EVE Audio SC205 と Focal Shape50のお話

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・はじめに

こいつまたなんか買ってる。

ええ、ちょっと前にSC205を買いました。
もともと使っていたShape50も申し分ないスピーカーなのですが、最近の好みなジャンル的にこっちはどうなのだろうかと思いまして。

そんなわけでモニタースピーカー中堅機としては有名なこの2機種、個人的な主観とキャリブレートソフトで客観的なレビューをしてみようかなと思います。
迷っている方の参考になれば幸いです。


・SC205

一般的なモニタースピーカーと違って、DSP回路を搭載していることで有名なEVE Audioのモニタースピーカー。

仕様とかの細かい部分は以下MIのリンクからどうぞ(投げやり)

Web上でのレビューで多いのは、若干ドンシャリ気味、広域がきらびやか、DSPフィルターが優秀、ノブ周りのメモリが光ってテンションが上がる(わかる)など。
Adam Audioと比較して、どちらにするか悩んでいる方も多い印象。あっちは上が50kHzまで出るらしいので、ハイレゾ音源には良いとか。

実際に私の部屋で鳴らすとどんな感じか、Sonarworksのreference4で測定してみました。

以下はスピーカー側のフィルター設定をすべてオフにした状態で測定した周波数特定です。

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1kHz付近が少々凹んでいますね。
低域はまさにデスクフィルターで補正したくなる形で波があります。

ということで、デスクフィルターを-4に設定して再計測。

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先ほどと比べて200Hz付近が落ちて、4~500Hzが少し上がっています。
ついでにハイが多少落ちてますね。測定誤差かもしれない。

ブーストのほうも試してみましたが、うちの環境ではデスクフィルター無しのほうが良い出音を得られそうな感じの結果となりました。

続いて主観のお話。
タイトル通りShape50と比較しての感想となりますので、その点ご了承ください。

ローは多少硬く、タイトに感じます。ハイはきらびやか、悪く言えば耳に刺さり聞き疲れすると言うレビューも見かけましたが、個人的には思った以上には出てこないなという印象。
ただ、決して足りていないと感じるわけではなく、金物の細かいパッセージなどはしっかりと存在していることが分かる程度には出てきていると思います。
どちらかというと驚いたのが中域で、歌モノを聴くとボーカルが前に張り付いてきます。
中域が多少抜けたドンシャリ目の音というレビューが多かったため、想像の真逆でこれにはびっくり。補正をかけて後述するShape50と双方近い状態にしているとはいえ、思っていたよりもしっかりとスピーカーのキャラを感じられますね。

解像度や定位感については、Shape50とほぼイーブンかなと言った感じ。
リバーブの切れ目などはSC205のほうが多少わかりやすいかなと思いました。そこはAMTツイーターの特性やキャラの部分でしょうか。

スピーカー自体の重さもShape50より一回り軽かったことには驚きました。
買うサイズ間違えたかなって一瞬不安になったよ。

総合的には、この帯域が欠けている、出すぎている、という感じではなく、全体的にバランス良く硬めに鳴らしてくれるスピーカーなのかなというイメージです。
邦楽女性Voが物によってはたまに耳に刺さる事があったので、その点はこれからの使用でどの程度こなれていくのか楽しみですね。

洋ハードロックやfuture bassなどはとても気持ちよく聴けました。特にキックのアタック感がしっかりしていていい感じです。
アコースティック系も一つ一つの発音がくっきりと見えて楽しいです。この部分は逆に情緒がないと感じる人もいるかもしれないですね。後述しますがその点はShape50が素晴らしい。

SC205はくっきりあっさり!って感じのスピーカーなんだな~と思いました。
私の耳はそこまで良い方ではないので、DSP処理で音質が劣化しているのかとかについては正直わかりませんでした。比較するにしてもDSP処理しないSC205は無いもんね!
特定帯域がバッサリ切れるとか、ノイズが乗り続けるとかそういうことは一切ないので、いいのではないでしょうか。


・Shape50

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少し前から宅録のマストとして話題となったFocalのShape50。こちらは一年半ほど使用しての感想になります。
置く場所がなかったから作業用ラックの上に避難していただいている……。

仕様などは例のごとくMI公式からどうぞ。

本機のレビューとしてよく見かけるのは、圧倒的な解像度、側面についたパッシブラジエーターの恩恵、背面ディップスイッチのフィルターの利便性などですね。

実際の音の方はどうなのでしょう。上記SC205と同環境で計測するとこんな感じ。ディップスイッチはすべてゼロ(補正なし)の状態。

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80~200Hzはスピーカーと言うよりは部屋の癖って感じのカーブ。それを踏まえて見ると、150Hz付近がSC205より多く出ていますね。
中音域成分もやや多めに出ていますが、1kHzから先は下に比べるとやや控えめ。
7kHz付近から少しずつ下がっていくのが見て取れると思います。

