美しさの個性

逸木裕の 「星空の16進数」を読んだ。

比較的新しい作家らしく、デビューしたのは2016年だという。2016年というと私は当時中学2年生であるから湊かなえさんあたりの社会派ミステリを読み漁っていた頃だろう。

星空の16進数は色をテーマにしたミステリー作品である。作中にも16進数のカラーコードも用いた表現や、色の和名、登場人物の名前に組み込まれた色、エコール・ド・パリなどの芸術作品も登場し様々な描写が鮮やかに描かれている。
文章はとても読みやすく二人称レギュラー(発話者も登場人物として存在するパターン)である。
(プロローグのみ主人公藍葉の母親視点)
解説にもあるように2人の登場人物の内情がとてもリアルにナレーションされており、本当に作者の人格が二重人格のようである。私はみどりの性格に近いだろうと分析できるので、探偵に向いているのではないか?と序盤では考えてしまった後、読み進めていくとみどりのようにはなれないなと思う部分がかなりあり登場人物の背景の深さに改めて作者に脱帽した(笑)
藍葉に関しても言葉で伝えることの難しさや、社会で必然的に求められる空気を読むことへの向き合い方を学ぶことができる。この作品を通して藍葉が少しずつ自分を理解し前に進んでいく姿に注目して読むのも良いだろう。

そして、この作品で【個性】という単語が何度か出てきたがこれの解釈にはとても感心させられた。
文学であれ、アートであれ、音楽であれ何かを創造できる人には必ず先天的な個性が宿っていると私は思っていたからだ。私にその個性がないことに気づき軽く絶望した経験もある。しかし、この作品で個性は「情報をどう解釈するか」とみどりは言った。この思考には衝撃を受け、もっと多くの作品に触れ、それを深く学習する必要があると思った。

月末のミス研での合宿の課題本なのだが、多彩な思考と表現力をもつ仲間たちはこの本をどう感じたのか知れるのが楽しみである。

追記 : ネタバレ有り

作品に出てくる色は何を伝えようとしているのかに関する考察結果

朱里 : 時間軸として過去(藍葉が誘拐される以前)
和音で色を表現している→色をかけ合わせれば掛け合わせるほど絵の具のように黒に近くなる
→ 最終地点 黒 →藍葉の黒のコート

ここから物語がスタートする

藍葉 : RGBの16進数で色を表現
→掛け合わせると白に近くなる
という考察

ちなみに 黒 という色が作品の中でキーワードになると思うのだが、最終結論としてやっぱり黒須がクズであったことが悲しかった(笑)

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