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母なる証明


あらすじ

女手ひとつで息子トジュンを育てあげてきた母

トジュンは知的障害があり、他人からいつも馬鹿にされ悪友であるジンテからは都合良く利用されているが、そんな息子を母はいつも庇い溺愛していた

町で女子高生のアジョンが殺害される事件が起こり、現場の物証からトジュンが容疑者として逮捕されてしまう
息子を信じる母は半狂乱になりながらも息子の無実を証明する為に奔走する
だがその先には母にとって恐るべき真実が待ち受けているのだった…

(物語の重要な箇所と結末に少し触れています)

親は子供を無償で愛し、どんな言動の底にも愛がある、と信じる人は、親の立場であれ、子供の立場であれ、この世の中に意外と大勢います。そのような世間知らずな幻想を抱く理由は大抵、自己保身や自己の言動を正当化する為に都合が良いからですが、まさにこの映画はその本質を鋭く、容赦なく描いています。 親の愛絶対信者達に日々悩まされている人には溜飲が下がるような思いの映画とも、言えるかも知れません。

母は息子トジュンと一心同体だと強く信じています。ほぼ近親相姦のようなその愛情は、トジュンが小便をする時に股間から目を離そうとしない場面に良く現れています。
過干渉という言葉などとっくに通り越していて、もはや息子トジュンに対する執着でしかありません。
そして恐ろしい事に幼かったトジュンに農薬を飲ませて心中しようとした過去の事実に対しても、自身の愛情の深さゆえと、思っている節もあるこの母。

母はトジュンの無実を信じ、あらゆる手段を使ってでも息子の冤罪を晴らそうとします。そこには全く躊躇が無い。
そしてトジュンにとって都合の悪い証人を殺害すらしてしまいます。
我に帰った母は自らのした事に対しパニックになりますが、証拠を隠滅しようとしながら、おかあさん!どうしよう!と叫ぶ場面は凄まじいの一言で、母を演じるキムヘジャ、凄い女優さんですよ…並の力量ではない。

そして息子トジュン。
トジュンを演じるウォンビンが持ち合わせいるイノセントな部分からここまでトジュンという人物とシンクロさせてしまう凄さ。

イノセントであるからこそ、狡猾であり小賢しさを持ち合わせている事もきちんと描いているのがこの映画。
何も知らない純粋であるという事は恐ろしい事でもあると言う事にもきちんと向き合っています。

そして被害者であるアジョンという女の子と、容疑者となるトジュンの見事な対比。
アジョンが誰からも神からすら、見捨てられた子供なら、トジュンは全てから守られて庇護されている子供だと言う残酷な世間の真実。

ラストに母が辿り着いた真実については、ぜひこの映画を観て確かめてもらいたい所ですが、親の愛絶対信者にとっては、観ていて居心地の悪くなる映画なのは間違いないと思います。

ポンジュノ監督本当に恐るべしです。

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