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保険外サービス内服確認1周年の振り返り 下

次の段階へ移行

1週間内服確認サービスを実施して内服確認サービスの必要性は分かりました。しかし、その方法は検討の余地がありました。まず管理方法です。内服薬はあくまでAさん宅に置いてある。軽度認知症の人の所に物を置くと、それは忘れる元ですよね。確実な内服をするには誰かが手渡しして内服してもらうのが1番です。そして、1日に内服する回数が多い。これも内服忘れの元となります。なるべく最小にならないものか。処方は医師の範疇です。しかし、患者が飲みにくい処方は出来る範囲で改めるべきです。場合によっては変薬することで回数が減らされることはよくあることです。なのでご家族に内服の整理を主治医に相談出来ないかと伝えました。

看護師が介入するメリット

こうやってAさんの内服は朝1回に減りました。いつも決まった人だけが関わっていると「おかしいな」という視点が曇ります。今まで関わったことの無い私がてごすることで、違った目が入りました。こういう気づきは看護師が介入するメリットだと感じました。患者、家族、ケアマネジャー、ヘルパーと医療的な視点を持ち合わせて無い場合があります。医師がせっかく処方した内服が出来ていない。まして認知症患者に1日7回の処方は現実的では無いです。変薬などの情報提供は看護師の仕事でもあります。唯一は薬剤師。飲み忘れた内服薬を薬局に返しに行って、受け取った時点で薬剤師は気がついて欲しいですよね。薬剤師の内服管理って薬の錠数をカウントして所定の用紙か何かに記載することですか?調べると日本全国で飲み忘れられた薬は何億円とも。これでは保険制度も破綻しますよね。

てごナースが持参変更

Aさんの内服は朝1回にまとめてもらいました。しかし、薬自体が本人の手元にあったら、紛失や二重内服のリスクはあります。 なので毎朝、私が内服を持参するという方法をご家族に提案しました。当初毎朝持参は考えて無かったのですが、先程のリスクを考えると私が持参するのが安全だと思ったのです。それ以降、毎朝確認に訪問するだけでなく内服薬を持参することになりました。内服薬を私の手元に管理して土日も含めてひと月毎朝の訪問です。月額10,000円の契約では赤字です。しかし、2.3ヶ月の間に少しづつ自己管理に移行するという目標でしたので、短期間なら赤字でも実績作り費用だと覚悟しました。

確実な内服の効果

Aさんは認知症薬、抗うつ薬、糖尿病薬などを内服していました。私が介入した当初はうつ状態でした。朝起きるのも面倒だったようです。表情も冴えず口にする言葉も拒否的、否定的なものが多かったです。しかし、徐々に生活リズムもつき表情も明るくなっていきました。2ヶ月目頃には前向きな発言も聞かれるようになりました。その間ご家族とお会いする機会も2回ありました。ご家族もAさんの変化に気がついておられました。病院受診時の医師の評価も上々だということでした。医師は「確実に内服出来ているから今の状態だから。」と確実な内服の効果も評価していました。精神科の治療は確実な内服が鍵になります。医師も不確実な内服で症状が不安定な時は何を基準にしたら良いのか判断に迷います。

自己管理の可能性

そうやって毎日の内服確認サービスは続いていきました。雪の日も雨の日も風の日も毎日です。月1回の病院受診日には集金を兼ねてご家族と会う機会はありました。その度に自己管理の可能性について評価しました。他の出来事や物事も忘れるなどを考慮すると自己管理は難しいのではないかという結論に至りました。その度に本人は平然と自分で管理出来るからと言いました。自己管理に挑戦して万が一飲み忘れた場合は、1日分を朝1回にまとめてあるだけに、1回の飲み忘れはダメージが大きいです。

8月 半年が経過し評価

当初、Aさんやご家族は自己管理を目標にしていました。私は実績を積むという目的がありました。そうやって半年が経過しました。しかし、実績のために赤字覚悟とはいえ毎朝Aさん宅に通うのは大変でした。ガソリン代も何年振りかの高値でした。 *個人情報のため我が家からAさん宅への距離や時間は伏せます。        赤字でも良かったのは通学する娘の送迎の通り道から近いということでした。しかし、夏休みに入り娘は家にいます。娘を学校へ送るわけでもなくただAさん宅へ内服確認サービスへ行く。これは赤字覚悟とはいえ続けられないと思っていました。病院受診日にご家族に会うので半年の評価とともに料金の値上げを申し出るつもりでした。しかし、いざ値上げというのはなかなか言い出さないものです。「どうしようか、どうしようかと」悩んでいるうちに8月の病院受診日になりました。

渡に船

単に値上げは言い出しにくい、サービス開始から半年という区切りは言い出すタイミングとしては良いが・・。どうしよう、しかしこのまま続けるのは自分の気持ちは乗り気でない。やはり報酬はモチベーションになります。ご家族と値上げ交渉をしようとしたら、ご家族から「水虫の塗り薬を処方してもらったけど塗ってもらえまか?」と申し出がありました。Aさんの足の指を見ると爪白癬でした。爪白癬の薬は液体です。Aさんは塗るだけなら自分で出来ると言います。しかし、塗り薬自体を紛失することが予想されます。内服確認サービスに爪白癬塗布というプラスアルファがつきました。それを機にご家族へ値上げのお願いをしました。正確には私が申し出る前にご家族から「追加の料金は請求して下さい」と言って下さいました。そこで、正直な自分が欲しい報酬額を申し出ました。するとご家族は快く了承してくださいました。数日前から値上げ交渉をどうするか悩んだのが何だったのかと拍子抜けしました。自分も相手も心地いい金額が妥当な適性価格なのだと実感したものでした。

季節は真夏から秋、冬へ家族の一員へ

そうやってその後の半年も土日祝日の関係も無く内服確認サービスは継続しました。時には他に仕事を依頼されることもあり、追加料金もいただきました。詳細は割愛しますが、高齢者が田舎で1人暮らしをするには困り事はあるし、離れて暮らすご家族は心配なのだと実感します。ご家族とはLINEで繋がっていて、さまざまな報告、相談、連絡をしています。離れて暮らす自分の親の近くに相談に乗って動いてくれる存在は他には無いサービス。ご家族が職場でてごナースの話をすると、似たような境遇の人に羨ましがられるとのことです。私も毎朝通っているとAさんが身内のように思えてきましま。金銭の契約で雇われている関係ではありますが、赤の他人とは間違いなく違う気持ちです。         たまには我が家の夕飯のおかずをお裾分けしてみたり。

まとめ

ふとしたきっかけで始まった内服確認サービスは1年間大きなトラブルも無く経過しました。Aさんの状態も安定しています。主治医の評価も上々です。始めはサービス価格で始めたサービスですが、今は自分でも納得の報酬を得ています。時には付帯的な仕事もあり、上手に使ってもらっています。他人の薬を我が家で保管すること、毎朝確実にAに届ける緊張感はありますが、それは仕事と割り切っております。ご家族からは「ずっと続けたいから、てごナースさんには元気でいてもらわないとね」と言われております。これからも自分の体調管理を更に気を引き締めていきたい。無いから自分で仕事を作る。 以上



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