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眼科診療における感染対策③医療環境の衛生管理

感染症看護CNSのしんかいのりこです。

前回、眼科診療における具体的な感染対策その①「手指衛生」、その②「医療器具の洗浄・消毒・滅菌」ついて書かせていただきました。今回はその③「医療環境の衛生管理」について書かせていただきます。

眼科診療で、特に注意すべきことは、ウイルス性角膜炎など感染力が強く、感染が拡大しやすいといったことかと思います。加えて血液や涙、眼脂などの分泌物が環境に飛散、付着しやすい特徴もあります。
環境衛生の目的は、日常的に環境の清浄化を図ることで、医療者や患者が病原微生物と接触する機会を減らすことであり、物理的な汚染除去、つまり拭き掃除が重要になってきます。

環境清掃の考え方として、高頻度接触環境表面と、低頻度接触環境表面に分けて考えることが効果的とされています。
高頻度接触環境表面とは、ドアノブや手すり、椅子など、主に医療従事者や患者の手が頻繁に触れる表面のことです。
一方で、低頻度接触環境表面は、床や天井など、手で直接触れることがほとんどない水平面のことです。
この高頻度接触環境表面には、患者自身や職員が保有する微生物で、常時、高度に汚染されていて、間接接触により感染の伝播するリスクとなり得ますので、手で触れることが少ない低頻度接触環境表面より、頻繁に、また丁寧な拭き掃除を行うことが推奨されています。

高頻度接触環境表面の清掃消毒について、具体的な清掃回数というのは示されていませんが、一般的には1日1回以上の拭き掃除を、日常清掃に使用する洗剤や低水準消毒剤を用いて行います。
ただし、眼科では、アデノウイルスによる流行性角結膜炎患者の伝播に十分注意する必要がありますので、直接触れる眼圧計や顕微鏡などは患者毎に消毒の徹底が重要になります。
それ以外にも、どこが高頻度接触表面になるか、待合室や病室の構造等によって異なりますので、職員や患者の動きを観察していただき、どの場所を拭き掃除をするか、それぞれの施設で決定していくことが必要だと思います。
環境消毒に市販のクロスや消毒剤を用いる場合は、その用途や、接触時間、開封後の使用期限など守ることも大事なことと思います。 

下記の書籍を参考にしました。ご参考になれば幸いです。

NPO法人HAICS研究会、眼科診療における感染対策ガイドブック
https://www.haics.jp/download/ipecguidebook.pdf