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殺"殺人鬼"鬼の名はハルクェイヴァス

普段より少し明るい夜に、99人の殺人鬼が殺された。ハルクェイヴァスと名乗る男によって。

その知らせは、東京の殺人鬼コミュニティの間ですぐに広まった。殺された殺人鬼の中には、東京の治安低下に貢献した、「レッドラムズ・ネスト」のメンバーも含まれていた。22世紀初めから数十年続いてきた殺しの楽園神話を揺るがす出来事だった。

多くの殺人鬼の脊髄に、ハルクェイヴァスという単語が刻まれた。次は自分が殺されるのではないかと怯える者。死神を殺して成り上がろうとする者。仲間の殺人鬼を殺され復讐に燃える者。「24時間耐久殺人レース」への出場を見送る者など、反応は様々だった。

誰もが、男の存在を迷信だと思い込もうとした。法も治安もない、殺人鬼が支配するこの世界に、牙を突き立てんとする者がいる。馬鹿馬鹿しい。被殺階級が慰みにつくったおとぎ話だ。そのはずだ…………。

「そうだ……おとぎ話なんだ……」冷たいマンションで、エルクが呟く。殺人鬼価格で買ったPCからは、ハルクェイヴァスに関する情報が滝のように押し寄せる。殺人鬼ランクC+のエルクには、どれが本物で、どれがフェイクか分からない。

迷信だと笑い飛ばせればよかっただろう。不幸なことに、エルクはそれが出来なかった。この都市伝説は、コミュニティの邪魔者を粛清する方便ではないのか。その中に自分が含まれてやしないか。あるいは……本当に殺人鬼を殺人するマニアックが実在するのではないか。疑念は広がっていく。

洗面台に行き、顔と疑念を洗い流す。鏡を見ると、誰かいる。生きている。確か、昨日最後の消耗品(サンドバッグ)を泣く泣く殺したはず。

……ハルクェイヴァス?そんなバカな

BLAM!

エルクは洗面器に顔を突っ伏して倒れた。……死んではいない。鏡の割れる音が聞こえる。闇雲に後方へノールック射撃。うめき声。逃げる。脚に痛みと熱。撃たれた。死にたくない。死にたくない!

【続く】

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