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GoToってさ 

私はリア充(死語?)を見ることが嫌いだ。
なぜならば、他人が楽しそうな姿をみていると嫉妬心か何かでイライラしてしまうからだ。だからSNSもあまり好きではなくて、Instagramで友人の楽しそうな旅行のストーリーズを開いてしまった時はとても嫌な気持ちになる。だったらフォローするなよと思われる方もいるだろうが、そう簡単にいかないのが人間関係というものだ。

そんな卑屈の塊のような日々を過ごしていたら、2020年春にCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的なパンデミックが起こり、今までの当たり前は根底から覆った。人々はとにかく移動しないことが推奨され、海外はもちろん県境を越えることだけでも問題視されてしまう。皆がステイホームを行い感染拡大を食い止めようと努力を行い、協力せずに好き勝手に移動する人間は社会から冷ややかな目を向けられるという時代に突入したのだ。もちろん、COVID-19なんていうものは一刻も早くこの世から消え去って欲しい。一体いつまで我々の日常を奪い続けるのか、本当に憎きウイルスである。

しかし、「もしもコロナ禍において良かったことは何ですか?」と質問されたら、私は何と答えるだろうか。多くの人はリモートワークの推奨により今までの無駄な時間を見直すキッカケになったとか、会えないからこそ大事な人のありがたみが改めてわかったなどと答えるだろう。しかし、私は迷わずに、

リア充のストーリーズ投稿が減ったこと。
と答える。

しかしながら、そんな卑屈野郎の意見は何も生産性もなくただの僻みだ。政府は、大きな打撃を受けた観光業や飲食業のためにGoToキャンペーンという需要喚起の経済政策を行った。いつも後手後手の対策で評判な政府だったが、この政策だけはどこからの圧力でも働いたかのようなスピーディーな決断で、2020年夏ごろから運用を開始した。またストーリーズにリア充の日本各地で撮った写真や動画が帰ってきた。高級ホテルに泊まっていることを見せつけるための位置情報、グラサンをかけているドヤ顔の彼らをまた見なければならないのかと嫌な気持ちになった。
しかしまぁ経済のことを優先して考えるならばそんなことは言ってられない。だって経済を実際にまわしているのは私の嫉妬心ではなく、彼らの承認欲求なのかもしれないから。

ところが、このGoToキャンペーンは2020年11月に入ってからの感染拡大によって中断された。環境省によると、実施されていた2020年7~12月に延べ8,781万人(速報値)がこの制度を利用したという。そして1.4兆円の国家予算がそこに割かれた。もちろん国債を刷りまくってつくった予算なわけだが、多くの人と金が動いたこのキャンペーンの費用対効果はいかがなものだったのか。

COVID-19の感染者速報値に一喜一憂を続けてもう2年になる。外出時には必ずマスクをつけて飲食店にはアクリル板が設置されていることや移動での様々な制限やリモートのコミュニケーションは既に日常であり普通になってしまった。
コロナ対策の制限は一時的な措置と最初は期待していたが、いつのまにか既にニューノーマル(新しい常識)になりつつある。このニューノーマルの時代に正直、観光や飲食やエンタメなどのリア充が好きそうな産業は斜陽産業になっていくだろう。そんな産業にカネをただバラ撒くのは甚だ疑問だ。

もちろんこれらの業界で働く人々がいて大変な思いをしているのは理解している。しかし個人的には、特に観光業界に関してはこの機会にパラダイムシフトするべきだと思う。ここ数年、政府と電通とかがクールジャパンとか言って外需を取り込み観光客を増やそうとしていた。その効果ではないかもしれないが確かにここ数年、東京の至る所に中華系の人を中心に観光客が溢れかえり、爆買いなんていう言葉も生まれて、観光業は好景気そうだった。東京オリンピックを控え、インバウンド信仰とも言えるような気持ち悪さを同時に私は感じていた。インバウンド効果で一時的に懐が潤っても結局は意味がないのではないだろうか。

そして、今回のコロナ禍のように行動が制限される事態が一つ起きてしまえば、売上はゼロに等しくなってしまう。そして今後、もしコロナ禍が終息したとしても中国とは外交的に不安定な事案が沢山存在する。台湾への軍事的侵攻や東シナ海の領有権など感染症以外でも行動が制限される可能性はあるわけだ。ここ数年の観光業は内需に期待できなくなったからといってあまりにも不安定なものに極度に依存していたツケがまわったと私は思う。

もちろん今回の件で打撃を受けた分はしっかりと国が補償するべきだが、観光業が今までのまま何も変わらずに、今後淘汰されるのをなんとか防ぐための延命措置としてのGoToキャンペーンなら未来のための投資とは言えないと私は思う。

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