スーパーコンシェルジュ 7-②

 ②
 藻塩のメーカーさんを後にして、次はお醤油。
 で、思い切って聞いてみた。
 「うちの醤油はこれに一番合うんだよ、ってありますか?」
 「あー。ある、でしょ、多分」
 ちょっと驚いたような顔をして、でもにこにこしながら答えが。
 「僕はこれを魚の天ぷら、丸天とか、さつま揚げって呼ばれてるやつね、あれをちょっと焼いて、垂らして食べるのが結構オススメですね。もちろんお刺身とかもいいんだけど、どうだろ、それぞれメーカーに聞いてみると面白いかも」
 そこのメーカーの甘露醤油を天ぷらに。お刺身用は甘露醤油の所が多いけど、天ぷらかぁ。
 「結構濃いめの味が、てんぷらの油っ気とガッツリな感じで合うんですよね」
 なるほど。聞いてみるもんだ、と思う。メーカーさんによって(かぶっちゃったらアレだけど)「うちのは天ぷらに」「刺身に」「冷奴に」みたいな色々が(もしあったら)そういう「しょうゆのティスティング」とか、おもしろそう。
 「うちでも本店では味見して頂いてますよ」
 「そうなんですか」
 「やっぱり、味をみて頂いて買っていただきたいですからね。でもスーパーさんではそこまでの所はないだろうなぁ」
 「聞いたことはないですね」
 まだまだ、切り口なんてあるじゃん、って。
 
 一時間後、待ち合わせのバイヤーと合流し、さっそく報告。なるほどなぁと言ってくれたものの、後半「塩のエンドとか作りません?」というと、さすがに表情がこわばってしまった。うーん。
 バイヤーでこれなら、チーフなんてもっとだろうなぁ。
 
 翌日、出勤して、サービスカウンターの人には昨日の展示会でもらったサンプルなんかを渡して、御礼を言う。
 「どうだった?」
 「あー。なんかいろいろありすぎて」
 一言では言えない、かな。でもまだまだいろいろやれるんじゃないかって思えたことが一番の収穫だろうな。
 
 「お店はどうでした?」
 「うん、普通の平日だったよ」
 「ですよね」
 分かってるんだけど。仕事で店を外していると、結構気になるものだったり。
 「私の休みの日って、やっぱりサービスカウンターの方にいろいろ来ちゃってますよね?」
 「そりゃそうよー。でもね、なんか最初はこわごわだったけど、最近みんな、楽しそうになってきたよ?」
 吉野チーフの言葉。そうなんだ。
 「自分の知識にもなるし、お客様との会話も増えたし」
 「なるほど」
 
 昼休憩。森川さんと一緒に食べて、情報交換なんかしてみる。昨日の展示会の話とかもしてたから、森川さんも「どんなだったか、教えてね」って言ってくれてたのもあるし。
 で、昨日考えたこととかも交えつつ、おしゃべり。
 「そう言えば『塩エンド』ってないね」
 なんて言われて、結構そこにウケてた。似たようなもので、用途をわざわざ分けて提案するって、おもしろいかなと思うんだけど。昨日帰り道にも思ってたんだけど、例えばお豆腐とかも。
 「湯豆腐にはこれ、冷奴にはこれ、麻婆豆腐にはこれ、お味噌汁にはこれ、みたいなのっていいと思わない?」
 「あー、確かに試してみたい気持ちにはなるかもね」
 「お鍋用ってあるんだけど、普通に『木綿』『絹』とかって、種類ありすぎじゃない?って思うことがあるんだよねー。でもそういうので一回やるとさ、お客さんも納得できて、それぞれにお客さんがついてくれて『麻婆豆腐にはこれなのよー』なんて言って買って帰って貰えたらすごく嬉しい気がするんだよね」
 「あー、確かに。うちは逆で、そういうの多すぎて、逆にこれだけあってどうするの、とか言われるけど、知ってる人はすごく嬉しそうに『見つけた!』って感じで買って行かれるからね。グラスとか、お鍋とか」
 森川さんにも分かって貰えて、少しだけ嬉しい。うん、道程は遠いかも知れないけど、もうちょっと頑張ってみよう。
 
 ついでにさっき吉野チーフにも言われた「サービスカウンターのメンバーもちょっと楽しそうになってきた」って件も。
 「あ、うちもそう。そう言われた。マネージャーに」
 「そうなの?」
 「うん、私が休みの日とか、結構楽しそうにやってるよ、って……」
 「なんか、似てるね」
 「そうだね。だから割と最近、安心して休めるかなって」
 「そうかー。そうだよね、やっぱり休んでる時って『負担かけてるかも』って思ったらなんとなく気になっちゃうっていうの、あるもんね」
 「そうそう。それが少しラクになったっていうか」
 
 「私もさ、吉野チーフから最初に『行ってもいいですか』って言った時に『その内容を教えてくれたらいいから』って言われて、なんとなくお世辞っていうか、『リップサービス』みたいな感じなのかなって思ったんだけど、結構本当なのかなって思ったり」
 「本当なんだと思うよ」
 「だと、いいよね」
 本当に、そうだといいなって思う。

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