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農業現場お役(に立ちたい)人カイギ#4『新規就農支援についてみんなで考えよう』 レポート

イベントの趣旨、概要

約2ヶ月に1度の開催で、初回から半年経ちましたお役人カイギ。第4回のテーマは、「新規就農支援」です!

佐川氏も会発足前からこのテーマでの開催を心待ちにしていたエモエモ回。全国各地で多様な就農支援が行われておりますが、就農側と行政側とのチューニング、農地調整、そもそも内部や関係機関とのすれ違いなど悩みはつきません。

目まぐるしい情勢の変化にも柔軟な対応が求められる中、ただ行政が構えるメニューに案内するのではなく、就農希望者の人生に寄り添い、「その人にとって必要な支援」を横断的に考える「つなぎ」的役割を果たすにはどうすれば良いのでしょうか。今回は、親元就農、雇用就農、独立就農の中でも、主に「独立就農」をメインに話を進めます。

当日のようす

イベントの主な内容

(1)論点整理

最初は、就農への課題に焦点を当てた佐川氏のミニレクチャーです。
就農者側に求められる課題は、生産技術、資本、人的資源、経営スキル等、多岐にわたる上に、就農者が多様なことや、状況の変化が大きいために解決の難易度が高くなります。

行政側でも、農業研修や資金の融資、農地斡旋等、就農に向けた課題解決のための支援体制を取り揃えていますが、就農相談の多様化に対応できていないケースもあります。さらに、近年では資材高騰により、これまで提示していた就農モデルケースでは対応出来なくなっている現状もあります。

(2)トークセッション&ゲストセッション

ミニレクチャーの後は、①新規就農者を取り巻く環境や課題の変化②若者をターゲットにした施策体系③支援体制の構築の取組の3件のトークセッション&ディスカッションが行われました。

  1. 新規就農者の今昔!〜今の新規就農者に必要なもの〜(鹿児島県)

  2. 若い世代を呼び込む子供~就農希望者まで各世代に向けた
    新規就農施策の推進〜(千葉市)

  3. みんなに知ってもらって地域で育つ担い手、新規就農者(東広島市)

最近の新規就農者支援では、栽培・飼養技術向上だけでなく、経営管理能力の向上や農地・施設などの生産基盤確保を含めた総合的な支援が必要で、支援内容も単独では解決が難しい複雑なものです。このような中、今回の登壇者の取組は、関係者を巻き込みながら、時代に合った新たな視点での取組を行っていることが非常に印象的でした。

役所という組織の中で、必要とは思いつつ前例踏襲や縦割りを乗り越えることは、周囲の反発やリスクがあり、思っている以上に困難です。その困難さを分かっている故に今回の3名の取組は多くの参加者に共感と勇気を与えたのではないでしょうか。

グループディスカッション(ブレイクアウトルーム)

登壇者によるトークセッションの後は、ブレイクアウトルームに分かれ、2~5名での グループディスカッションになります。

オンラインで、15分程度と短い時間ではありますが、このイベントでしか集まることのできないメンバー同士が、自然な形で、話ができる機会です。トークセッションの感想や関係機関の連携や人事異動に関する悩みなど幅広い内容が話し合われました。

見ず知らずの人達同士が、オンライン上で話をする中で、話し合いが盛り上がるのかという部分に不安を感じる人がいるかも知れません。しかし、各グループの中にいるそれぞれの幹事が議論をうまく進行していることや、何よりも「農業者のために」という同じ思いを持っている参加者が集まっていることで、みんなが、本音ベースで自由に議論が出来る貴重な時間を過ごすことが出来るのでお薦めです(もちろん、みんなの話を聞いているだけでも面白いので、耳だけ参加の方も大歓迎です)。

イベントのまとめ

トークセッションの3人のお話は素晴らしい内容でした。新規就農者の経営の質に焦点をあてた事例や若手の就農は少数に絞って打率を高めていくアプローチの事例、支援する側に一番大切なことは親身になり、相手以上に相手の人生を考えることといったお話でした。

まとめとして、佐川さんから新規就農支援に関する3つのポイントについてレクチャーがありました。

1つ目は、各種支援制度を横断的、統合的に運用することです。各種支援策を各自が幅広くインストールして、総合的に支援する、もしくはそういうプラットフォームをつくり、自ら“つなぎ”になることです。

