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連載:人とお寺のあたらしいディスタンス Vol.1「打ち上げ花火のあとに」- 横山瑞法さん(山梨県・法源寺)

はじめに

 こんにちは。未来の住職塾では担任という立場で塾生の学びをサポートしている遠藤卓也と申します。
 2019年9月に未来の住職塾 塾長 松本紹圭さんとの共著で『地域とともに未来をひらく お寺という場のつくりかた(学芸出版社)』という本を上梓しました。私は本の第2部「お寺という場をつくる人々」を担当。全国各地のお寺で「場づくり」を行う人たちを取材して「お寺の場づくり」事例集としてまとめました。
 一口に「お寺の場づくり」といっても様々なケースがありますが、主には居場所活動や地域のお祭りなど、お寺の施設や境内を活かした活動です。本が出てから半年ほどが経過した頃、新型コロナウイルスの感染拡大がすすみ自粛生活に突入すると、私が取材したお寺の場づくり活動も、ひとつ、またひとつと中止・延期を余儀なくされていきました。そんな様子をSNSで眺めながらとてもさみしい気持ちになるとともに、自分が精魂込めて執筆した愛着のある本も、なんだか別の世界のことを書いた本のように思えてきて悲しくもなりました。

 しかしまた時が経ち、各地のお寺では様々な工夫を凝らして「ポスト・コロナのお寺の場づくり」ともいえる活動が再開しています。私達の生活そのものを見直すことになったこの機会をどう捉え、どのように変化していくのか?地域社会から必要とされ、今後も持続可能なお寺の姿を模索している宗教者の方々に、今こそお話しを聞いてみたいと思いました。

共著書『お寺という場のつくりかた』の帯に引用させていただいたこの言葉とともに、新たなる連載「人とお寺のあたらしいディスタンス」を始めます。

全国にたくさんあるお寺が、それぞれの抱える課題に対して何かひとつ取り組むことができれば、それは社会を支える大きな力になるだろう」窪田充栄さん(東京都・勝林寺) 

Vol.1「打ち上げ花火のあとに」- 横山瑞法さん(山梨県・法源寺)

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プロフィール:横山瑞法さん
1981年生。山梨県南アルプス市にある日蓮宗法源寺・林應寺住職。お寺での朝掃除の会「テンプルモーニング」を全国に広めるために活動中。山梨県の超宗派僧侶のグループ坊主道に所属し、多職種の人たちや学生と共に活動する一般社団法人SOCIAL TEMPE理事を務める。

遠藤 法源寺さんでは2年くらい前から「Temple Morning」(お寺の朝のお掃除会)の活動をされています。だいぶ参加者も増えてきていたと推測しますが、コロナの影響はいかがでしたか?

横山 やはり3ヶ月間は中断して、その間はオンラインで「Temple Morning」をやっていました。しかしオンラインで参加できるのは主に若い人たちなので、参加してくれる方の層が違うんですね。オンラインによって離れた場所の方々と交流できるのは楽しかったのですが、お寺に来られていた方の習慣が中断してしまったことが残念でした。

遠藤 今は再開しましたか?

横山 はい。6月に再開してディスタンスに配慮しながら、月2回ほど実施しています。以前と同じように告知はしていて、ぽつぽつと戻ってきてくださっていますが、まだの方もいらっしゃいます。特に連絡先も交換していなかったので、直接お知らせすることもできません。待つしかないですね。

遠藤 実施内容は変えましたか?

横山 特に変えていません。お経は20分くらい、いつも決まったものを読んでいますし、掃除20分とお話20分で、1時間くらいのメニューです。

遠藤 続けてきた中で何か変化はありましたか?

横山 檀家さんや近所の方々がきてくださっていますが、あまり目に見えるような変化はありません。地域での認知度は徐々にあがってきていると感じますね。とにかく続けるって大事だなと思います。今後も世の中の状況変化を見ながら続けていきたいです。

遠藤 ご自身の変化はどうですか?コロナ以降お忙しいですか?

横山 コロナ前のことですが、兼業していた社会福祉士としての勤めをやめ、2つのお寺の住職として専念することになりました。

遠藤 社会福祉士は以前から辞めるつもりだったのですか?

横山 いえ、定年まで勤めるつもりでいました。父が体調を崩したことなど、気持ちが変わった要因は色々あるのですが、2017年に未来の住職塾に通ったことが、自分の動き方を変える起点になったと思います。塾で学んだことも活かしながら、自分の裁量でお寺を運営できることが楽しくなったのでしょうね(笑)
 しかし兼業だと体力的にも精神的にも負担が大きく、休みもほとんど取れないですし家族のことも十分にできません。お寺のこれからのことを考えてやっていくなら、今ここでしっかり舵をきってお寺に専念しないと、社会福祉士の仕事との両立ができずに駄目にしてしまいそうだと思いました。
 それで辞めました。

遠藤 大きな決断でしたね。

横山 本当に、未来の住職塾に行かなかったら考えなかったと思います。塾で「お寺の財務」を学んだので、エクセルにお寺の固定費や布施収入を入力して、科目分けも計算して「専業でもなんとかやっていけるかも」とわかったことも後押しのひとつでしたね。数字は苦手で避けてきたことでしたが「やらざるを得ない」という危機感もあり。

遠藤 専業住職になってみて、見える景色は変わりましたか?

横山 仕事を辞めて地元にいる時間が長くなって思ったことは、周りに地域づくりや社会課題について考えている人って少ないなあということです。例えば地元の消防団の仲間で話していても、そういう話しはなかなか出てきません。ちょっとかっこつけた発言になっちゃうかもしれませんが、そういう場所で自分が旗をあげたいという思いがあります。そうすることで、地域の中から同じ思いの人を探し出すことができるのではないかと思いました。

遠藤 いいですね!未来の住職塾で学んだリーダーシップを遺憾なく発揮してください!

