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やがて中心となって、このチームを引っ張ることを目指して #FC今治でプレーする 梅木怜

ピッチに立つたびに、目覚ましい成長ぶりに驚かされます。名門・帝京高校から加入した梅木怜選手が攻守で見せる躍動感あふれるプレーから、底知れない可能性がほとばしる。スピードを生かした攻撃参加が象徴するように、その進化は止めようがなさそうです。


▼プロフィール
うめき・れい
2005年8月25日生まれ、和歌山県出身。172㎝、64㎏。利き足は右。DF。背番号37。
ミラグロッソ海南(和歌山県) →ミラグロッソ海南U-15(和歌山県) →帝京高(東京都)→FC今治

身近な手本から多くを学んで

今シーズン、帝京高校からFC今治に加入すると、右サイドバックとして試合出場を重ねています。高校時代はセンターバック、U-19日本代表では左サイドバックを務めることもあるように、さまざまなポジションでプレーできるのは、梅木選手の強みですね。

スピードと予測を生かした攻撃参加が自分の特徴だと思っています。これまでたくさんのポジションをやらせていただいて、それぞれに学ぶことがありました。

高校1年の初めまで、自分はフォワードだったんです。それが高1のリーグ戦があって、もともと右サイドバックだった選手がけがしてしまったんですね。代わりにプレーしたのが、一つのきっかけになりました。

それから3年足らずで、右サイドバックとしてプロのピッチで躍動しているのは、天性の守備センスといえますね。フォワードからディフェンダーにコンバートされたとき、戸惑いはなかったのですか?

ポジションがどこであろうと、まずは試合に出たいという思いが一番にありました。プレーできる喜びが大きかったです。高2からセンターバックでプレーするようになりましたが、そこは変わりませんでした。

今、プロの右サイドバックとして戦うために、プレー動画を見たり参考にしているプレーヤーはいますか?

もちろん、ヨーロッパのリーグで活躍している世界的なプレーヤーの映像は参考になります。でも、一番はFC今治で一緒にプレーする身近な選手から学ぶことの方が多いですね。(市原)亮太くんや(松本)雄真くん、(野口)航くんから、いろいろ吸収することができています。

それぞれ右サイドバックとしてストロングポイントがあって、亮太くんは、攻撃に参加するときのあのスピードがすごいと思います。僕もスピードにはこだわってプレーしていますが、亮太くんは自分と比べると攻撃に出ていく回数がずっと多い。まだまだ鍛えないといけないと思います。

航くんはピッチを上から見ているような、全体を把握してサッカーをしているところがすごい。パスを付けて、自分も前に入っていって攻撃に絡むプレー、賢く頭を使った立ち位置は、とても学ぶところがあります。

雄真くんもポジショニングがすばらしくて、外に張るときと内に入るときのタイミングがとてもいいです。だから要所でダイナミックにプレーできるし、スピードとスタミナもすごいと思います。

フィジカルを高めていくことも、これからプロで戦っていく上で重要な要素になりますね。

練習や試合でいろいろな選手とマッチアップして感じるところで、フィジカルはまだまだです。フィジカルコーチの牧野(大輝)さんが若手向けの筋トレメニューを組んでくれていて、継続してやっていますが、強化したいのは上半身も下半身も、もう全身ですね(笑)。さらにスピードを上げたいし、当たり負けしない球際の強さも身につけたいです。

梅木選手は、どういうきっかけでサッカーを始めたのですか?

5歳離れた兄と4歳離れた兄がいて、どちらもサッカーをしていたんです。それで兄たちの練習や試合に一緒に行ったとき、みんなでボールを蹴って遊ぶようになったのがきっかけです。兄たちがサッカーをしていたチームが、僕が中学までプレーすることになるミラグロッソ海南です。僕は小学校に上がる前にスクールに入って、中学までサッカーをやらせていただきました。

チャレンジしたい気持ちが強くなり

生まれ育った和歌山県海南市は、FC今治でもプレーした駒野友一さんの出身地でもあります。これまで、駒野さんに会う機会はありましたか?

何度かお会いしました。海南市では、駒野さん主催の子ども向けのサッカーフェスティバルがあるんですよ。それに何度か参加させていただいて。

ガチガチに真剣な大会というよりも、遊びの要素も入った楽しくサッカーをするフェスティバルで。駒野さんがチームに入ってくれて一緒にプレーしたり、リフティングを披露してくれたのですが、とにかくうまくて驚きましたね。全然、ボールを落とすことなくリフティングを続けるのを見て、『プロ選手はさすがだなあ』とびっくりしたのをよく覚えています。

それから去年の開幕戦の福島ユナイテッド戦(〇1-0)に、駒野さんは中継の解説として今治里山スタジアム(現アシックス里山スタジアム)に来られていて、そのときもお会いすることができました。同じ出身地ということもあり、『プロを目指してがんばれ!』と言っていただいたのはうれしかったですね。

梅木選手は、同じ帝京高校の横山夢樹選手とともに去年1月のFC今治のキャンプに練習参加して、開幕後の3月22日に2024シーズンの加入内定が発表されました。その流れの中で、開幕戦の観戦に来ていたのですね?

