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恋愛は nice to have

2001年公開当時「ブリジットジョーンズの日記」をみて爆笑した両親が、10年後の30歳のあなたが目に浮かぶようですと余計なお世話なメールをくれた。

母さん、安心してください。友人のお古のペンギンパジャマ着てワインのボトルを抱えながら「all by myself」歌いあげたのは25歳のときでした。

後半ビートにあわせて荒れていくレニーがたまらなくキュート

母さん、あの指輪はどうしたでしょうね。帰国前の夏、シカゴのミレニアムパークからホテルへ行くみちで、かれに渡したあの指輪ですよ 。 母さん、あれは好きな指輪でしたよ。単身渡米した私に、高校の同級生たちがお揃いでつくってくれたもので、「サニー」みたいなグループの名前が彫られていた。(グループ名は忘れました)僕はあのとき、ずいぶんくやしかった。だけど、かれに思い出と称して持ち逃げされたもんだから。 (C)西条八十

我こそは恋愛の達人、なんてひとがいたらご教授願いたい。なぜ恋をしなければならないのか。セックスしたら付き合わなきゃいけないのか。伴侶がいないといっぱしに扱われないのか。恋愛は人生の必須項目じゃなくて「あったらいいな」nice to have じゃないのか。


スパイク・ジョーンズ「her/世界でひとつの彼女」をみて、そんなことを考えた。親の規律の厳しい彼女とつきあい、結婚し、すれ違いの果てに離婚。その後OSのサマンサに恋する男、セオドア。いつかサマンサも彼のもとを去って、友人と寄り添い悲しみをぬぐう。いっときでもサマンサと愛を育むことのできたセオドアは、何故元妻とうまくいかなかったのかに気づく。元妻がどんなに彼をなじろうとも(形のないOSと付き合うなんて不健全だの)彼は不幸せじゃない。レター代筆業で様々なひとの心に寄り添い、成る丈優しく生きていきたいとするセオドアの幸せを願う友人たち。OSとして進化し続けるサマンサは何百人と関係を持っていたけれど、たぶんセオドアへの愛情は本物だった。誰かと1:1でつながるのは砂漠のダイヤ並みに奇跡で、永続的なものじゃないなと改めて思う。「特別な誰か」にそれを望むのは、ベッドにしばりつけるのとなんら変わりない。お互いがいつも自由であるように、そう考えた時に昔ながらの恋愛という概念は崩れるんじゃないのかな。

「心は四角い箱じゃない。愛すれば愛するほどふくらむの」
The heart's not like a box that gets filled up,
 it expands in size the more you love.

OSサマンサの言葉にはっとする



1:Nの関係性 - 自分の愛情をひとりにそそぐのは、相手のグラスが溢れて壊れてしまうんじゃないか、という恐れからこういう考えになっている。不義理をしたいわけじゃなく、頼れる人間は多いほどいいと思うから。自分の次に大事にしたいひとに出会えたら、それは友人でも恋人でもいいわけで。恋愛とか結婚を人生の必須項目にする時代は終わりつつある。これからは、繋がりたいもの同士が繋がりたい塩梅で生きていけるといい。


「her」主人公のホアキン・フェニックスがめちゃくちゃいいんです。ピンクとイエローを基調とした柔らかな色合いで着こなすファッションが愛おしい。「インターステラー」「ダンケルク」を担当した撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマのすばらしさがにじみ出ている。細くなる前のクリス・プラットと、ちまっとしたエイミー・アダムスが友人で、元妻がルーニー・マーラという贅沢さ。OSサマンサの声はスカヨハですよ。セクシーボイスここに極まれり!


ひととの付き合いに疲れたら、この映画を見ます。エンディングのビルの屋上が一番好き。鈍色と茜色の間の空が広がって、優しく私を包んでくれる。

以上です。

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