横山 自分は世代的にはまだまだ若手ですが「住職」なので、地域の年配の方でも話に耳を傾けてくださるんですね。だから若い世代のアイデアを提案したり、地域活動においても「住職」という肩書が役にたつなと(笑)

遠藤 本当にそう思います。住職は地域コミュニティのリーダーとしての役割が最適なんですよね。もちろん昔からそのような立場を担ってきたお坊さんがたくさん居たと思いますが、これからはもっとその役割に対して自覚的に「ローカル・コミュニティ・ファシリテーター」のような存在であってほしいなと願っています。
 横山さんの地域にはどんな課題がありますか?

横山 元々畑だった場所が徐々に住宅に変わり、移り住んでくる方がいます。旧来の宅地エリアと離れてしまっているので、なかなか交流が生まれにくいと感じています。昔から住む人達と、引っ越してきた新しい人達が交流できるような中間コミュニティをつくっていきたいですね。

遠藤 つまり「場づくり」が必要ですね。

横山 それで地域の仲間に声がけして「子ども食堂」のように、地域のみんなでご飯を食べる機会を作ってみようと動き出しました。が、その矢先のコロナ感染拡大で、、、。

遠藤 飲食は難しいですよね、、、。

横山 でも何か、やれることをやりたいとみんなで考えました。それで出たアイデアが、花火だったんですね。

遠藤 あ、自粛期間に花火をあげていた地域、ありましたよね。

横山 近くに花火の産地がありまして、GWの最終日、子どもたちに家から打ち上げ花火を見てもらおうという企画をしたんです。一口1,000円で地域の人たちに寄付を募ったら、思いの外集まって予算の1.5倍になったんです。地域の人たちも思いがあるんだなとわかって嬉しかったです。私が街を歩いていると「応援しているよ」と、知らない方が声をかけてくれたり。

遠藤 ナーバスな時期でしたから、花火は賛否両論あったかと想像します。

横山 はい。実際すごく不安でした。思いつきでやったので準備期間も短かったですし、人づてにネガティブな意見をいただいたり、集まらないように工夫を考えたりしましたが、時期も時期だったので不安で毎日吐きそうになりながら準備していました。当日は打ち上げ時間ギリギリまで雨も降るし(笑)
 でもなんとか無事に打ち上げて、あまった予算で今度は手持ち花火を子どもたちに配ったんですね。そうしたら新しい住宅地に引っ越してきた若い家族も取りに来てくれて、「応援しています」って言ってくれたんです。冷めている人が多いのかなって思っていたのですが、そうではないみたいで。地域に埋もれている熱い思いを表面化させるような取り組みだったなと。

遠藤 地域の人たちにとっては、世の中の閉塞感の中で批判も受ける覚悟で動いてくれた姿に拍手をおくりたかったのだと思います。特に引っ越してこられた方は、地域に馴染めていないという思いもあるかもしれません。二重の閉塞感ですよね。でも住んでいる場所だから、住みやすくしたいとか、楽しく暮らしたいという思いがあります。花火に一筋の可能性を見たではないでしょうか。
 引っ越してこられる方たちにとって、お寺が地域の窓口になれるといいかもしれません。法源寺さんにおいては「Temple Morning」がその場所になりそうです。

横山 「Temple Morning」って継続的に開催することに価値があると思います。誰かに何かのきっかけで「じゃあ、やってるからおいでよ」って言える場所がある。お掃除だし、お寺に来たことのない人にも言いやすい。

遠藤 また会える可能性を残せますよね。行くかどうかはその人次第ですが「行こうと思えばいつでも行ける」のが何よりも大きい。心の安心につながると思います。

横山 市から学習支援の事業委託を受けているNPOより相談を受けて、コロナで学校に行けない子たちのためにお寺の場所を開放したんですね。6月以降、月に2回開催しているのですが、集団になじめないという子や生きづらさを感じている子たちが来てくれていて、お寺を居場所のひとつに思ってもらえたらいいなと思っています。
 駆け込み寺というのがいろんなたとえで使われますが、まさに”駆け込み寺”となれるような社会的に弱い立場の方のための福祉的な支援もやっていきたいです。あれこれ手を出しすぎるのもよくないのですが、色々な人に手伝ってもらいながら。

遠藤 まわりに協力を求められるのもお寺ならではですよね。

横山 最近それでさらに思うのは、経済的に安定した経営をしなければいけないということです。別に儲けたいとかじゃなくて、しっかりした経済基盤がなければ、地域のための活動もできないですからね。
 どこのお寺も大体そうだと思いますが、まずその地域に住む人たちがいて、その場所にできたお寺なので、今後も残していくようなお寺にしていくならば、まずはその地域にいる人たちが元気にならないと。お寺は、そのあとですよね

遠藤 私もいろんなお寺の方々のお話を聞いていますが、横山さんの感覚にはとても共感します。お寺の経済的な安定については、よければ「未来の住職塾NEXT」で学びを深めていただいて(笑)、その上で世の中や地域の閉塞感をすり抜けられるようなオルタナティブな価値観を提示する存在でいてください!今日はありがとうございました。

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プロフィール:遠藤卓也(インタビュアー)
未来の住職塾ではクラス担任をつとめる。共著書に『地域とともに未来をひらく お寺という場のつくりかた(学芸出版社)』。「お寺の場づくり」をテーマに、IT・広報・イベント制作の分野でお寺をサポートする。また「音の巡礼」というプロジェクトでは「音がつなぐ、あたらしい巡礼の旅路。」をコンセプトに、お経からはじまる新しいご縁のあり方を探求中。


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