そうです。小学生のころ、チームでジュビロ磐田の試合を見に行ったことがあるんですよ。そのとき駒野さんもジュビロに在籍していて、実際にスタジアムでプレーを見ることができました。まだ子どもだから、サッカー的な詳しい部分は理解できませんでしたが、両足のキックのうまさがとても印象的でしたね。『両足を使えるから、常に落ち着いてプレーできるんだな』と思いました。

中学までミラグロッソ海南でプレーしていた梅木選手は、高校から上京して名門・帝京高校でサッカーをすることになります。

中学時代、チームのスタッフに帝京高校と関わりのある方がいたこともあって、練習参加に誘っていただきました。一番上の兄が、帝京高校でサッカーをしていたということもあります。その姿を見ていたので、『自分も高校生になったら、親元を離れてさらにサッカーに打ち込むことになるんだろうな』という思いもあって。ある意味、和歌山では自分が通用するのは分かったので、まったく違う土地でプレーしたかったんです。

帝京に行ってみると、覚悟はしていましたが、みんなとてもうまくてびっくりしたし、『ここで自分は試合に出られるのかな?』と不安な気持ちにもなりました。だからこそ、練習からみんなのプレーをよく見て、学びながら取り組むことを心掛けました。

強豪校でチャンスをつかみ、試合に出るためには何がポイントだと考えていましたか?

入った当初はフォワードで、スピードは通用すると感じたので、そこを生かした裏抜けや、チャンスで決め切るところが大事だと思っていました。結局、フォワードとして試合に絡むことはありませんでしたが、1年の途中に右サイドバックになってからも、スピードは引き続き自分の武器だと感じながら取り組みました。

そして昨年1月、高校2年生のときに、横山選手とともにFC今治のキャンプに参加することになりました。

最初、サッカー部の日比威監督から『FC今治からキャンプに参加してほしいとオファーが来ている』と言われたときは驚きしました。正直、『今の自分には、まだ無理だ』と感じて、そのまま監督に伝えたんです。

監督に『何だ、ビビってるのか?』と言われて、そのときは『少しビビってます』と答えたのですが、考えてみるとプロの選手と一緒にサッカーをするチャンスはそうそうないし、チャレンジしたい気持ちがどんどん強くなってきて。それで、数時間たってもう一度、部室に行って、『FC今治の練習に参加させてください』とお願いしました」

夢樹の存在が大きな刺激に

去年のキャンプは特徴的で、J2の大分トリニータや韓国のKリーグのチームなど、6日間で4試合のトレーニングマッチが組まれる、いきなりの実戦モードとなりました。

高校も夏休みなどはたくさん試合をするので、そこにはあまり驚きはありませんでした。自分は3試合目の大邱FC戦で打撲してしまって、4試合目のソウルFC戦は出ませんでしたが、それ以外の3試合でプレーして、通用する部分もあると感じました。うまく攻撃参加できたり、予測してボールを取れたことが何度か会って。

もちろん、『全然まだ駄目だな』というところも見えました。特に対人、フィジカル面ですね。しっかり鍛えないといけないことがあらためて分かったし、それも含めてとてもプラスになりました。

キャンプ参加から2カ月後、FC今治の加入内定が決まりました。オファーを受けたとき、どのように感じましたか?

決断するまで、自分は夢樹よりも時間がかかりました。というのも、それまでは大学進学がずっと頭にあったので。体も作れていないし、このままプロになっても通用しないだろうと思っていたし、兄が帝京高校から大学サッカーに進んだというのもあります。

高校の日比監督からは、『兄貴の影響もあると思うけれど、チャレンジしたいなら、このタイミングでプロになっていいんじゃないか?』と背中を押していただきました。それからスカウトの小原(章吾)さん(現スポーツダイレクター)にはキャンプだけでなく、高校でのいろいろな試合のプレーを見ていただいていて、『十分、通用するものがあるから、ぜひ来てほしい。時間をかけて、しっかり考えていいから』と言っていただいて。最終的には、より高いレベルでサッカーをしたいという思いから、プロになることを決断しました。

ともに帝京高校からプロになった横山選手の方が、ベンチ入りも試合出場も早く、大いに刺激を受けたと思います。

去年、特別指定選手だったときに、すでに夢樹は試合のメンバーに入りましたからね(第8節Y.S.C.C.横浜)。ポジションは違いますが、いいライバルだと思っています。高校からずっと一緒にサッカーをしているし、身近な存在なだけに『自分もやってやろう』という気持ちになります。

