あのピトのパナはピクイ
コピーライターという仕事柄、いつもことばを気にかけている。書きことばだけではない。話しことばもそう。
大阪で創業、その地に本社を置くフェンリルには関西弁を話す人が多い。関東で生まれ育ち働く私はいわば非主流派だ。毎週土曜日の朝、前日夜までウェブ会議で耳にした関西弁の残響が消えないままNHK-FMのラジオ番組「世界の快適音楽セレクション」を聞き始める。司会進行は大阪出身のギターデュオ、ゴンチチ。ふたりの柔らかな大阪弁を聞くと、終わったはずの仕事のムードがよみがえる。午前9時から10時55分まで、いろいろな音楽がかかる。番組が進むに従い、ようやく仕事がフェードアウトしていく。
大阪弁のイントネーションの起源は中国語にある。ワールドミュージック界の仕掛け人と呼ばれる音楽家の久保田麻琴さんが著書でそう書いている。
音楽家らしい見立てである。外国語のイントネーションに憧れ、まねてみようという心情は、矢沢永吉や桑田佳祐、氷室京介らの英語ふう巻き舌歌唱法に連綿と受け継がれている。じぃ〜かんぅよ〜ぅとまぅれぇ〜、いのぉちぃぅのぉ〜、ぅめまぁ〜ぅい〜ぅの〜、ぅなぁかぁでぇ〜。あれは、英語のロックを格好よくまねているのか。最近のミュージシャンで巻き舌上手を探せば、椎名林檎か、米津玄師か。
日本語のアクセントについてあれこれ検索していたら、面白いYouTuberを見つけた。minerva scientiaさんという在野の言語学研究者である。言語学の知識ゼロの私にとって驚きの話が繰り出される。チャンネル登録者数が12万人に上るから、ご存じの方もいるだろう。
日本語のアクセントには「京阪式」と「東京式」とがあって、関西弁の「京阪式」が平安時代の「院政期アクセント」に対応するという(この辺り)。日本語の「歯」は平安時代には「fa↗a↘」と発音し、奈良時代には「pa↗a↘」と発音していたとのこと(この辺り)。
情報量が多く、ナレーションの再生スピードが速いことも相まって、視聴しているとクラクラする。
「は」「ふぁ」「ぱ」で思い当たったのは、作家の池澤夏樹さんが古代の音韻と表記について書いていたことだ。しばらく前から気になっていたのだが、ようやくその解説が見つかった。
話しことばが100年、1000年という単位で変わることはわかった。一人の人間がそれを経験することはできないが。いま起きている5年、10年単位のことばの変化あるいは乱れに目くじらを立てても仕方ない。その点を胸にとめておこう。大きな学びである。
さて、一昨年と同じく、今年もケンタッキーフライドチキンを取りにいく時間がきた。このへんでエントリーを終えるとします。お気に入りの大阪弁ブルーズをご紹介して、メリイクリスマス!
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