チョコレートドーナツ1

オールタイムベスト映画 その1

映画凡人が集いしラジオ どいらじ で特集していたので久々にオールタイムベストを書き出してみた。放っておくとスターウォーズや指輪物語、ゴッドファーザーでトップ10占有されちゃうため、洋画単品のみと縛り選定しました。全部書くと長くなっちゃうので、まずはLGBTQテーマの4本から。




ブロークバック・マウンテン

2005年公開。ヒース・レジャーが好きでした。はじめてみたのは独立戦争を描いた「パトリオット」メル・ギブソンの息子役。「恋のから騒ぎ」「チョコレート」「ロック・ユー」「アイムノットゼア」「ダークナイト」あたりは見ている。彼の嘆き苦しむ演技が好きだなぁなんて思ってたら、28歳の若さで逝ってしまった。気づけばあなたより年上になっちゃったよ。古き良きアメリカ、同性愛者を認めない保守的な片田舎で恋に落ちるカウボーイたち。ジェイク・ギレンホールとの出会いから20年間の淡い恋愛が歯がゆくて、いとおしくて、せつない。1年に1回、放牧の時期しか逢引きできないふたり。最初の別れで、車を見送ったあと壁にうずくまって泣きじゃくるヒースがみてらんないです。アン・リー作品の中でも1番好きだ。歳をとってうまく喧嘩ができないふたりの回想で差し込まれる、このハグ場面が悲しく美しい。


キャロル

2015年公開。あれから10年、ブロークバック~に相当するL映画が出てきた!100点満点です。出会いから別れ、セックス描写まで文句の付け所なし。監督トッド・ヘインズはゲイなのにどうしてこうも上手いのか。恋に足もと救われたとき、世界がぼやけて相手の輪郭だけ浮き上がるっていう表現は言葉にできないくらい美しい。あの時代のアメリカにタイムスリップしたい…原書は後追いで読んだけれど、映画版のキャスティング、恋愛の昇華、色味、漂ってくる色香まで素晴らしい。キャロル単体の感想はこちら



モンスター

2003年公開。ワンダーウーマンで世界をかっさらったパティ・ジェンキンス監督の長編デビュー。シャーリーズ・セロンが演じるた元娼婦の連続殺人犯、アイリーン・ウォーノスの物語。ジャーニーの「Don't Stop Believin'」の使い方が史上最高の上手さ。涙腺崩壊。10キロ以上増量してブサメイク体当たりで挑んだセロンはもちろんアカデミー主演女優賞をゲット。小生意気なクリスティーナ・リッチとの演技も素晴らしかった。ちょいちょい出てくる米国の古いレズビアン描写がリアルで、太目のボーイッシュとかクリスティーナのイキがってる話し方とか、つるみかたとか説得力あって、ジェンキンス監督もこっちのひとだと思ってた…旦那いるのかー!(笑)

真面目な話、社会のつくりをダイレクトに反映している作品なので見るたびに胃が痛む。1989~90年に7人の男性を殺害したアイリーン・ウォーノスは2002年に死刑になった。14歳で出産、貧困と暴力に耐えながら成長し、ようやっと大切にしたい人と出会い、定職につこうと思っても履歴書に書けるのは「娼婦」だけ。奪われるくらいなら、奪う側にまわってやるという暴発しそうなエネルギーはダイレクトに破壊・略奪という行為に繋がっていく。誰が彼女=モンスターを生み出したのか?日本でも貧困女子なんて本が出版されるくらいだから、他人事なんかじゃないのです。アイリーンを愛する男性がいたら、悲劇はおきなかったのか。愛する女性がともに社会的地位を築ける相手だったら、人生は好転していたのか。結論は、いつも出ない。



チョコレートドーナツ

2012年公開。実話ベースってだけで十分重い。1979年のカルフォルニア。ショーダンサーのルディと、クローゼットなゲイの弁護士ポールが、ダウン症の少年マルコと出会う話。ドラッグ中毒の母親はマルコをおざなりにして、施設をたらい回しにされるんだけど、ルディとポールはありったけの愛情でマルコを育てようとする。3人の写真を飾ったり、マルコのお部屋をつくったり。「僕はここに居ていいんだ」と生まれてはじめて感じたときのマルコの笑顔は100万本の薔薇の花のようです(古い)

ボブ・ディランの名曲「I Shall Be Released」をアラン・カミングが熱唱するなかで"Any Day Now"という単語が出てくる。映画の原題でもあるフレーズ。彼はバイセクシャルを公言していて(いまは男性とのお付き合いがメインかな)結構LGBTQテーマの映画にもでてますが、私はこれが一等好きです。女装しててもしてなくても、キュートで愛にあふれたアランが見られるから。最後の締め括り方もうまくて、ルディ&ポール&マルコの世界から一挙に第3者視点にブン投げられる。「あなたならどうする」「あなたならどうした」ーマルコを引き取りたいと裁判官に訴えたポールのセリフがすべてを物語ってました。

背が低く、太っていて、頭にハンデキャップがある子供なんか養子にしたがらない。でも世界中で私たちは誰よりもマルコが欲しいんです。彼を教育し、面倒を見て、安全を守り、いい人間となるように育てる、これこそ彼に与えるにふさわしい環境じゃないですか。これこそが全ても子供に与えるにふさわしいことではないのですか?


ずらずらと書きましたが、日本では同性婚が認められないし、パートナーシップ制度もない、そんな状況でもLGBTQがテーマの映画や芸術作品が広まって、人々の意識下に入り込んでいくのはいいことかなと思います。実際私がつきあってる仲間はこの手の描写に嫌悪感は示さないし、わかりやすい差別もしない。オールタイムベストに4本もはいるとは思ってなかったけれど、自分を振り返るよい機会になりました(´∀`*)ウフフ つづきはまた今度~



参考リンク集

映画「キャロル」を最高に美しくした男 WIRED.

トッド・ヘインズ インタビュー OUTSIDE IN TOKYO

LGBT描く秀作 普遍的な愛、共感呼ぶ - 日本経済新聞

映画「モンスター」感想

アラン・カミングと監督が語る「チョコレート・ドーナツ」

映画『チョコレートドーナツ』 “自由で安心していられる居場所”を守ろうとする想いが、愛に変わる

「ーチョコレート・ドーナツーダウン症のこどもたちにはアビリティがある」ハフポスト


以上です!

いただいたサポート費用はnoteのお供のコーヒー、noteコンテンツのネタ、映画に投資します!こんなこと書いてほしい、なリクエストもお待ちしております。