梅木選手は今シーズンの第7節・FC大阪戦(△0-0)で途中出場し、プロデビューを果たしました。このときのファーストプレーが、裏に走りだす横山選手へのパスだったのが、とても印象的でした。

出場時間が短くて、自分の特徴である攻撃参加の部分をあまり出せませんでしたが、0-0の状況だったので、攻撃に行き過ぎてリスクを高めるのではなく、守備から入ることを意識しました。何より、初めてJリーグでプレーできたことは大きな喜びでした。

雄真くんが足をつって急きょ、出番が回ってきたので、気持ちの準備が間に合わなかったところも正直、あります。ピッチの雰囲気を感じる余裕はありませんでしたね。ただ、FC今治サポーターのみなさんの応援はずっと感じられて、それに後押しされながらのプレーでした。

自チームで活躍してこそ

そして第10節・ヴァンラーレ八戸戦(〇1-0)で、プロ初先発となりました。

初先発だからというわけではなく、自分はどんな試合でも緊張するタイプなんです。でもホイッスルが鳴ると、気持ちもほぐれていつも通りにプレーできる。八戸戦も、そうでした。

試合の前夜、眠れないということはありませんでしたが、そわそわしていたというか……。その分、ピッチに立ったらどうプレーをするか、頭の中を整理することもできました。まずは、FC今治の勝利のためにしっかりやらなければならない。そのためにも、どうすれば自分の特徴を出せるか。守備は、対人で負けない。攻撃では積極的にオーバーラップして、クロスを上げる。改めて意識して、八戸戦に臨みました。

U-18、U-19と、去年から継続的に招集されている年代別日本代表での活動も、梅木選手を語る上で欠かせません。6月1日の松本山雅戦FC戦(第15節○2-1)に先発出場した後にチームを離れて参加したモーリスレベロトーナメントでも、U-19日本代表として2試合に出場しました。

U-21イタリア代表戦(●3-4)、U-23ウクライナ代表戦(●1-2)で、試合展開で左サイドバックに回ることもありましたが、基本は右サイドバックでプレーしました。予想はしていたことですが、ヨーロッパの選手はフィジカルが強く、球際がパワフルでしたね。それでも瞬間的なスピードで突破できる手応えは得られました。特にウクライナはパリ・オリンピックに出場するチームだったので、そういう相手と実際にやれたことは大きいです。

高校時代、自分よりも先に夢樹がU-18日本代表候補に呼ばれたんです。身近で初めてアンダーの代表に呼ばれる選手を見ました。とても刺激になったし、自分も入りたいと強く思うようになりましたね。

実際、入ってみると、個々の選手の能力がとても高くて、自分はやっていけるのか不安でした。ですが、案外、通用する部分もあって。鍛えなければならない部分がはっきり見えてくることも、自分にとってプラスになっています。

ですが、一番は自チームであるFC今治で活躍することです。それがなければ、代表にも選ばれないと思いますし。FC今治で試合に出て勝利に貢献しているから、代表に呼ばれる。そういう形で、代表に入り続けたいです。

今、トレーニングではどういうところを求められていますか?

ハードワークすることです。プラス、相手を見ながらプレーすること。サイドハーフとの関係性を考えてプレーすることも言われます。特にサイドでの連係については、サイドハーフの選手と練習中から話し合って、しっかり関係性を高めることを意識しています。

これからFC今治で試合出場を重ねていくことが期待される梅木選手ですが、今シーズン、ここまでで最もインパクトのあった試合は?

大宮アルディージャ戦(第11節●1-4)です。周りに声を掛けながらプレーするのはあまり得意ではないのですが、自分が声を掛けていれば防げた失点もありました。攻撃では、ワンタッチで相手を剝がせる場面もあって、プロとしてプレーしていく上で、何を磨いたり鍛えていかなければならないか、明確になった試合です。

反撃しなければならない大宮戦の後半には、果敢に攻め上がってカットインし、左足での惜しいシュートもありました。

初めはパスを考えていましたが、コースがなかったんです。ただ、相手ディフェンダーとキーパーがかぶって見えて。ということは、シュートすればキーパーから見えづらいだろうと思って、シュートを選択しました。

シュートそのものが弱くて、ダメでしたね。左足で巻いても、利き足と同じくらい強いシュートを打てるように、もっと練習します。

FC今治で実現させたい夢を聞かせてください。

J2昇格とJ3優勝、それが今シーズンの夢です。そして、チームがJ1に昇格していく中で、中心となってチームを引っ張れる選手になりたい。それが、僕がFC今治で実現させたい夢です。

取材・構成/大中祐二