たった一度、「選ばれた人」になった日の話。

※過去にアメーバブログをやっていた頃に上げた記事の内容を再構成して書いています。



皆さんは人生で「選ばれた人」になったことがあるだろうか。
推し活中の出来事で例えるならば、最前の席がご用意されたりとか。
アーティストが投げたものをキャッチするとか。
ラジオに投稿したものが読まれるとか。
それ以外でも、大勢の中から自分だけが幸福を得られた人の事を私は「選ばれた人」だと思っている。

ちなみに、私はそのどれも無い。
私は人生で選ばれたという経験がほとんど無く。
特にゴールデンボンバーの関連では、いつも選ばれないモブキャラとして存在してきた。



だけど、今までの人生でたった一度。
私はこれ以上無いくらいの「選ばれた人」になったことがある。
今日はその日まで記憶を遡って人生最良の思い出の話をしてみたい。


時は2012年の12月頃まで遡る。
CDデビュー5周年を迎えたゴールデンボンバーは、『Dance My Generation』の発売に合わせて全国での握手会とライブツアーを行うことが決まった。
その年の夏にファンになったばかりの私はこの発表に1人大歓喜だった。
握手会の条件としてCD購入があり、絶対に手に入れるためにまだ薄暗い開店前から数時間並び、無事にその権利を手に入れた。


年が明け、2013年7月。
いよいよ、私の地元でゴールデンボンバーが握手会を行う日がやってきた。
その年、受験生になった私は「喜矢武さんに応援メッセージをもらおう!」と決めて握手会に臨んだ。

商業施設の中央広場のような所に4つのテントが立てられる。
集合時間になり、スタッフさんの指示に従って各々がお目当てのメンバーのテントの前に並び今か今かと開始を待った。
はやる気持ちを抑えられなかった私は、気づけば喜矢武さんと握手をする列の先頭になっていた。


いよいよ、握手会開始。
4人が歓声と拍手の中、姿を現した。
後にも先にも、私がゴールデンボンバーの4人を最前列で見たのはこの時だけだ。

向かって左から研二さん・鬼龍院さん・喜矢武さん・歌広場さんと横並びになる。
簡易的な踏み台に上がり、握手会は軽いトークから始まった。
先頭の私の目の前には、喜矢武さんが立っているという夢のような状態になっていた。

鬼龍院さんが、私の地元のことを交えた話で会場を温めている時。
ふと私は目の前に立つ喜矢武さんを見上げた。
喜矢武さんは目の前のファンたちと目線を合わせて微笑んでいた。
いよいよ私の方を向いたので、私も微笑んでみた。


その時だった。

「ばかやろっ」

そんな言葉と共に喜矢武さんの手が私の頭に置かれた。
乱暴な言葉とは裏腹に、置き方はポンッととても優しかった。
(喜矢武さんの名誉のために言っておくが、100%おふざけテンションでの発言である。)



私は、状況が全く分からなかった。
ただ、他に並んでいる人達が「キャー!!!」と黄色い歓声を上げたので、かろうじてこれが現実なのだと分かった。
喜矢武さんはなんだかやり遂げたみたいな顔でニコニコしていて、両隣の鬼龍院さんと歌広場さんが何やら喜矢武さんにつっこんでいたような気もする。

そしてトークも終わり、それぞれのテントでメインイベントの握手会が始まるという時。
1番左にいた研二さんが踏み台を渡って、1番右のテントに入るのをぼんやり見ていた。
すると、また私の頭に手が置かれた。
今度は研二さんが私の頭に優しく、だけどほんの少し力強くガシッと触れたのである。
研二さんは喜矢武さんが誰の頭を触ったか見ていたのだろう。
また黄色い歓声。
今度はそれに続いて「良いなぁ…」という声まで聞こえてきた。



開始前にだいぶ心を乱されたが、逆に色んなことが起きすぎて私は超冷静に喜矢武さんと話が出来た。
以下はその会話である。

私 「あ、こんにちは〜」

喜「おー!叩いてごめんね笑」

私「むしろ、ありがとうございます笑」

喜「(テント内見渡しながら)ここ結構暗いねー!」

私「ですね〜、あ!今年受験なんで応援してください」

喜「(ガシッと私の両腕を両手で包み目を真っ直ぐみて)頑張れ!!」

私「ありがとうございます!明日ライブ行きま〜す👋」

喜「(イケメンすぎる笑顔で)おー!👋」


実にあっという間の出来事だった。
本当に本当に全てが嘘みたいで夢みたいな日だった。
私はしばらくの間「人生って捨てたものじゃないな」という言葉が、頭の中でずっとこだましていた。
思えば、喜矢武さんのファンでいようと心に決めたのはこの日だったと思う。
ちなみにこの応援のおかげで、私は無事に第1志望の学校に合格した。
ついでに、この経験以来どの芸能人を前にしてもほぼ緊張せず言うべきことを伝えられる人間になった。



喜矢武さんに叩かれた時、鬼龍院さんと歌広場さんも私を見ていた。
研二さんは喜矢武さんの真似をして私の頭に触れた。
あの日、ゴールデンボンバー全員の目が私に集まったのだと考えると未だにおかしなテンションになってしまいそうになる。



もう11年も前の話だ。
頭に触れた喜矢武さんも研二さんも私のことなど全く覚えていないだろう。 
鬼龍院さんと歌広場さんは尚更だ。
だけどあの日、間違いなく『私』という存在は4人の目に映り。
彼らの人生の1ページになったのは紛れもない事実で、そう考えると生きている中でも本当に幸せな瞬間だったと思う。

私はこの「選ばれた人」になった日をこの先もずっと忘れない。
周りが見えなくなりそうな時。
この思い出が心の中でほんのり灯り、私の心を優しく照らし支え続けてくれることだろう。(了)

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