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#011 『鞄談義2』 小林鞄

 写真は『鞄談義2』の巻頭カラーページを撮影したもの。
 長く使われた小林鞄で、小林さんがユーザーからのメンテナンス依頼を受けたものだ。
 取材に行った際、これが小林さんの工房に置かれていて、思わず見入ってしまった。長く使ったバッグは、ここまで豊かな表情になるものなのだ。汚れがユーザーの生き様を語っている。どのような方なのだろう。お会いしてみたい気持ちになった。

 小林さんは鞄全体を見て、必要とあらば糸を解き、全部を分解して補強しながら縫い直す。全体のフォルムを感じながら縫い糸で締め直す。メンテナンスというよりも製作に近い。縫う際には決して接着剤を使わない。接着剤を使うと鞄を分解できなくなるからだ。
 小林さんは納得がいくまでメンテナンスをする。自分が作った鞄には責任を持つと言う。自分が作った鞄がどのようになっていくのか見届けたいとも。

 ユーザーと鞄職人の交流を想像しながら、バッグに触れてみた。まるで芸術作品のようだ。長い年月を経てこの作品は作られた。鞄職人とユーザーの共作である。


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