行き場のない「怒り」
TOHO日本橋で鑑賞。原作は未読。これから読む。その前の覚書き。
※ネタバレしてます。
映画版山神一也の部屋みたいな感想なんで好きな人は読まないほうがいい。
ひとを信じるのも、疑うのも、めちゃくちゃパワーがいるじゃないですか。できるだけ省エネで生きている私は「責められている」感しかなかったよ。
ひと言で言うと、「胸糞悪い」話でした。私には。
心地よい、つきぬけた、感動した、泣いた、切ない、信頼と愛情の物語、という感想も見受けられるけど、全部なかった。
(誤解なきように追記。映画自体はすごいです、演出も俳優も。辰哉役のスーパールーキー、佐久本宝に脱帽)
ひとの葬式で泣けない。それに近い。
あと、この映画を見せちゃいけないひとがいるんじゃないか、とも。
胃に手をつっこまれて、隠してる暴力性をひきずりだされるような。
「ああ、自分が他人を信じられない分、跳ね返ってくる作品なんだな」
鑑賞後にやりどころのない思いに身をまかせるのがいやで、吐き出さずにはいられなかった。だから書いてます。
平平凡凡に他人と距離をとりながら、へらへら生きている限り、お前には、怖いもんも、守るものもないんだろう、と言われた気がした。
吉田修一「悪人」で、ぐさっときた台詞を思い出す。
「そうやってずっと、人のこと、笑って生きていけばよか」
運命を狂わされる辰哉と泉、優馬と母、愛子と父・洋平。3人の男たち。
だれもが信じきれずにもがき苦しんでる。
唯一、愛子と田代ペアだけ救われそうにみえるけれど、お父ちゃんの背中に苦悩しかみえないのは、何故?
最後の電車で千葉に戻るふたりに、幸せが待っていない気がするのは、何故?
元来ペシミストではないんですが、うがった見方でしょうか・・・。
◆怒りを吐き出せる強さと、隠し続ける弱さ
映画「怒り」レビュー byミヤザキタケル
↑こちらの率直な意見。めちゃくちゃ賛同。
”相手にもよるが、観終えた直後に陽気に感想など話し合いたくもない”
誰であれ、他人に知られたくないことの一つや二つ 胸に抱えながら生きていると思う。人に知られでもしたら、恥ずかしくて 情けなくて 死んでしまいたくなるようなことだってあると思う。偉そうに言えたことではないが、ぼくにはある。~中略~ 一度抱えてしまったその想い、負の感情。誰にもバレることなく、一生ソイツを胸に抱えたまま心中できること、その想いを打ち明けられる場に相手に巡り会えること、どちらが幸せなのか
誰にも言えない思いを抱えたまま、私は心中したい。
言ってどうにもなるわけでもなし、軽蔑されるのも、憐れまれるのも嫌だ。
相手がいても、打ち明けるには相当、時間がかかると思っている。
「おまえは俺の何を知って、信じてたわけ?」
ラスト、田中が辰哉にいう台詞。知らないから信じる。それだけだと思う。
何も知らないまま、受け入れてほしいし、愛してほしい。
知って去られることも、どうか織り込み済みで。
◆個人的にツボだった場面
ホスピスの優馬母、愛子父の姿が、死んだ祖父母を思い出して涙
よっぱらう辰哉と世話やく泉、泉の母親像が垣間見えるとこ
ハッテン場、24会館か渋谷がモデルかな?
病院でゲイアプリいじる優馬…(あー)
愛子がからあげつまむ仕草。田代にも最初からボーダーがない
山神を語る早川。あれだけで、山神という存在が伝染病だってわかる
◆吉田修一作品
読んだことがあるのは10冊にも満たない。好きだったのは「最後の息子」「パーク・ライフ」「女たちは二度遊ぶ」「日曜日たち」「春、バーニーズで」あたり。「悪人」は小説も映画も後味悪かった。で、「怒り」はいまから読みます。感想、少しは変わるかもね。
◆09/26追記。小説読んだ。
やっぱりねー映画オフ会でも語れなかった…感想、不遜なことしか言えないもの。泉ちゃんが抑えつけられたとき、足首つっぱって逆に逃げにくくなっている描写とか(もがくほど絡めとられる抑え方超絶リアル)、こいつのどこに赦しがあるんだろう?と思ってしまう腹立つ優馬のエンディングとか、小説だとさくっと民宿で刺されて「なぜかわからんうちに」死ぬ田中なのに、田中vs辰哉の葛藤を引き出すために改変しているエンディングとか、(゚Д゚)ゴルァ!! ってなる。ただ、星島で「俺の何を知って信じてたわけ?」と田中に言わせたのはよかった。映画オリジナルだけど、この話のキモだと思う。信じられることへのコンプレックスでもあるんだ。多分。信じられた分、人を傷付けたいとかいう気持ち、すこしわかる。正直「怒り」を見た後4~5日はダメダメでした。タバコに頼ったし、小説を数回読み直し、友人との飲み会もキャンセル。心底凹んで、嫌なことばかり思い出した。ほんとに私のシルバーウィークを返せ(笑)小説読むとキャラクターの空白が埋まるのでおススメ。李監督、吉田修一さん、これだけ人にダメージ与えるのだから、物凄い作品です。そこは拍手。
以上です。
出典 映画「怒り」
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