アイデアがあっても実行までが大変だからビジネスプランより行動力が大事かも

　自治体の起業相談窓口を務めることがあるのですが、「今他にないサービスを考えました、どう思いますか？」という相談を時々受けます。

　架空で例を挙げますが、例えば「共働き家庭に、近所の料理好きな人が夜ごはんを作って持って行ってあげる給食サービス」みたいな感じです（私が欲しいサービス/もうありそうだけどすみません）。

　どう思いますか、という質問については、

「アイデアいいと思います。でも同じようなサービスが今無いってことは、『実行が難しい』か『儲かる形にするのが難しい』可能性があるので、そこを実際運用できる仕組みづくりが頑張りどころかもですね」

という感じのお話をすることが多いです。

アイデアを実行に移す際に起こること

ビジネスプランコンテストや国などの補助金に出すときには、「ビジネスアイデアが他にないこと・革新的なこと」とか書いてあるんですけど、実は「他にない」ってことは、「簡単に儲からないから他の人がしてない」ってことなんですよね。

　事業を始めるときは決めることが大量に出てきます。先ほどの例でいうと、利用者は1回いくら払うのか、料理提供者は1回いくらもらうのか、注文はどうやって取るのか（注文フォームとか？）、注文はどのタイミングで締め切るのか、どうやって利用者の情報は料理提供者に渡すのか、その際の個人情報関係や食中毒などないように、規約や保険はどうするのか、云々。。

　で、さらにそれをやった上で、お客さんが集まり、サービス実施側のこちらに利益が出る仕組にしないといけないわけで仮に利用者から6000円もらって料理作る人に5000円渡したら残り1000円だけど、それを積みかさねて社員の給料や広告宣伝費などを回収できるためには何件顧客がいるのか？そんなに使う人いるの？じゃあ1件ごとの利益を1000円から2000円に上げる？そしたら高すぎて使う人減っちゃう？みたいな。

　この辺りの大量の決定事項を決めてって、デザインやサービスを作っていって、裏の仕組みを作って、さらにお客さんも増やして・・・となると、かなりの行動量が必要ですし、そもそも儲からなくない・・？ということもある。
　
　そうすると、やりながら初めのアイデアを変更していくケースもあるわけです。「じゃあ料理を運ぶんじゃなくて、料理する人に出張してもらおう」とか。「こちらがマッチングするんじゃなくて、お互い募れる情報掲示板みたいにしようか」とか。「共働きの料理の苦労を減らしたい」というコンセプトをずらさなければ、「時短料理のレシピサイト」とか「ミールキット宅配」とかになってくる場合もある。そうすると、すでにやってるところがあるよね（クラシルとか、oisixのミールキットとか）っということになり、革新的なアイデアではなくなっていってしまうわけです。

　で、事業を始めるときに（自分を含め）起こりやすいのは、「決定事項を沢山決めていくうちにつかれてきて辞めちゃう」「結局上手い形になるまで作りこみ切れない」というパターンです。作ってるうちは全く報酬ないわけですし、お客様もいないので、すでに別のお仕事や事業がある場合は、そちらが優先されてこちらは後回しになることも多いですね。

　なので、革新的なアイデアを事業運営まで持ってくのは相当な「強い想い」と「強い行動力」がいるなと思います。ビジネスプランを綺麗に書けるとか、プレゼンが上手とかじゃなくて、「うまくいかなくても最後まであきらめないでずっとやろうとする」というくじけない力というか、周囲を気にせず思い込み続ける力というか。

　結局初めに書いたビジネスプランって行動始めれば次々と修正が必要なので、知識とか経験とかより、最後まで持っていく精神体力みたいなのが実現までには一番いるんだと思います。（むしろ知識経験があると逆に足かせの場合もある）

　なので、アイデアの時点で素晴しいけど、実現には想いと行動力が必要なので、それがあるかの方が大事なんじゃないか、と思います。

ちょっとそこまでという人は

　自分にはそこまでの熱量はないな、でも事業を作るところに関わりたいな～という人は、熱量の高い人のチームに入る、というのがいいかもしれません。実現は一人では不可能、チームとして力を発揮するのも面白いと思います。

　また、「確実に収入にしたい」だったら革新的な事業というより「今ある事業でちょっと品質いいもの」を提供するのがいいと思います。以外と既存事業って品質低い部分もあるので、ちょっと丁寧にするだけでも良かったりする。飲食店も沢山あるけど「美味しくて接客のいい店」は新規オープンでも繁盛店になったりしますよね。ビジネスプランにすると目立たないかもだけど、実利は取れるみたいな感じでしょうか。

　なので、アイデアも大事だけど、実行の方がもっと大事だよね、というお話でした。（自戒を込めて・・・！）