festive moodの話。

新しい半袖を下ろした。
本当のことを言うと、いつ買ったのかも覚えていないのでこの服が新しいのか古いのか全く分からない。
それでも、少なくとも値札がついたままだったので新しいになると思っている。

値札を切ろうと改めてしっかり見ると胸元にビンテージな字体の英語でこう書かれていた。

festive mood

ふぇすてぃぶ むーど…
考え始める私。
「festive」は要するに「festival」に関連する言葉なのだろうか。
「Mood」というのは、そのまま良いムードとかに使われる雰囲気のような意味なのだろうか。
組み合わさった単語を繋げると、なんだか少し嫌な予感がしつつGoogleの画像翻訳をTシャツにかざした。


お祭り気分

ご陽気がすぎる。
 明るい色でこの言葉は、私にはあまりにもご陽気すぎる。
お祭り気分に続いて「浮かれて」という意味が出てきた。
私にトドメを刺した。



なぜデザインをちゃんと確認しなかったのだろう。
このTシャツの色味が気に入って手に取ったのだと思うが、せめてこういう外国語系Tシャツは言葉を確認して買うという癖さえついていれば回避できた事態である。

お祭り気分から普段最も遠いところで生きている日陰者だと言うのに。
浮かれてるどころか沈んでいる日が多いというのに。

着ようか着ないか散々迷って、結局着た。
私は『お祭り気分』という言葉を胸に久々に外出した。
ちなみに、行先はカウンセリングである。
festive moodのfeの字も無い場所に死ぬほど明るいTシャツを着て行った。
この温度差はある意味で芸術的な気がした。

だけど、不思議と「今、自分の胸元には『お祭り気分』と書いてある」という自覚のおかげでなんだか少し明るく過ごせたし。
着ていた時の自分は陽キャになっていた気がする。
こういう自己暗示の方法もあるのかもしれない。
そういう意味では買ってよかった。

帰りのバスで、下校する小学生と乗り合わせた。
どこでそんなものを覚えたのか女子の中に男子が1人混ざって王様ゲームのようなものを始めた。
なんだろう、率先してゲームを始めた少年は比較的顔が整っており私よりもずっと陽キャの匂いがした。
私は少し、胸元を隠すように座り直した。


外国語Tシャツは諸刃の剣だ。
一見するとデザインはかっこいいが、意味を知ると全く訳の分からないことや厨二みたいなポエムが書かれていたりする。
Tシャツに込めるには荷が重すぎるような謎に強いメッセージ性を秘めていることもある。

今回はひたすらに明るいだけの言葉だから良かったが、今後は注意して洋服を買うようにしたい。(了)

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