YutaSuzuki

弁護士(大阪弁護士会)/使用者側の労働法務を中心に取り扱っています。自転車、阪神、映画…

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弁護士(大阪弁護士会)/使用者側の労働法務を中心に取り扱っています。自転車、阪神、映画好きです。

最近の記事

契約社員への寒冷地手当の不支給 東京地判R5.7.20

「寒冷地手当」について、正社員には支給する一方、契約社員には支給しないとの措置について、不合理とはいえないと判断した例として、日本郵便(寒冷地手当)事件(東京地判R5.7.20)をご紹介します。 事案の概要 Xは、Y社と有期労働契約を締結している時給制契約社員である。 Y社においては、無期労働契約である正社員に対しては、勤務局所の地域区分によって寒冷地手当が支給されていたが、時給制契約社員に対しては支給されていなかった。 Xは、寒冷地手当が自らに支給されていないのは労働契

    • 副業労働者の長時間労働と安全配慮義務 大阪高判R4.10.14

      副業を行う労働者が合計で長時間労働となった事例で、使用者の安全配慮義務違反を認めた例として、大器キャリアキャスティングほか1社事件(大阪高判R4.10.14)をご紹介します。 事案の概要 Xは、24時間営業の給油所の運営業務を行うYと労働契約を締結し、給油所作業員として深夜早朝時間帯に就労していたが、同業務を営むAとも労働契約を締結し、深夜早朝以外の時間帯にも就労するようになった。なお、Aは、Yの上記業務の再委託元であり、Xの両業務は同一の店舗で行われていた。 その結果

      • 業務上の経費を賃金から控除することの可否 京都地判R5.1.26

        業務上の経費を賃金から控除することの可否について判断した、京都地判令和5年1月26日労判1282号19頁(住友生命保険(費用負担)事件)をご紹介します。 事案の概要 Xは、Y社において営業職員として勤務している労働者である。その業務は、生命保険の新契約募集、既契約者サービス活動、保険料の集金等である。 Xを含む営業職員は、毎月の賃金から、「携帯端末使用料」、「機関控除金」及び「会社斡旋物品代」との費目による費用(以下併せて「本件費用」という。)が控除されていた。 ①携

        • 退職後の競業避止義務を定めた合意の有効性 東京地判R4.5.13

          退職後の競業避止義務を定めた合意が公序良俗違反で無効と判断された例として、東京地判令和4年5月13日労判1278号20頁をご紹介します。 事案の概要 X社は、主にシステムエンジニアを企業に派遣・紹介する株式会社である。 Yは、X社と労働契約を締結し、A社を就業場所としてシステムエンジニアとして職務従事していたが、令和2年9月末日をもってX社を退職した。 Yは、X社退職後である同年10月9日、本件合意書に署名押印した。本件合意書には、次のような記載があった。 Yは、X

        契約社員への寒冷地手当の不支給 東京地判R5.7.20

          債務の本旨に従わない労務提供と賃金控除の可否 岡山地判R4.4.19

          債務の本旨に従うものとはいえない労務提供を行ったとして、当該労務提供時間分の賃金を控除した措置に対し、違法と判断した例として、岡山地判R4.4.19労判1275号61頁をご紹介します。 事案の概要 労働者Xは、鉄道運転士であった。 Xは、回送列車を電車区に移動させて留置する作業を行う際、乗継のため待機すべきホームの番線を間違え、指定時刻より2分遅れて同作業を開始し、1分遅れて同作業を開始、完了した。 Y社は、乗継が遅れた2分間は勤務を欠いたものとして、当該2分間のXの

          債務の本旨に従わない労務提供と賃金控除の可否 岡山地判R4.4.19

          就業規則の変更が「不利益」か否かの判断 

          就業規則を労働者との合意なく「不利益」に変更する場合、労働契約法10条に定める合理性の要件を満たす必要があります(労働契約法10条)。ここにいう「不利益」とはどういう場合かとの点は、実務上重要な問題となります。 1 前提:就業規則の効力労働契約も契約であり、その内容は当事者双方の合意により決められるのが原則です。 もっとも労働契約については、就業規則が、⑴一定の要件のもと、労働契約の内容を規律する効力(就業規則の労働契約規律効)を有するとともに、⑵事業場の労働条件の最低基準

          就業規則の変更が「不利益」か否かの判断 

          事業場外みなし労働時間制の適用が認められた例 東京地判令4.3.30

          MRに対し、社用携帯電話を持たせ、また勤怠システムが導入されていた事案において、事業場外みなし労働時間制(労基法38条の2第1項)の適用が認めた例として、東京地判令4.3.30労経速2490号3頁をご紹介します。 事案の概要 労働者Xは、医薬品の製造・販売を業とするY社において、MRとして就労していた。 Xの業務は、営業先を訪問して業務を行う外回りの業務で、基本的には営業先へ直行直帰であった。 Y社は、Xに対し、「Salesforce」というシステムに訪問先の施設や活動結

          事業場外みなし労働時間制の適用が認められた例 東京地判令4.3.30

          業務外負傷による休職期間満了後の退職扱いを有効とした例・日東電工事件

          今回は、業務外負傷による休職期間満了後の退職扱いを有効とした、日東電工事件・大阪高判令3.7.30労判1253号84頁をご紹介します。 事案の概要労働者Xは、Y社との間で職種限定のない無期雇用契約を締結していたが、業務外で交通事故に遭い、障害等級1級と認定された身体障害手帳の交付を受けた(下肢完全麻痺、上肢不全麻痺等)。 Xは、同事故の翌日から年次有給休暇、欠勤を経て、休職期間に入った。その後、XがY社に対し復職の意思を伝え、複数回にわたり復職に関する面談を行ったが、Y社は

          業務外負傷による休職期間満了後の退職扱いを有効とした例・日東電工事件