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あらすじ
旅回りの芸人であるザンパノは、はした金で知的障害のある娘ジェルソミーナを買い助手とするが、粗野で乱暴なザンパノとの暮らしは心優しいジェルソミーナにとって辛い日々であった
ある日ジェルソミーナはキ印と呼ばれる綱渡り芸人と出会い、彼からこの世に生きているもの全てに価値があり、誰かの役に立っている、と教えられた事により、自分自身を生まれて初めて肯定する事が出来、ザンパノの側にいて彼の役に立ちたいと強く思うようになる
しかしキ印の事を好かないザンパノによって事故ではあったがキ印は亡くなってしまい、それを目撃したジェルソミーナは心を病んでしまうのだった…

(物語の重要な箇所と結末に触れています)

この美しく悲しい物語について書こうとする時、この映画の美しさ悲しさ素晴らしさをどんな文章をもってしても語りきれない気がします それはこの映画を観た人全てが思うところではないのでしょうか

家や故郷といった背景が希薄もしくは全く見えない登場人物が大半を占めているこの映画には孤独が貫いていて、だからこそジェルソミーナの純粋さや優しさが余計に輝いてみえます ジェルソミーナの存在こそが家であり故郷であり拠り所であるのだと観ている我々には伝わってきますが、ジェルソミーナが愛したザンパノだけがそれに気付く事が出来ない

そしてあの淀川長治先生が存在が神である、と仰っていたキ印という綱渡り芸人(淀川先生本当に凄すぎる)
彼は自分自身の運命を悟った人間であり、この世の残酷さに打ち震えるジェルソミーナを救った人間であり、悲劇的な退場の仕方ではあるけれど、ある意味役目を終えた、と言うべきなのかも知れません

そしてザンパノ
年齢を重ねてからこの映画を観た時に、粗野で乱暴な自分自身とは一番遠く離れたように思っていたザンパノこそ、自分自身に一番近い存在だったと気付いた人は僕も含めて多いのではないのでしょうか
愛に気付かず後悔し嗚咽し、だけど時間は決して戻る事はない それを台詞に頼る事なくザンパノという男の生き様全てで見せつけるこの映画のラストはただただ圧倒されるばかりで、この映画こそあらゆる年代全ての人間が人生の教科書として観るのに相応しい作品だと思います

本当に名作です

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