筆を折った僕が、本を出版することにしたワケ。【A面】
先日Twitterにて告知しましたが、私硫化鉄は来年(令和四年)に1st短編集を出版する事に致しました。
そんなわけで、この1st短編集出版までに起きるよしなしごとをそこはかとなく書きつくっていこうと思います。
と、ここで一部の方は疑問に思われるのではないでしょうか。
「あれ? 確か硫化鉄って筆折ったんじゃなかったっけ?」
そうなんです。私実は今年の二月に筆を折っておりまして。
つまりもう小説は書かないという事です。
ならば何故、短編集なのか。何故出版なのか。
この決断に至る経緯をお話しする事で、この意味不明な状況をご理解頂きつつ、出版をにやにや見守って頂く良いきっかけになればと思っております。
……と、堅苦しい空気感でスタートしてしまったのも、これが硫化鉄のnote初投稿だからかな。だからだろうな。いかんいかん。
まぁ結構内面のシリアスな話をぶっちゃけていこうかと思っておりますので、その分文体はスチャラカにいく所存であります。
前置きが長くなりましたので、早速(じゃないけど)本題へ。
「筆を折った奴がどうして短編集を出版するのか問題」を語る上で裂けて通れない、いや避けて通れないのが「そもそも何故筆を折ったのか」という問題。
このあたりね、web小説を書く方なら共感される方もいらっしゃるのではないかと拝察するわけなんですが。
端的に言うと「自分の才能に絶望したから」なんですよね。
と、本当に端的に言っちゃえば一言なんですが、この一言の裏に潜む思いや経験、葛藤、居直り、自棄、孤独、猜疑……。ありとあらゆる情念が焼き付いているわけです。膨大な執念が凝縮して息づいたままの「絶望」なんですね。わかる人にはわかるでしょ?
私の場合もね、その「絶望」に至るまで様々な要因が積み重なったわけです。
例えば、自分でできる努力をどれだけ重ねても、読者を増やしたり、ブックマークボタンをクリックする程度の行動を促したりもできなかったこと。
これ結構がんばったんですよ。更新頻度を落とさずに、各話公開の度に次回予告動画を制作してtwitterで流すとか、配信アプリで朗読配信をしたりとか。
でもね、全然誰も動かせない。発信力や影響力が全然ない。
朗読配信はね、結果的にweb小説じゃなくて紙の本を読む派の人達へのアプローチになるものだったなぁ、web小説の宣伝効果としてはだいぶズレていたなぁという反省もあるんですけども。
結局そういう活動自体も過疎になっていて「私そのものがコンテンツとして魅力がゼロなんだ」と思い知らされたんですね。
でまぁ「要は数字を持っていれば優れていて、持っていない物は無価値である」という現実をいやという程思い知らされたわけです。
もちろん「そんな事はない」とおっしゃる方もいるだろうし、自分自身そう信じたい気持ちはあります。
だけどね。
なんもフィードバックがないっていうのは本当に恐ろしいんですよ。
「数字だけが価値じゃないよ」とおっしゃる方ももちろんいらっしゃいますし、その通りだよな、とも思うんですけど。
残念ながらその言葉は「私の作品に対するフィードバック」じゃないんですね。
酷評もね、色々話題になったりしますが「読んだ上でのフィードバック」である事には変わりません。酷評を無視するのも、取り入れるのも、本人が考えることが出来ます。
酷評すらない「単なる無反応」ほど恐ろしいものはないんですよ。
「酷評する価値もない」これが、自分で自分に下した結論でした。
自分では価値のあるモノを全力で作っている。だがそれは世の中では「無価値」。その価値観の差を分析するための材料もない。
これが「自分への絶望」の一つです。
まぁ、もっと具体的なエピソードなんかもあるんですが、その辺は別の形で語るとして、こんな絶望をした私が、なんで短編集やねん、と。その辺に移っていきましょうか。
全てを変える一言ってあるんですねー。
何をしみじみつぶやいとんねんというご意見はごもっとも。
でもこれが実感なんですよね。なんでもない一言がきっかけで全てが変わっていく感じ。
「硫化鉄さんの小説は、web小説向きじゃないからですよ」
なんの事はない一言だと感じる人も多いでしょう。
あの絶望を全てひっくり返した言葉がそれって、さすがにちょっと信じられないんだけどー。っていうかその程度でひっくり返るなんて底の浅い絶望だなオイ。
そんな風に感じる方もいらっしゃるかも知れません。
でもね、この言葉を私がどんな状況で聞いたのか。どんな相手から聞いたのか。それを聞いていただければ少しわかってもらえるかも知れません。
そして何より、私と同じように絶望している人にも光をもたらすことが出来るかも知れません。
だから、もう既にだいぶ長くなっていますが、話させてください。
(読み疲れてしまった方は、少し休憩を入れてからどうぞ)
絶望して筆を折った私は、全てを込めて書いて来た作品を供養するために、全作品をコンテストに応募してみたりしていました(予想通り、ほぼ読まれる事もなく終了)。
これは自分の中に残った未練の燃え残りを完全に消し去ろうとする作業でもありました。
