謎を求めて取材班は秋葉原某所にある漫画ジャングル奥地へ進んだ。

2.大穴って何や?…溢れ出る設定

この漫画はジャングルならぬ、南海の孤島にポッカリ空いた謎の大穴が舞台だ。主人公の少女は、大穴の最深部に辿り着いたという母からの手紙をきっかけに冒険に旅立つ。

大穴って何や?

大丈夫です。巻末や話の途中に細かい設定資料が挿入されていて、物語の世界観について補足されています、オタク漫画の伝統です、ワイの世代としては「ファイブスター物語」だの「BUSTARD!!」だの………そらオタキング大喜びですワ。
ファンタジー物だけあって生物や植物、特徴的なガジェットの説明がある、「モンスターハンター」とかのゲームの影響も感じる。
お腹の中に沢山の財宝を飲み込んでいる大蛇のようなモンスターに対して、こいつはもしかしたら砂肝があるかも、って解説なんかはすごく面白い発想をするなぁと思う。

モンスターへのこだわりは、モンスターの捕獲→調理→食事シーンという形で食べ物にも波及する。大穴の"探窟"では食料の現地調達が必要であり、調理と食事が癒やしである、というリアリティが生まれている。ああ、食べっぷりのいい幼女はええのう。

たぶん面白い設定思いついたら、その面白さをすぐに伝えたくて、いや語りたくて語りたくてしょうがなくなって、古典的漫画表現を通り越してバーンと出てきちゃうんだろうな。

3.まんじゅう顔の呪い

絵柄を見たときは、「エイリアン9」の富沢ひとし先生の弟子かなと思ってググった、違った。作者のつくしあきひと先生は元コナミの人で「おとぎ銃士赤ずきん」なんかをやっていたそうな。うーん納得。

(模写してみようと思ったがやめる)

そして、この丸っこい子供達がひどい目に会う。
謎の大穴には深く潜れば潜るほど、"アビスの呪い"という探窟者達を苦しめる悪ーい"仕掛け"が彼女らにも"効いて"くる。"呪い"がどのように描かれているのかは、ぜひ本編を読んでみてほしいのだが、丸っこいキャラクターとふんわりした絵柄が、エピソードの残酷さを逆に引き立てている。

最近のオタクであれば普通「リョナ漫画」と言うだろう。3巻のラストとか、なぁんてヒドい大人が出てくるんだと思うし、スプラッター描写&精神的な怖さのランクがグングン上がって、すごくトゲトゲしたショックを受ける。

また、幼女を裸にひん剥いたと思ったら、お乳を非常にこだわって描いていたり、おしっこネタがしょっちゅう出てきたり、お尻の穴をイタズラするエピソードに、ケモリョナにショタリョナ………変態のデパートである。

なるほど、やはり手塚治虫の末裔か!

「エイリアン9」もなんかもそうだし「魔法少女まどかマギカ」「最終兵器彼女」あたりも近い、「ローゼンメイデン」も仲間かも。みんな同じ"まんじゅう顔"の「ロリ+SFまたはファンタジー+エログロ」の系譜だァッツ。

4.解ったぞ!アビスの呪いの正体が!!

結局なんでそんなに読みにくかったのか?3つ挙げてみた。

・ボヤーッとした闇で展開される物語
この漫画、デジタル彩色の水彩画風の絵柄で、なんとなく画面がボワーっとしてる。枠も手書きな上にうっすら枠を灰色に着色したりしていて、コマ割りはされてるが1つの絵みたいにコマ同士がネットリくっついてる感じがする。この書き方が意図してかそうでないかはわからないが、暗い大穴の世界をうまく描写してるとも言えるし、鬱陶しさも感じる。

・現実にないものを描く難しさ
全体がボワー、フワーっとしているせいで、まるで世界が闇に溶けて紛れてるみたいな感じがする。さらにそんな闇に隠れて出てきたモノは、時々目を凝らさないとよく見えない。特に現実には存在しないものがそうだ。突然現れたモノが建造物なのか生物なのか、怪物と思っていたモノが、植物なのか人間の成れの果てなのか本当に見分けがつかない。「あれ、ワイは今どこにいて何をしてるのだろう?」と、本当に暗闇で迷ってしまうのだ。

・情報量の多さが老害ヲタクにはちとつらい
色が塗ってある=情報量が多い、これに尽きる。前述したような闇が世界を覆っている上に、膨大な設定や世界感(観)が提示され、相対的に情報量が上がっているように見える。

同じタイミングで「絶対可憐チルドレン」の最終巻をよんだのだが、えらくスラスラ読めたので、ああつまり初老に差し掛かってるヲタには辛いって事なんだなと思った。

5.1つ心配な事

最初の方に「ファイブスター物語」と「BUSTARD!!」の名前を挙げたのだが、そこで1つ心配なことがある。本当に大きなお世話であるが、

立った、フラグが立った、未完の!!

「テラフォーマーズ」「強殖装甲ガイバー」なんかもそうなんだけど、設定が先走っている大河ドラマ漫画は未完フラグ立ちやすいと思う。「攻殻機動隊」も設情報量が多くて、コマの節々から何かが滲み出ている感じだけれど、実は公安9課の日記漫画だから「未完」というものには意味がない。

完結しない漫画は悪だ…………そう思っていた時期が俺にもありました。

ふと思ったのだが、読み手側のオタクとしては、完結したら勿論嬉しいども、実は物語が完結しようがしまいが関係ないんではなかろうか。設定自体を楽しむ事により「ナードフェタミン」が摂取できるてるワケるわけだから。

6.以下フィクションを勝手に現代社会に当てはめる、という妄想

「メイドインアビス」の一番の魅力は、物凄い使い古されて陳腐な表現だけれども「闇と光の物語」、コレよ。普通は「光と闇の」って光が先にくるんだが、この話は闇が先。絵柄がそうなってるし、ストーリーもキャラクターもそうなってる。主人公の少女からして「ものすごっく大変な目にあってるけども、闇の底にいるカーチャンに会うんだ!!」ってのが象徴的だよね。

ああっ、病気で何かが壊れてリハビリしてる連中が興味を示す「メイドインアビス」…つまり観客にも闇と光が………。

そういやさ、自民党に岸田総裁が誕生したじゃん。今後どうなるかは期待3分疑い7分ぐらいだけども、言ってることは変わった。小泉改革の頃では考えられなかったよ「分配」って言葉がでてくるなんて、まるで共産党じゃないか。

もうみんな新自由主義的なものを是とする「モーレツ強欲鬼畜ブラック資本主義社会」に疲れはてて辟易してるんじゃないかな。そういうモノは永続きしない徹夜の頑張りみたいなもんで、ひどい目にあったら夢も希望も萎むし、自助だの次世代にツケを残さない為に金よこせって言われても白けちゃうよね。しんどいのは今であって未来なんか知ったこっちゃないんだワ。SDGsなんて言葉が流行ってるけども、ワイなんか金もねぇし引きこもりだし、そもそも次世代を再生産できねぇ事確定だぞ、ナニが持続可能な社会だ、どうしてくれまんねん、ワイの30年返してェェッツ!!



……という夢も希望もないワイ将、これからどうやって人生を"探窟"していけばいいか、シリアスに考えないといかんなぁ、と思ったのであった。




追伸:
「ナードフェタミン」については、いずれ設定が固まってゆくと思うので、面白く組み上がったらそのうちなんか発表するかも。

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