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連載1 聖なる印象の作り方 職人の心得

刀や仏像、三種の神器の修理、 そんな仕事について語ります。
 53回の連載を目指してまいります。善財童子さんの53次、相当の師匠、兄弟子、先代、先々代の言葉紡がせていただきます                    
   
 

板挟みですやん、仏像のお修理!

仏像の師匠「獅子座にロボット乗せるな」
お客さん(僧)「蓮華座に猥褻、陳列すな」
 
フロイトさんが言わはるリビドーやらタナトス(ディストルド?)
どちらに偏っても「聖なる」印象は作れまへん。
せやかて仏像は記号の塊、、、
観音さんには観音さんの記号がありまして
 
壊れた仏像さんが虚空蔵さんなのか観音さんなのか?
は頭の被り物やら水瓶が持物にあるかないか
不動さんか愛染さんかは
台座が蓮華座か井かで判断します。
 
立体を破綻させずに仏さん記号を要領よく散りばめていきますと
確かにバンダイさんのプラモデルみたいのが蓮華座にちょこんと乗ることになります。
拝む気になれへん。
 
では
高村光雲さんをお習いして
西洋のエーロスやらを模刻しますとどうなるやら
 
お客さんに怒られます
 
宗派(神社さん含めて)たがえば言葉こそ変わりますが
やっぱり、ここは鉄則
フロイトさんの檻の外側にはみ出ませんと
お賽銭集まらない
そんな会話を言外に済ませませんと
なんやわからん厚化粧ベッタリの漆使いの安値安請け合いの仏壇屋さんに
お仕事さらわれていきまっせ
キンピカ新品同様、
もとのお顔もようわからん仏像さん出来上がって、抱えて
青い顔した坊さんがうちを尋ねて来はるんは気の毒
なにより、そうなったら元の形がわからん
お写真あったら模刻で新造
それくらいしかできへんし
高うつきまっせ
 
セクシーな仏像日本一ゆうて
有名なお寺もありますけど
いざ拝見してみますと
リビドーがカッと熱くなるようなエーロスだけじゃない
リビドーでも記号主義でも割り切れん
余りがちゃんとありますよって
 
そのへん頭ひねらんといかん
 
悪銭身につかずー
言う言い回しは
お寺さんのためにありまして
猥褻を蓮華座に上げますと
猥褻な説教ほしがる御参拝増えまして
あっという間にご利益宗教になりさがって
悪貨が良貨を駆逐します
 
猥褻な説教とはなんでしょう?
 
フランシス フクヤマさんといわはる
偉い学者さんのお言葉
「テラピストさんが愛やら真理やら法を語るときは患者さんの欲求の充足を目指してはる。その時、大義やら公共やら地球環境、おとなりさんへの思いやりが意識されることはない」
アメリカのなんとかという教会さんは
テラピストさんぎょうさん雇って大儲けだそうで
 
あかん、ちょっと待ち
 
お向かいの引きこもり坊っちゃん三十路過ぎてぼやいてたで
「なめた仕事してバイトくびになった時、親父にコテンパンに叱られた。カウンセラーさんには「あんたは悪くない」言われたけど」
「いまふりかえればカウンセラーさんには悪いけど、あの優しい言葉を真に受けたんがまちがいやったわ」
 
そりゃそうやわ
なになに?
自己肯定感?
そんなん高めるんは大事でしょうが
過程が大事や。
いつか、いつの日か
責任はたして、いいお酒のむ
大事やで
カウンセラーさんアホちゃうか
まあ、ええわ
そちらさんも商売なんやろ
せやかて
うちの師匠
「一生に一度の大傑作でけた」叫ぶけど
次の日にはゴミ箱や
次が見えてんのやろな
毎日、毎日、目標を更新されて…
うらやましいわ
自己肯定とか眼中になさそうやな
 
アカン
もといぃ や
そんな、引きこもりのボンから賽銭もらう寺社は長続きせんやし
って話やな
 
私ら職人もリビドー盛り盛りの高村光雲さん造ったら
おーすげー
って
芸者さんのシナつけたりな悪乗りもええけど
いっそのこと唐草模様散りばめて
ギリシャやガンダーラって銘打つんも楽しそうやけど
お客さん(寺社)の首しめんねんで。
 
(ヨコで聴いてた師匠)
「そういや、東京の〜から愛染明王さんの仕事来てたやろ」
恋愛成就やら婚活やらの御参拝さん増やしたい云々
「ほっとこか?」
 
いえいえ、もったいない。
よろこんでお手伝いしましょ。
「フランスだかなんかの職人おったな、東京の〜」
 
西洋美術バンザイですよって
勉強させて頂きます。
あむーる、あもーれ
 
「節操ないな。○○(寺)さん、行ってな。愛染明王經お借りして読んどきな。短いからな。後まわしにせんとな」
「東京行く時、浅草の刀研ぎの師匠におみやげ頼むで。ホンモノ(木彫りではなく鋼の利剣のこと)持ってはる文殊さんの修理あるから」
 
→いざ、東京へ

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