証明とその思考回路を全部書くシリーズの理念と概要

数学の定理の証明を追うとき,以下のように思うことは多い.

式変形や推論が正しいことは理解できる.しかし,どうやってそれを思いついたのかが分からない.

そこで,証明の思考回路も全て解説した文章を様々な定理に対して作成することにした.これがそのシリーズである.
証明の思考回路を理解することが出来れば,定理を深く理解しすることが出来る.それはその分野全体を統一的に理解することにつながる.さらに,思考回路を応用することで定理を拡張したり他の証明に活用するアイデアも生まれるだろう.その意味でこの連載を続けていくことは意義があると考えている.

レベルは主に大学学部数学である.内容は多岐に渡るだろうが,最初は素数定理やゼータ関数周辺(すなわち分野としては解析的整数論)を解説しようと考えている.理由としては,(1)関心を持つ人数が多い分野であること(2)積分の式変形など,思いつき方が初学者には理解し難い推論も多いこと のふたつである.もちろん,早々に切り上げて別の分野に移る可能性もある.

文章の構造は基本的に(1)定理の紹介(2)思考回路の説明(3)思考回路を省いた通常の証明 の3つに分かれるが,(2)と(3)のどちらを先に読んでも構わない.筆者のおすすめは,(3)をなんとなく眺める→(2)を読む→(3)を読む という順番である.

筆者の理念として,「数学が天才のための学問である」というイメージを払拭したい,というものがある.どうやって思いついたのか分からない天才的なひらめきというものは皆無ではないが,世間でそう思われている推論のほとんどは実は自然な思考に裏付けられたものである.

この連載を始めとする筆者の文章によって,一人でもいい,「数学って天才のための学問だと思ってたけど,自分にも出来るかも」と思ってくれる読者がいたら,これ以上幸せなことはない.

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