実際に音を出して聴いているときの感覚としても、おおよそ上記の図に近い印象を受けます。
ローのアタック感はやや柔らかめ。しかしちゃんと存在していることがわかる、ちょうどいい塩梅に聴こえてきます。
特筆するべきはやはり中音域のバランス感だと個人的には感じます。
しっかりとした存在感と厚みがありながらも、こもったような音ではないところは流石、人気機種だけあるな~と思いますね。
高音域も、やや右肩下がりですが、特段足りていないという印象は受けませんでした。柔らかくもしっかりと存在していることがわかるので、聴いていて気持ちがいい音です。

側面についているパッシブラジエーターの恩恵については、あまり壁際ピッチリで設置していなかったのでいまいちピンときていないんですが、背面バスレフのものよりは間違いなく設置場所の自由度はあるのだろうと。

他にShape50の特徴的な部分は、音量調節用のノブが無いこと。自動スリープモードが搭載されているところでしょうか。
スピーカー側で音量を調節することができないため、音量調節はインターフェース側で行います。この点は、左右それぞれの音量を揃えていく手間が省けるのでGood。

自動スリープについては、個人的には必要ない、あるいはオンオフを選択できれば良かったのに、と感じています。
というのも、入力信号が一定時間ない場合にスリープモードになるのではなく、入力音量が一定以下の状態が続くとスリープ状態になってしまうからです。
そのため、作業中に小さな音で環境音を流していたり、ラジオなどを聴いているとスリープしてしまうこともしばしば。そのたびに適当な効果音を鳴らしてスピーカーをアクティブにするのが地味に面倒でした。

とはいえ、通常の制作をそこまで小音量で長時間行うことはあまりないと思うので、DTMの面では危惧しなくてもいいかと思います。
この点だけは非常に残念ですね。

総合的に見ると、聴いていて非常に気持ちが良く、プレイングや制作時のテンションを上げるには最高のスピーカーだと個人的に思います。
モニターライクな無機質な音というよりは、暖かで太みがある音が出てくるので、リスニング用途のみでも十分楽しめるのではないでしょうか。
とはいえミキシング作業ができないというわけでもなく、しっかりとした解像度と定位感も持ち合わせているので、リバーブやコンプの深さもちゃんとモニターできます。

ハードロックやメタルも問題なく聴けますが、やはり聴いていて一番気持ちがいいのはアコースティック系やオーケストラかなと。豊満な中低域がより一層雰囲気を出してくれ、暖かい高音域が気持ちよさの極点に引きずり込んでくれます。控えめに言って達する。
逆にEDM系だと、もう少しかっちりとした暴力的なローが良いんだ!と感じるかもしれないです。


・総評、簡単な比較

どちらもとても良いです。
ペア10万円付近のモニターとして選ぶなら、どれを選んでも大外れはないと考えていますが、この2機種も例に漏れず最高にテンションの上がる音を出してくれます。
あとはもう好みの部分だと思うので、自分に合った1台を見つけて頂ければと。

超低域については、5インチモニターに求める部分ではないと思うので割愛しましたが、そのうち余裕があればEVEのTS107とか導入してもっと気持ちよくなりたいですね。

最後に、上記を通してそれぞれの機種のざっくりとした比較です。あくまで体感なので話半分程度に考えて頂ければ。

質感
SC205:やや硬め
Shape50:柔らかめ

設置場所の柔軟性
SC205:通常のモニターと同様
Shape50:やや壁際よりでもいける(らしい)

得意ジャンル
SC205:ロック、EDM
Shape50:アコースティック、クラシカル、歌モノ

見た目のテンション上がる感
SC205:カッコよくて上がる
Shape50:木目が可愛くて上がる

スイートスポット
SC205:やや広め
Shape50:通常のモニターと同様

特徴的な帯域
SC205:ハイミッド
Shape50:ローミッド

空気感を一言で表すなら
SC205:真冬の晴れた昼下がり
Shape50:梅雨の時期、エアコンの効いた自室(安心するでしょ?)(伝わらないにもほどがある)

・試聴にあたって使ったもの

さっき最後って言ったじゃん。まだ続くんか?(続くよ)

一応参考程度にして頂ければと。
オーディオインターフェースはRMEのBabyface Pro FS。以前レビュー記事を書いているので気になる方はそちらをご覧頂ければ。

音源は最近Kawaii Future bassにとてもハマっているのでその辺とかゲームのサントラとか、親の声より聴いたお気に入りとか。

ハニカムベアーにめっちゃハマってしまって。毎日気が狂ったように聴いています。Voの声質と雰囲気が好きだし曲の雰囲気もメッチャ好き。みんな聴いて。
久しぶりにめちゃめちゃハマったアーティストかもしれない。

あとはDead by Aprilにもメッチャハマってます。サビの突き抜け感気持ちよすぎ問題。

これはこれでもう1記事書けてしまうので今回はこの辺で!
なにかの参考になれば幸いです。

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