君は才能がある? 承認欲求とスピリチュアル(2)
おはよう。スピリチュアルネイティブのタケルです。
窓を開けたらまだ風が冷たい。晴れてる日の方が、寒かったりするよな、特に朝は。
さて、前回の記事の続きから。
俺は20代のころ、なぜか行く先先々で霊能者の人と出くわすことが多かった。と言っても、彼らの多くは、普段は普通の仕事をしている人たち。編集者とか、飲食店の経営者とか、コンサル経営者とか、アーティストとか。初めは仕事で出会った彼らとしばらく話し込むうちに、なんとなく「スピリチュアルな感性の強い人なのかなあ」と思って見ていると、大抵は相手も俺のことを同じように感じている。
ほんで、スピリチュアリティの強い人たち特有のコミュニケーションというのだろうか。会話の中で、少しずつジャブを打っていく。
「神社とかって行きます?」
「あ、綺麗な数珠ですね。天然石とか好きなんですか」
「オカルトな話っていけるクチですか?」
こんな感じで、じわじわ様子を見つつ、話を進めていく。余談だが、普通の社会人でも左手首に数珠をつけている人は、割と一目でスピ大丈夫な人だなとわかる。それも、ダイガーアイとか色付きの石がずらり、とかじゃなくて、クリスタル多めの人。
クリスタルは邪気払いの石だ。さらに気功の考えでは、「気」は左手から入ってくるという。なので、左手にクリスタルを付けてる人は、少なくともそう言った「気」のことがわかる人、である可能性が高い。
かくいう俺も、現在はクリスタルを左手に付けている。そして、つけるきっかけになったのも、仕事での出会いだった。
その人は、日系中国人の飲食店経営者の女性だった。年齢は40代半ばくらい。見るからにアクティブな人で、仕事の話がある程度まとまると、すぐに雑談になった。彼女の経営する火鍋店は、2階がアートスペースになっていて、彼女と繋がりのある若手アーティストたちの絵画を展示してあった。
俺は、何気なく一枚の絵を見ながら「絵からエネルギーが漏れてますよね」と言った。
すると彼女が、「あ、やっぱそういうのわかるタイプなんだ」と言った。
俺は振り返って、ああ、まあ、と頷いた。
「でもさ、あなたはもうちょっと自分を知って、防ぐものは防いだほうがいいよ。ほら、これあげる」
その時彼女がくれたのが、クリスタルの数珠だった。
俺はこの時、まだ22歳くらい。新入社員の若造で、ペーペーで、何一つ自信がなかった。仕事は、割とできるほうだった。俺は、ある程度落ち着いて会話できていれば、なんとなく相手の気持ちを察することができた。相手が本当に言いたいことを引き出したり、こちらでやんわり整理するのがうまかったんだ。だもんで、取引先との関係をうまく築くことに長けていた。今でいうHSPみたいな感じ。
だから、会社では割と重宝されるほうだったと思う。ただ、人手不足の多忙な会社だったこともあって、使える若手に振られる仕事はいくらでもあった。俺はとにかく忙しくて、いつも寝不足で、疲れていた。
「疲れる、って、憑かれるってことだからね。あなた、体を大事にしたほうがいいわよ。あなたみたいな霊媒体質は、身体が何よりの基本。栄養をしっかり摂ってしっかり寝て。たまに塩振って、邪気祓いしなさい」
俺は、彼女が何気なくいった霊媒体質という言葉が、やけに引っかかった。霊媒体質? 俺って、なんか、やっぱりそういう、なんか、あるのかな。
その後も、俺は幾度となく霊能者と出会い、必ずと言っていいほどスピな指摘をされるようになった。
「君は、かなりスピリチュアルな才能がある人だね」
「オーラとか、すぐに見えるようになるよ。なんなら、君のほうが俺より力がある」
そして、何より言われるようになったのが
「私の跡を継いでくれないか。弟子にしたいんだけど」
これ。とにかく、表向き社会人兼気功師の人に、めっちゃくちゃ誘われるようになった。霊能系って、こっちがスーツ着てても「あ、こいつ霊能ある」って気づけるものらしくて(俺は正直そこまでの見る目はない)、俺は何度も「またかよ!」と半ば戦慄していた。
でも、当時の俺は軽く病んでいた。この先も会社員を務めていけるか、毎日が不安だった。会社ではいつも怒鳴られていたし、俺は怒鳴られるのが嫌なあまり、なんとか上司に好かれよう、気に入られようと必死だった。そうして必死になるあまり、元々健全だったはずの、俺の中にあった承認欲求は、だんだんと歪に膨らんでいった。
自信をなくした状態の俺に、誰かに承認されたくて仕方ない俺の乾いた心に、スピリチュアルな才能があるという事実、そう言った彼らからの指摘は、あまりにも甘く響いてしまったんだ。
でも……。俺は彼らから褒められるたび、内なる違和感を感じずにはいられなかった。
続きます。
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