2018年2~4月に見た映画
洋画も邦画もごちゃまぜ。ネタバレありますのでご注意ください。
シェイプ・オブ・ウォーター
感想:コップからあふれでる愛の泉
TOHO日本橋で鑑賞。冒頭、心優しき隣人、ジャイルズの独白にあった「すべてを壊そうとした怪物」は本当は誰だったのか。孤独な世界を壊そうとしたイライザとジャイルズ、祖国ロシアと新天地アメリカで揺らいだ博士、認めないものに惹かれてしまうストリックランドでもありうるのかなと。美しく悲しい哲学的な映画。移民、非白人、障がい者、ゲイなど社会的弱者にフォーカスしており反トランプ体制が如実にあらわれている。それでいて魚人の美しさ、強さ、コミカルなロマンチシズムを散りばめたデルトロ監督の手腕はすごい。アカデミー受賞のスピーチ泣いちゃったよ。キャラクターが魅力的で思い返すと誰も憎めないんだよね。喉笛の傷とか伏線回収がロマンチックすぎる。どいらじの気づき・考察が面白いので、気になる人は聞いてください。
スリー・ビルボード
感想:いつかあなたの物語
TOHO日本橋で鑑賞。ウディハレルソンが文字通り物語の引き金をひく話。二転三転する脚本に気持ちよく振り回されました。主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)助演男優賞(サム・ロックウェル)の受賞は納得。いけすかない差別警官がABBAを聞いた瞬間に「あー…」と腑に落ちてしまった。かれはゼノフォビアでホモフォビアなんだ。そして自分がそうだとは決してみとめない。嫌みなほどのレッドネックっぷり、母親と同居する家の間取りも素晴らしい。リビングのソファから一歩も動かず生活できる(知識レベルの低さ)であったり、自立を妨げる親の存在であったり。サム・ロックウェル演じたディクソンの、母親に対して勃起不全というか(言い方難しい)相対する人に父親像を求めてる感じがした。ミルドレットにすらね。その昔、アメリカで差別全開白人主義タウンに住んだことがあるので、サム・ロックウェルのキャラがひとごとじゃなく怖かった。正義が間引きされたり、ループする感じはコリン・ファース主演の「デビルズ・ノット」を彷彿とさせる。あれは確かアーカンソー州が舞台、ディープサウス寄り。あああ…(ノД`)
不条理にボッコボコにされるケイレブ・ランドリー・ジョーンズくんは一服の清涼剤でした(血まみれだけど)かれをみてると昔のヒース・レジャーを思い出す。ちょっと間抜けなお兄さんから狂人まで飼ってそうな雰囲気が大好きです。
BGMのように挿入されるミルドレッド家の家庭内暴力は形を変えたデジャヴだった。私が恋人や友人と喧嘩をしたくない、議論をしたいといった姿勢はあれを知ってるからなんだよ。この作品は様々な視点から語られる「藪の中」みたいな話でもある。ミルドレッド、その息子、DVの元夫、ウィロビー署長、警察官ディクソン、ディクソンの母、広告屋レッド、看板屋。ウィロビー署長のやり方が功を奏したっていうのと裏腹に、「てめぇふざけんなよ」っていう思いが煮凝りみたいになって消えなかった。
ブラック・パンサー
感想:キルモンガー…ウッウッ
TOHO日本橋で鑑賞。noteやtwitterでもべた褒めされてるので飛ばします。ブラックのカルチャーと音楽、ケンドリックラマーの使い方最高でしょ。ワカンダフォーエバー!!
去年の冬、きみと別れ
感想:m-floの主題歌以外は完璧◎
こちらのインタビューは必見です。
岩田剛典×土村芳『去年の冬、きみと別れ』インタビュー 違和感を抱かせる“一人で三役”の芝居と“すべてを委ねられる”愛のかたち
TOHO日本橋で鑑賞。観終わって「めっちゃ恋愛したいなー!」と素直に思いました。はい。笑
韓国映画っぽいつくりなんですよ。しょっぱなから「第三章」って何?なんだこれ??っておいてかれる。中村文則の原作小説、うまーく改変しててなおかつロマンチックさもあり。北村一輝がアイライナーひいてるのかってくらいバチバチまつげで、こんなのあんたか山田裕貴くらいですよ…まって来年50歳なの…嘘だろ…あの色気…
主人公の岩田剛典、HiGH&LOWコブラちゃんだと無表情ヤンキーだけどこちらは百面相みせてくれます。北島マヤかおまえは。低い声もよかった。眼鏡もよかった。ハイローより身体もほわっとしてて壁ドンしたら勝てそうな感じ、原作の耶雲によく似てました。そして主人公の彼女役に土村芳。出番少ないけど私の心を盗んでいきました(# ゜Д ゜)ほんと可愛い可愛い可愛い可愛い
彼女がピンで映るOPと後半がつらくてつらくて。手紙を書いているところ、回想シーンでベンチにすわってデートしているところ、2回目は涙で前がみえない(おおげさ)初見で、海辺のキスシーンで耶雲首かしげすぎじゃね?って思ったけど彼女が目が見えないから、耶雲のひとつひとつの動作が大きくて、柔らかいってきづいたらさらに泣けました。
