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アーティストバイオグラフィーを書いたら、肚が決まった

いたみありささんの本『学校では教えてくれないアーティストのなり方』にグイグイ引き込まれた。
あっという間に読んで、自分でもアーティストバイオグラフィーを書きはじめていた。

アーティストバイオグラフィーとは、「アーティストとしての履歴書」。
ギャラリーやコレクターなどに対して、自分は何者かを明らかにするものであるそうだ。

私が特におもしろいと感じたことは、「三人称で書く」という点だ。
・アーティスト自身の内側の秘めた思い
・アーティスト自身と作品との繋がり
・世界観
などを、他者に分かりやすく伝わることが求められるのだなぁと。

「自分の内側を見せるような経験を」

いたみありささんは、バイオグラフィーの例を挙げた章で、
自分の感情の奥深くまで手を突っ込んで、言葉をもぎとってくる」と書き記している。
アーティストは作品だけをもくもくと作っているイメージがあった。
でも、自分の内側と
とことん向き合う時間をとっているんだ!!
と新鮮な驚きだった。

自分の根底にある何かを表現したい」という情熱が、文章に乗ることが不可欠なのだと感じている。

また、この本には、ファンづくりの大事さについても書かれている。

――船出を連想した。
誰かが「おれは〇〇に行きたいんだ!!」「〇〇をお土産として持ち帰って、みんなにシェアしたい!」などと宣言し、乗組員を集める。
出資人も募るだろう。
アーティストは船に乗り込む人で、そのファンの方は、出資人にあたるのではないかと私は感じた。
(あまり良い例えではないかもしれないが……)

アーティストの冒険やプロジェクトに賛同してくれる人が、ファンなのではないだろうか。
無事に港に帰ってくるたびに、みんなでどんちゃん祝って、得てきたものを喜んでシェアしたい。

   *   *   *

自分の欲しい景色・未来が少しずつ見えてきたところで、
終盤の以下のことばが刺さった。

アウトサイダー、アーティストであっていい。

アウトサイダーという考え方はまるで泉から湧き出る水の如く、その人の内側から湧き出てきた何かを、外に出している行為で自然発生的で人間の神秘を感じさせずにはいられない。

自ら得た経験をギフトとして次へ伝えていくこと

自分のなかで今まで繋がらなかった言葉たちが、文章として自然にそっと紡がれてゆくのが分かった。

見たい景色があるんだよ。

自分のバイオグラフィー

速渡普土(=フーバ)は、長野県・北アルプスの山脈の麓で、雪どけが始まるころ生まれた。
かえるや野ウサギ、ツバメ、イノシシなど色んな生き物の気配を感じながら育ち、通学路の木の実をほおばる道草に余念のない幼少期を過ごす。
進学などで4度ほど引っ越しをしたが、どの家からも、その土地の名峰を眺めることができ、精神的にも山に育まれた。
 
18才の頃、速渡自身の中に湧いてきた「森に還りたい」という内なる声にしたがって、各地の森を歩き、森にまつわる本をむさぼるように手にとった。
その旅や読書遍歴の中で、ハチミツと出会う。
在来種の日本みつばちの蜜を食べ、感涙した。
森や野山の野性的なエネルギーが、彼を満たした。
 
各地のハチミツを食べ歩く旅の末に、北海道の蜂蜜屋に就職。
14才頃に教えを受けた美術教師の影響で、アートに対する種火は持ち続けていた。
羊牧場のレストランで羊毛を使って作られた絵を見かけ、作ろうと思い立つ。
 
羊毛という素材の性質もあり、彼の作る絵は抽象的だ。
風景や生き物をテーマにした絵を好んで作り、そうした絵は見る人の記憶をそっと引き出す。
速渡は絵を見た人が、その人自身の豊かさに気づくきっかけになって欲しいと強く願っている。
 
ミツバチは鋭い針を内包しつつ、甘くておいしい蜜をつくる。
ニードル針で羊毛を刺しながら、やわらかくて本質的な絵をつくることが、彼にとってのアートの喜びである。

ミツバチたちが、森や野原の恵みを集め、蜂蜜として凝縮させるように、速渡も自分の見聞や経験、他者の経験などを織り交ぜて、一つの絵として凝縮させたいと日々模索している。
 
蜂蜜が、味わう人の心身の健康に寄与するように、自分の絵が、見る人のウェルビーイングに少しでも貢献することを、彼は強く願っている。


追記①:中学生の時の美術教師からのメール

中学生のころ、特に選択美術の時間が好きだった。
その時の美術教師Y先生に、書き上げたばかりのバイオグラフィーをメールした。

バイオグラフィーはシュタイナーのワークでもやっていますね。
時系列で自身の記憶を列挙しそこから浮かび上がる自身のホログラフィーをさらにフォーカスしていくと複合体の実体としての自身が具現されるのでしょう。
実に興味深い文章です。
文章末の「自分の絵が見る人のウェルビーイングに少しでも貢献することを、彼は強く願っている。」
この文章を核に写真等を添えれば一冊の本(画集)ができますね、あるいは映画もできますね。

というように、さっそく返信をくださった。
今後も、Y先生とやりとりができたらいいな。
いつか良い報告もできるように。

追記②:本からの気づき

私が今入っているZERO SCHOOLの、オンラインの集まりで話題になった本を読んだ。

彼がさらにもう一つの砂丘を登ろうとした時、彼のがささやいた。
「あなたが涙を流す場所に気をつけなさい、そこにがいます。
そしてそこにあなたの宝物があります」

『アルケミスト 夢を旅した少年』p. 189

20才の時、生まれ育った長野の山で採れた、日本みつばちの蜂蜜を食べた時に感涙した。
たしかに蜂蜜の存在は、私にとって宝物だなーと。

仕事で出会うお客さんたちは、暮らしの中で蜂蜜を創造的に使っている方々。
アーティストの先輩・創作仲間のような感じもしている。

少しずつ、その場所を掘り進めてゆきたい。


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