![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/113511772/rectangle_large_type_2_5a032eb48593751f5dce752109904172.jpeg?width=800)
#051 フェルマー出版社の花壇 <ユリ編>
この場にユリを植えた記憶はない。ユリの種はヒラヒラと軽い。きっと近所から飛んできて、この場に芽生えた。咲いた花は結実し、種を作る。気がついたら、ユリの群生場となった。
早朝、まだ薄暗い時間帯、この場に椅子を置いてユリの花を見る。ユリの花が呼吸している、その音でも聞こえてきそうな程に静かな時間が流れる。薄暗がりに浮かぶ乳白色のユリの花は妖艶だ。色も立ち姿もそれぞれ微妙に違う。藤田嗣治の絵の乳白色と結び付く。
空が白々と明るくなってくる頃、私はユリとの対話を終え、郵便受けから新聞を取り出し、現実の世界に戻ってくる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?