2つ目は、就農者の質にこだわり、教育に投資することです。就農者の質≒就農支援(地域)の質とも言えます。

3つ目は、2つの別の方向性からの支援を使い分けることです。一方は、厳しく育てる、経営や現実に向き合う、自立を促す役割の支援。もう一方は、優しく励ます、個人や希望に向き合う、成長を演出する役割の支援です。一人で両方を行うのが難しれば、複数人で役割分担することも考えられます。これら3つにしっかり取り組んだ自治体とそれ以外とで格差が広がっていくのではないかとのことでした。

新規就農に関する支援策は多く多岐に渡るところに難しさがあると思いますが、無い物ねだりや他人まかせではなく、我々一人ひとりが就農を奨励していることに対して責任を持つことが大切なんだと感じました。

延長戦、座談会

会を一旦締めた後、延長戦として、今回の内容についての感想や登壇者への質問の他、それぞれが実際悩んだことなど、ざっくばらんなトークタイムを持ちました。

配属後に新しく始めた取り組みを組織として続けていくためには個人のモチベーションだけでは限界があり、取り組みの定着に試行錯誤しているという声が複数ありました。予算のないところから動ける人たちに働きかけて実績を重ねることで組織の理解と応援を得られたという話も。また、組織や立場で視点が異なるため課題の共有が必要性だということ、関係機関と連携する時には、組織的な方針に加えて自分の思いも伝えるようにしているという工夫を聴くこともでき、中味が、ぎゅっと詰まった1時間でした。

参加者のご感想

今回参加した方々の感想を紹介します。次回のイベント参加のきっかけになればと思います。

モチベーション上がりました!私自身は日々業務量が多く、また新しいことを生み出しづらい雰囲気の中で、業務をこなすことで手一杯になりがちですが、明日から心機一転頑張りたいです。

特に、トークセッションでの発表が印象的でした。
1つめの発表では、普及員として20年以上活躍されている中で、新規就農支援のあり方が変わってきていること。新規就農は、数より質が求められる時代ではという提言に、私が日々感じることを理論と共に同意していただけた気がしました。
2つめの発表では、新規就農者の支援はもちろん、学生や子ども達の農業体験で裾野を広げる取組みをされていて、多様な進め方のヒントが得られました。
3つめの発表では、担当者が1つ1つの課題に責任を持って取り組むことで、短期間で大きな成果・変化を生み出せる事例に触れられ、モチベーションが上がりました。

ありがとうございました!

アンケート結果

イベント終了後のアンケートでは、43名から回答があり、満足度も5段階評価で4.5(平均値、なお満足度5と回答した人は、全体の約6割)と非常に高い評価でした。

さらに、アンケートの中では、以下のような感想(一部抜粋)が寄せられ、多くの方から「刺激を受けました」と声が聞かれました。

・組織が組織としてうまく機能していけば、短期間の中で、すごい動きが生み出せるんだということがわかって、モチベーションが上がりました!
・新規就農者へ支援をしていきたいという熱い気持ちの公務員がいらっしゃることにとても嬉しく思いました。
・各地区で頑張っている仲間を感じることができ、非常に刺激になりました。
・登壇者の方の話を聞いて、自分自身の思考が硬直しかけていたことに気付かされました。
・何回出ても、参加者の皆様の農業支援にかける意識の高さに大きな刺激を受けます。

次回のご案内

 お役人カイギは2か月に1回、オンラインイベントを開催しています。次回のイベントは5月14日(日)、テーマは、「久松農園 久松さんとたのしく語ろう!〜農家がもっと減る時代の地方農政と、農業現場お役(に立ちたい)人の目指す姿〜」です。ゲストに昨年出版された「農家はもっと減っていい」の著者 久松達央さんをお招きします。聞くだけの参加、途中からの参加、途中での退出もOKです。皆さんのご参加をお待ちしています!



主催者、本件に関する連絡先

https://farmside.co.jp/

主催者:ファームサイド株式会社
担当:佐川友彦
連絡先:mail at farmside.co.jp


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