その中で、某出版社の編集者から連絡を頂き、そのお話を断る事で、未練にとどめを刺すことができました。(その出版社からのお話自体が、私の絶望を絶対的な物にしたわけですが、その詳細はここでは書けないかな……(悩))
あとは「自分の創作活動の、何が間違っていたのか。世間との価値観のズレは、一体どういうものだったのか」という疑問が残るだけでした。
その総括も出来ないまま死んでいくのはしんどすぎる。世界から切り離されたまま一人で死ぬという事になる。それはあまりに寂しい。悲しい。
そんな風に思いつめていました。
ずっと一人で空回りを続け、砂漠にじょうろで水を撒くようにあがいたまま、誰にも気付かれずに消えていくのは辛かった。
そんな時にね、ある方と出会ったんですよ。
フリーの編集者さん。Twitterでね、彼女の赤入れ原稿画像を拝見したり、原稿に対する思いを拝読したりしているうちに「この人の分析なら、納得して止めを刺される事ができる」と思ったんです。
(ご本人に確認していないので名前はまだ出しませんが、許可頂けたら出します)
それでね、ご連絡差し上げて、相談をしました。
創作に関する自己紹介をして、短編を一作、目を通していただいて……。
「自分の創作活動の、何が間違っていたのか。世間との価値観のズレは、一体どういうものだったのか」
この疑問をぶつけてみたんです。
その答えが、
「硫化鉄さんの小説は、web小説向きじゃないからですよ」
これだったんですね。
それがもう即答、しかも、あったりまえの普通の事を答えるようなあっさり感(※個人の感想です)。
なんか、すっと入って来ました。
そりゃそうだ。媒体によって向き不向きがあるのは当たり前だよね、と。
もちろん頭でわかってはいましたよ。連続ドラマと映画では当然適したテーマや演出手法が違うのは当たり前。小説だって書下ろしと連載小説では違う。
さらに、買ってから読んだり見たりするものと、無料で見られるものでは全く違う。だってテレビドラマはザッピングしても、同じドラマをレンタルDVDで見る時はザッピングしないよね。
どちらが良いとかじゃあない。それぞれの媒体に最適化されたものがヒットする、それが自明の理ってわけです。
そんな事はもちろんわかってたんだけど、他に発表の場がないんだから仕方ない、何のコネも数字も持っていない一般人がスタートを切るにはこれしかないんだと思ってました。ね、しょうがないじゃんねえ。
でも今回、このわかっていた言葉がすんなり入って来て、私の中の何かを変えたのは「当たり前のようにあっさり言われた」からなんですね。
「大変ですよねー」「苦労したんですねー」みたいな空気感じゃなく「あー、それはそうですよね」みたいな感じ。これが刺さった。入って来た。
つまり「じゃあ、他の媒体で向いてるの探せばいいじゃん」って感覚が注入されたっていうか。
これまたもしかしたら、同じ風に考えている方もいらっしゃると思うんだけど、
「ブックマーク一つクリックしてもらえないのに、お金払って購入なんてしてもらえるわけないじゃん」
って思っていました。いや、今でも半分くらいそう思っているんだけど。
でもね。媒体が違えば客層も違うわけです。何もかもが変わって来る。ならば、全力で試してみる価値はある、と。
朗読配信で、私の全ての作品を聞いてくれた人もいた。朗読しながら泣いてくれた配信者さんもいた。そのほとんどが、web小説をメインで楽しんでいる方ではなかった。
web小説という媒体でダメだったからと言って、まだ無価値だと決まったわけじゃない、と思ったわけです。
そこで、短編集を出すことにしました。
もちろん、きっかけとなって下さった編集者の方に、正式に編集を依頼して、きっちりと作ってまいります。
なにぶん初めての事なので、様々な初体験やびっくりがあると思うんですよ。
なので、このnoteで、進捗や裏話等を書いていきたいと思います。
同じように、本を出そうと思っているけど踏み出せない、という方の参考になればいいなって思ってます。もちろんそれ以外の方も、どうかニヤニヤしながら見守って下さると幸いです。
よろしくお願いします。
あ、そうだ。タイトルにある【A面】について。
【A面】ってなんのこっちゃって話なんですけども。
このね「硫化鉄の初出版」シリーズ。結構ぶっちゃけて書くつもりなんですけど。
やっぱね、あまりにも心の闇があふれ出ている事とか、差し障りのあるエピソードとかね、表立って書くのに相応しくない話もあるわけですよ。
なのでね、表に出せて、本を出したい人の参考になりそうな話は【A面】に書いていこうと思います。
で、同タイトルには必ず【B面】も付けていくつもりなんですが、そっちはね、その表立って書くのに相応しくない内容で、まぁ興味本位レベルで見てくれればいいかなー的な話を書いていくつもりです。
限定公開のやり方、まだ良く知りませんが、そっちの方向で咆哮していく所存です。
というわけで長文でだらだらと書いてきましたが、このnoteも、もちろん1st短編集の方も、よろしくお願いします!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?