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ピーナッツバターファルコン

機内鑑賞、英語字幕。重めのドラマかな~と身構えていたら全然違った。相変わらずのJust Do It!! シャイア・ラブーフでしたが共演者に助けられ鈍色に輝いていた。いちファンとしては素直に嬉しい。ネタバレ注意。

あらすじ:ツキに見放された漁師と施設から脱走したダウン症の青年、施設の看護師の3人による青年の夢をかなえるための冒険の旅を描いたヒューマンドラマ。養護施設で暮らすダウン症のザックは、子どもの頃からの夢だったプロレスラーの養成学校に入るため施設を脱走する。映画.comより


2019年に開催された【サウス・バイ・サウスウエスト SXSW】映画祭にて高く評価された本作。

SXSWではアンドリュー・ヘイ監督の「ウィークエンド」や「ミッション8ミニッツ」「ハーツ・ビート・ラウド」「ビック・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」「ハードコア」古くは「ショート・ターム」など良質な作品が多数評価されているので、ピーナッツバターのピックアップも納得。日本からはゾンビ映画の「アイアムヒーロー」も出展され、観客賞とっていたらしい。


舞台はド田舎のジョージア州。頼れる家族もなく、成人してからも養護施設で暮らすダウン症のザック(ザック・ゴッツァーゲン)。彼の夢は憧れのプロレスラーの養成学校に入ること。同室のおじいちゃんや世話係の看護師(ダコタ・ジョンソン)に呆れられながらも、夢をかなえるために約束の場所を目指す旅にでる。って書くとカッコいいけど、ようは脱走します。鉄格子ひん曲げて。さすがレスラー志望は違う。施設のマネージャーは看護師ダコタに責任おっかぶせて「はやくあの問題児をみつけろ!」の一点張り。西へ東へ奔走しているさなか、ダコタはザックとタイラーをみつけます。


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やぼったい服装でも輝いてしまうフィフティシェイズオブダコタ


もうひとりの主人公、やさぐれ漁師のタイラー(シャイア・ラブーフ)トラブル続きで地元の漁師仲間にケンカうって追い出されて着の身着のまま漂流生活(文字通りの)しかも盗んだボートで行くあてのないザック拾っちゃうもんだから、凸凹ペアの珍道中が始まる。とりあえずザック憧れのプロレスラー、ソルトウォーター・レッドネック(なんつう名前だ)の経営する学校まで行ってみるがおいちゃんは引退済み。おいちゃんの情けでトレーニングをつけてもらい、なんとか体裁ととのえて地元の観客試合へ。ピーナッツバターファルコンのおでましだ!そう、これリングネームなんです。なんて可愛いのザック…


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「ダウン症なんだからちょっと多めにみてよ」というザックに対し
「知ったこっちゃねぇよ」とシャイア。なんだかんだで息があってる


今回はゲストで素敵なジョン・バーンサルが回想で出てきます。台詞を聞き流してたのか、「亡き」兄貴だと気づいたときの衝撃。兄貴・バーンサル、故人・バーンサルって斬新…。ちなみに私の推しバーンサルは「ぼくとアールと彼女のさよなら」の先生・バーンサルです。

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「友達は選べる家族」

シュワルツとニルソン監督にダウン症の青年が「僕はダウン症だけど映画スターになりたい、そんなことは不可能だというなら、あなたたちが映画をとって」と声をあげたことがピーナッツバターファルコン制作のきっかけ。詳しくは以下記事にあります。

主人公のザック・ゴッツァーゲンは本作が映画デビュー。堂々とした演技、ひまわりのような笑顔、砂浜で兄弟のようにシャイアとはしゃぎまわる無邪気さが素晴らしく、もっと彼の活躍をみていたかった。現場クルーや監督たちとも楽しく過ごしていたようで、画面からほんわか度が伝わってくる。

シャイアは撮影中だかに逮捕劇おこして、本作はあわやお蔵入りになりかけたらしい。なにやってんだか!コンスタンティン、インディジョーンズ、イーグル・アイ、欲望のバージニア、トランスフォーマー、フューリーと彼の出演作は結構見ている。直近だとニンフォマニアックがよかった。半クズが似合う役者だな~と思ってたらどうやらあてがきのようでした。きちんとリハビリして、戻ってくるのを楽しみにしてます。

ダコタ・ジョンソンはずっとチャーミング。仕事放り出して珍道中に加わっちゃうあたりが好き。手作りヨットの上で波に揺られる3人のシルエットが印象的。ダコタはどこまでも、ザ・女の子!という感じなので次の作品あたりで大化けしてほしいな、というのが個人的な思い。

「友達は選べる家族」というセリフがなんかね、色々考えちゃって。ザックのように身内がいない、赤の他人とつながってセキュリティブランケットをつくるライフスタイルは今後増えていくだろうし、それが選択のひとつであってほしい。血筋や固定概念にとらわれる必要はないし、手を差し伸べる/差し伸べられる側にもなる。それが「ソサエティ」だと信じている。限られた種族や声の大きいものだけが生きていける社会は、インクルーシブからはほど遠い。

「社会」を意味するsocietyという英語の語源を考えてみよう。これは、ラテン語で「親交、友愛、絆」を意味するsocietas(ソキエタース)からできた言葉で、さらに遡れば「仲間」、「友」を表すsocius(ソキウス)という語に由来する。また、このsociusという言葉自体「分かち合っている、結びつけられた」という意味をもつ形容詞でもある。ラテン語のsociusを語源とする英単語としては、他にassociation(協会)がある 。意外なところではsoccer(サッカー )もsociusと関連している。元はassociation footballと呼んでいたのを、短縮してsoccerと称するようになった、というのがその種明かしである   引用はこちら 山下太郎のラテン語入門

サムソン高橋さんのエッセイに「成熟した社会はブスにやさしい」と描かれていて、まさにこのことだなって痛感した。優しさは昨日に忘れがち。そんなとき、ブルーハーツを思い出そう。

以上です。


参考記事・感想


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