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織機のある暮らしを始めよう。

11年前、譲っていただいた織り機。
やっと日の目を見た。
一度見に来て、気に入ったら譲ってもらうという事で電車に乗った所で東北大震災の余波に飲み込まれた。

電車は止まり、先方に連絡もつかず、家に帰る交通手段も失い、駅のホームから人の流れと共に外へ押し出された。

縁がなかったんだな…

諦めていた所、数ヶ月が経ち、また縁がつながった。
当時、妊娠中だった私は即決でその織り機を譲り受けることにしたのだが、妊婦でなくとも自分では運べそうにない重さだった。

そこで、夫に車で運んでもらったのだが、この織り機はジャッキ式と言って、とても重たい種類のものだった。
本当はアトリエに運びたかったのだが、三階まで上げるのは大変。
急遽自宅の作業部屋に運ぶことにした。
とはいえ、その部屋も2階にある。
何十キロあるのか知らないが、ガラスの腰を持った夫に運べるのか不安な重さ。
妊婦の私は何もできず、オロオロ見守るだけ。
しかし、ガラスの腰の夫はうめき声を漏らしながら、階段の壁をガリガリ削りながらなんとか2階まで運んだ。

その織り機が、なんと11年ぶりに復活!

made in canada lec lerc社製
ジャッキ式、4枚綜絖の織り機である。

織機のマーク。なんか可愛い。

この織り機は蛇腹の様に前後を伸縮させることができ、省スペースに収納ができる。
長い間、折り畳まれた状態だった織り機を初めて開いてみた。

大学院時代、大学の工房にあったのがジャッキ式だったが、メンテナンスは定期的に業者がやっていたので織り機そのものの仕組みを知ることはなかった。
前の持ち主が、運びやすい様に色々な部品を外してあったのだが、説明書がなく、私は途方に暮れた。
しかし、この織り機の画像自体はネットで見ることができたから、色々な角度から見て再現したり、ジャッキ式の仕組みを調べたりした結果、やっと使えるようになった。

積もり積もった埃を取り除き、踏み木を踏んで綜絖がスムーズに動いた時、この織り機をこれからもずっと大切に使おうという気持ちが芽生えた。

専門学校のときは天秤式か轆轤式の織機が多かったからそちらの方が使い慣れているのだが、ここでこの織り機が私の元にあるという事は何か理由があるのかもしれない。

もう既に自分の中では、この織り機で織りたいものが決まっているから綜絖を注文してみようと思う。
まずは試織‼︎

とはいえ、衝動的に始めた織り機のメンテナンスなので、手持ちの糸で何か織ってみる。

今日は整経→筬通し→綜絖通しまで。
金綜絖のぶつかり合う音がしゃらしゃらと心地よい。
私はこの綜絖越しに筬が見える景色が好きだ。

確かに、綜絖通しは面倒くさい。肩が凝る。
しかし、のんびりやってみると癒される。
今まで束だったのが1本1本離されて風通し良くなっている様子が涼しげである。

織の作業は機掛けが大変なのだが、久々にやってみると楽しい。

明日は続きの作業をして織り始められると良いのだが。






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