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北海道随一の「木地師(きじし)」が作り出す、後世に残すべき槐(えんじゅ)の工芸品たち ー 北海道網走郡美幌町のまち自慢

FoundingBase最北の拠点、北海道網走郡美幌町でWorkingSpace KITENの運営を行っている一戸です。
今回は、「北の木地師」として国内外から注目を集める円舘工芸舎様(以下、敬称略)をご紹介させて頂きます。



円舘工芸舎について

円舘工芸舎は1971年の創業。北海道産の槐(えんじゅ)を材として茶筒を中心に作り続けてきました。
現在は工房の代表、円舘金さんを中心に創業者であるお父さんとお母さん、お兄さんとともに木からさまざまなものを創り出す職人「北の木地師※1」と呼ばれています。
※1:木工轆轤(ろくろ)を使って木製品の加工をする職人のこと。

丸太の買い付けから最終工程までを家族で分業し、木工ろくろを使用して器などを制作しています。また「木地」に合わせた刃物(カンナ棒)を使い分けるため、刃物自体も工房の中で鍛治も行います。

「刃物と木、そして自分が一体となって初めて、この世でたった一つの器が生まれます。」


材となる槐(えんじゅ)について

槐とは

中国北部を原産とするマメ科エンジュ属の落葉高木。性質が丈夫で管理に手間がかからないことや木全体に薬効があることから、日本では主に東北・北海道で植栽されています。
また、花言葉は「幸福」、「上品」で「えんじゅ」という呼び名も「延寿」「円寿」「縁授」と縁起が良いことから、昔から厄除けや無病息災、長寿祈願として使われてきました。


北海道の中でも極寒地だからこそ

槐(えんじゅ)という北国ならではの木材。
極寒地の木なので、ケヤキなどに比べて成長が遅く、年輪が密に入っているからこそ、木目の表情が出やすいとのこと。
槐は木目が美しい反面、硬く加工が難しいため、思い通りの形に仕上げることができるのは限られた「木地師」だけ。


「合わせ」技術だけではない、経験に裏打ちされた緻密な工程

茶筒などの上蓋と本体の隙間からすっと空気が抜けながら、ぴたりと閉まる「合わせ」と呼ばれる技術を持つのは、北海道では円舘工芸舎のみ。
その卓越した技術は国内だけでなく、国外からも注目されています。

今回ピックアップしたいのは茶筒を作る工程の時間と緻密さです。
仕入れた槐の丸太の自然乾燥に1年以上かけるのはもちろん、その後の工程でも荒削り後に3ヶ月、中削り後にまた3ヶ月、仕上げ削り後に3ヶ月、塗装後には納得の状態になるまで自然乾燥と一つの茶筒が出来上がるのに最短でも20ヶ月程度かかります。

一つ一つの槐と向き合い、季節や気温、部位による違いにも気を配りながら、この丁寧に妥協なく、経験に裏打ちされた緻密な工程を経ることで、狂いなく、長く使える茶筒が完成します。
さらには注文先の気温や湿度にも気を配りながら発送するなど、制作後の品質管理にも余念がありません。

一つ一つ手作業で、丁寧に、ていねいに。


これだけの工程・こだわりがあるからこそ、円舘工芸舎の作る製品はどれも力強さを宿す美しい木目、ぬくもりを感じる手ざわり、極寒の地に育つ木ならではの息づかいがそのまま伝わってきます。

↑高度な技術で作られた茶筒は、茶葉を湿気や乾燥から守り、お茶の風味を損なわず保管することが可能です。


↑手作りのため、大きさや形に多少の違いはありますが、それゆえに茶筒と蓋がぴったりと一対になっています。茶筒の内部は、上蓋と中蓋と本体の3構造になっており、蓋は気密性が良くなるようにしっかりとはまる構造です。
この「合わせ」の技術は北海道では円舘工芸舎のみで、中蓋の構造は、昭和57年に実用新案登録(登録第1431852号)を取得しています。


↑こだわり抜かれた工程を経た「延寿杯」。
槐(えんじゅ)の皮目の部分を残し、天然木本来の形や木目、節などを残した、強い個性と独特な風合いのある製品。


円舘工芸舎公式 WEBサイト

円舘工芸舎 YouTube


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