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Interview#54 ブレッド&サーカス。おいしいものと楽しいこと。

食の仕事に携わる人々の、パンとの関わり、その楽しみについて伺う企画、54人目は湯河原の人気店、ブレッド&サーカス 店主の寺本康子さんです。

どれくらい人気かというと、All Aboutで開催していた「読者が選ぶベストパン」の人気投票で2007年から2010年まで4年連続グランプリを獲得し、殿堂入りを果たしたほどで、そのパンのおいしさの秘密は、この記事の下にリンクしているBread Journalの記事や本をご覧いただけたらと思います。私も大好きで、箱根や伊豆に行くときには必ず寄るお店です。

大きくしっかり焼いたパンとサンドイッチ

ブレッド&サーカス 店主 寺本康子さん

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ブレッド&サーカスのパンづくり

 ブレッド&サーカスのパンは、「安くておいしくて日持ちがする」というコンセプトでつくっているのですが、この日持ちというのが重要で、大きくしっかり焼くことで、水分や風味を保たせているのです。

 全粒粉やライ麦のパンのレシピって日本にあまりないですね。横浜にいた頃、元町のスーパーマーケット「Union」が大好きで、洋書コーナーでよく、パンのつくり方を眺めました。外国人と結婚した友達が世界のあちこちにいるので、彼女たちを訪ねた時にパンのヒントを得ることもありましたよ。

 よくつくるのはクルトンです。サイコロ状に切ったパンにオリーブオイル、バジルやオレガノ、塩胡椒をまぶしてオーブンで焼くと、すごくおいしいおやつになるんです。サラダにも入れます。全粒粉とライ麦粉の「デイズム」というパンなら、薄く削ぐように切って、刷毛でオリーブオイルを塗り、塩胡椒してフライパンでカリカリにします。パン切り専用ではなく普通の包丁にすれば、紙みたいに薄く切れるんです。チャーハンに入れると肉のような食感と味わいで、おいしいですよ。

甘じょっぱいサンドイッチ、バウルーサンドイッチ

 「全粒粉カンパーニュ」はターキーサンドのような、甘じょっぱいサンドイッチにします。パンにオリーブオイルを塗り、バルサミコ酢を少々、杏ジャムをポトンポトンと置いて、マスカルポーネをたっぷり乗せ、ドライクランベリーを散らします。これを二枚つくり、ハムかチキンを中心にして挟みます。主人は食欲がなかった時も、皆と一緒にこれをペロリとたいらげていましたね。クランベリーがポイントかも。信じられないくらい、いっぱい入れるんです。

 元町にあった「ジャック&ベティ」というカフェテリアのサンドイッチは幸せな思い出です。パン屋さんというと甘いお菓子屋さんみたいだった頃、ここには黒や茶色のパンもあって、自分でパンと具材を選びながらトレイに乗せていくの。いっぱい挟んでもホールドしてくれる、しっかりしたパンでした。

 昨夕は年配のお客さまがいらして「バウルーサンドイッチにするからパン選んで」と言われたので、「そのバウルーっていうの、三十年ぶりに聞きました」と言ったら、「東京の家も熱海の別荘もバウルーは置いてあるんだよ」と。バウルーっていうのはブラジル生まれのホットサンドをつくる機械ね。サンドイッチはバウルーが最高においしい、という話で盛り上がったんです。ルーベンサンドみたいにパンの外側にもバターを塗って、ギューッとプレスするのが特徴です。そのお客さまには、パンを1.3センチにスライスして差し上げました。

 お菓子にあるデーツといちじくの組み合わせをパンにしたのが「デーツといちじくの甘めのパン」です。イスラエルなどのデーツの産地の人達って、デーツにクリームチーズを挟んで、紅茶と一緒におやつに食べるんですね。だからもちろんクリームチーズは合いますが、ブルーチーズにすると味に深みが出ますよ。

 「ブリオッシュレーズン」はフレンチトーストにして冷蔵庫で冷やしておく。暑いところで仕事をしている私たちみたいな者には、これがすごくおいしいんです。

そうした方がおいしいと思うこと

 私、自分がパン屋になると思っていなかったし、パン屋になってもこんなにお客さまが来られるとは予測していなかったから、厨房が喫茶店当時のままなんです。イースト生地だとピークが短いので、一気にバーっと作業しなければならず、こんなにつくれませんが、自家製酵母種ならゆっくり寝ていてくれるので調整できます。それを大きくつくる。小さいものとは味や喉越しも違います。大きくした方が生き生きしておいしいんです。理由はわからないけれど、そうした方がおいしいということは、後の世の人達のために書き残しておきたいと思っています。

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寺本康子 BREAD & CIRCUS 店主

横浜生まれ、横浜育ち。1996年に湯河原で喫茶店「ブレッド&サーカス」を開業。自家製の固形種、液種、発酵種を駆使してつくられる唯一無二のパンが評判となり、夫・五郎さんも加わって98年にベーカリーとしてリニューアル。行列の絶えない人気店に。二人の共著『BREAD&CIRCUS 粉からおこす天然酵母のパンづくり』(柴田書店)は中国、韓国でも出版されている。

NKC Radar vol.87より転載

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東京生まれ。ライター、ブレッドジャーナリスト。伝統文化、職人仕事に興味があります。きものと本と犬好き。著書に『月の本棚』(書肆梓)、『BAKERS おいしいパンの向こう側』(実業之日本社)、『日々のパン手帖パンを愉しむsomething good』(メディアファクトリー)他。

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