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たいせつにしまっておいたもの (子供には絶対に読ませたくない)オトナの童話003

ある日の昼下がり
ウサコは部屋の押し入れの奥

そのまた奥
隠しとびらのようになっているところから

「大切にしていた、宝物をみつけました」


「まさか、こんなところにあるなんて」

ウサコはおどろきました

そう
自分でもしまっておいたコトを
忘れてしまっていたからです


大切な宝物なので
奥に奥に誰にも見つからないように

隠しておいたのです

・・・・・・・・・・・・・

ウサコは
恐る恐るその箱を開けてみました

キレイな包装紙に包んで
2重に袋に入れて
箱の中にしまってありました

箱はずいぶん汚れて汚くなっていました

中には
光るガラスのカケラ
割れたビー玉

キティーの包装紙
ピンクの髪留め

たいせつにしていたモノが
いっぱいに詰まっていました

・・・・・・・・・・・・・

その中に
千代紙に書いた手紙がありました

「おかあさんのバカ」

えんぴつでなぐり書きで書いて
紙は涙で濡れたのでしょう

シミのように
なって
ところどころカビています

・・・・・・・・・・・・・

おかあさんが部屋に入ってきました

ウサコの箱を見て言います
「どうしたの?その汚い箱」

うさこは急いで手紙を隠します

そして言います
「宝物が出てきたの」

おかあさんは顔をしかめて言います

「そんな汚いのもういらないでしょ」
「捨てなちゃいなさい!」

うさこは「ドキっ!」としました

こんな汚い箱を「宝物」だなんて、、、
ワタシは恥ずかしい


「でも、、、」

ウサコは言います

「大切にしていたものが入っているの」

言ってから、やっぱり恥ずかしくなって
顔が熱くなりました


「そんなの持ってるからいつまでも子供なんでしょ」

おかあさんは面倒くさそうに言います

「そんな汚れたキタナイもの」
「捨てなくちゃダメでしょ」

「カビも生えててキモチワルイ」


ウサコは自分が情けなくなりました
こんなものを大切にしていた
あの頃の自分がミジメに思えました

そして、今も捨てたくないキモチの自分が
ダメな子のように思えてきます

・・・・・・・・・・・・・

「もう、いらないでしょ!」

「そんなの捨てなきゃダメ!」

おかあさんの口調が強くなります


「いらないけど、、、」
「でも、、、」


ウサコは箱が滲んで見えなくなりました


「でも、大切なものだったんだ、、、」

どうしても、そう言えないまま
ウサコはずっと泣くしかありませんでした




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