彼女がその名をしらない鳥たち
感想:奪って与えてさようなら
新宿バルトナインのオールナイト。年明けすぐにみた邦画がこれ。パンチすごかった。DVD出たら見直して、ちゃんと感想書きたいんですよ。
ポスターの構図、赤ちゃんみたいな蒼井優と、お母さんみたいな阿部サダヲ。ピエタかよ。狙ったとしか思えない。原作も後追いで読みましたが、映画版のほうが重すぎる(゜ω゜)
元彼氏、今彼氏、浮気相手。出てくる男性陣3名とも見覚えあるキャラだからよけい他人事じゃないというか…あと「永い言い訳」でも感じたけど、私は家庭恐怖症だなと。主人公2人の住む、大阪のマンション。あの生活感のある情景がたまらなく嫌で絶対踏み込みたくない。
上手く言えないけど、誰かと妥協して暮らしているのが明らかな環境に身を置けない、と改めて思い知らされた。途中から感情切り出して鑑賞してたから楽しめたけど、没入したら嫌悪感しか生まれない作品だった。いやー凄い…独特なフィルム感も超好き。
誰にも共感できない、同情できない、でも引き込まれる、頭のどこかで知ってる感情を否定できない、消えるくらいなら消したい。ぐるぐる洗濯機に放り込まれた2時間ちょい。蒼井優、動物的な雰囲気に磨きがかかってる。今彼氏である陣治が放つラストの愛の言葉、えっ理解できない気持ち悪いって意見多いだろうけど、男女逆転したらどうなんだろうね。
愛とか恋の話じゃなく、欲の話だと思う。相手をどうにかしたい、それが全員空回りしてくんずほぐれつメガンテ、みたいな。救いがない。
極上のクズサンドイッチ映画なのでもっと多くのひとにみてほしい。そんでおなか壊してほしい。松坂桃李は、本作で最強にエロでゲスいベッドシーンみせてくれたから4月公開の「娼年」も期待してます。蒼井優との絡みで、セックスするときの仕草、舌、目線、手のやりどころ。とくに舌の表情。勉強になります(笑)この手の男に引っかかったら傷の治りが遅いと思われる。
ニワトリ★スター
感想:LiLiCo様、瞬間最大風速案件
ふらっとはいった渋谷ヒューマントラストで鑑賞。井浦新がでてる~と気軽にみたらさ、いやーよかった。…ハイローの左京、阿部亮平さんもいいヤクザでした。ポップでシュールなナンセンスをあなたに。冒頭のアングラ感で「あ、好きだわ」ってなった。とりあえずビールとタバコがほしくなる。Smoking' on the moon が英語タイトルらしい。センスよいね!久々に面白い不条理邦画でした。井浦新のうっさんくさい関西弁もくせになるし。後半、過去のひとを思い出して泣けた。成田凌可愛いよ成田凌うちにおいで。この日はヤクザ役の村上新悟さんとプロデューサーのオシアウコさんのトークつきでした。てか村上新悟、初ヤクザだって?似合いすぎでしょ。女性陣のLiLiCoと紗羅マリーもよかった…正体不明のお色気家主と、クスリで身をほろぼすシングルマザー。ハマってました。
BPM ビート・パー・ミニッツ
感想:指先が冷たくなっていった(私の)
渋谷ユーロスペースで鑑賞。映画仲間がこぞって評価してるから、時間つぶしに1本。結論:気軽にみるもんじゃなかった。ダメージでかすぎて瀕死のまま1日過ごしました。途中友人にひろってもらいお茶して少し回復した。ありがとう。
去年の「夜明けの祈り」に匹敵する傑作。「夜明けの祈り」は第2次世界対戦のポーランドが舞台でソ連軍の暴行によって妊娠した修道女たちの物語。「BPM」はエイズとACT UPという活動団体がテーマですが、生死が紙一重で描かれており当時の道理、偏見、政治、倫理観に立ち向かうってとこが共通していた。どちらも身近なテーマなので胃がごっそり削られた。BPMの舞台は90年代パリ。ミーティング、通称"M"のディベートシーンは必見。フランスは若手の政治への関心が特に高いと言われるけどそれが如実にあらわれている。あと、参加者がのきなみ若い(20代~30代)で占められているってのも意外だった。年長者になるとエイズまたはゲイであるってカムアウトできなかったかもね。
物語上、死は免れないんだけど、おためごかしなく描いているとこは素晴らしい。カポジ肉腫とか。秋里和國のマンガ「TOMOI」を思い出したり。主人公たちが病室でなぐさめあうシーンは悲しくて笑えて情けなくて愛おしくてリアリティ満載で刺さった。男性同士のカップルだけど、セックスシーンは肌感覚で「わかる」がいっぱい詰まってて、これストレートのひとがみたら苦手意識というか…直視できないとか、はてなマークが湧きでるのでは…と余計な心配してしまった。沈黙は死、知識は武器。エンドロールの無音こそが、それを物語ってるのでしょう。
以上です。