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農業現場お役(に立ちたい)人カイギ#7『事業承継支援についてみんなで考えよう 「後編」〜 行政の立場からどう事業承継のお役に立てるか 〜』 レポート

※ お役人カイギの紹介
農業現場お役(に立ちたい)人カイギ」は、全国の農業系公務員が、多様な農業現場の課題解決に向けて、越境して話し合い、励まし合い、行動し合う場所です。2か月に1回、平日の夜にオンラインで集まっています。

農家の右腕、経営改善のあの方こと、ファームサイド株式会社/阿部梨園の佐川氏が主催。佐川氏のミニレクチャー、ゲストスピーカーを迎えての座談会、その後は小グループに分かれての意見交換タイムを設けています。

この勉強会を通じて、個々、組織、農業界が抱える課題を一緒に考えることで、解決できるものが多くあると思っています。ガンガン課題を解決していって、持続的で明るい、未来ある農業を共につくっていきましょう!

農業現場お役(に立ちたい)人カイギについての詳細は以下のリンク先に詳しくまとめられていますのでご覧ください。https://farmside.notion.site/76bf2e711bc24dbeb96b490aff742254


イベントの趣旨、概要

第7回は、前回に引き続き事業承継支援について考える後編です。『事業承継支援についてみんなで考えよう 「後編」〜 行政の立場からどう事業承継のお役に立てるか 〜』というテーマで、行政として具体的に何から進めていけるだろう?という問いにフォーカスしました。

今回は、農家の事業承継第一人者である伊東悠太郎さん(事業承継士)と竹本彰吾さん(たけもと農場)をゲストとしてお迎えしました!
前回(第6回)のディスカッションの内容を踏まえて、お役人カイギから事業承継支援策をゲストのお二人に提案し、事業承継支援にどんな行動が必要かを深堀りしていきます。

取組の提案をする(お役人カイギの今回の)企画メンバーは寝ても覚めても、事業承継支援について考える数か月を過ごしていたとかいないとか。前編に引き続いて参加してくださった方も多く、各地域での事業承継支援が一歩ずつでも広がることを期待したい、密度の濃い回でした。

イベントの主な内容

(1)導入トーク

白鳥氏と佐川氏による、お役人あるあるの表題長すぎ問題を寿限無寿限無的に合いの小ネタから始まった今回。どんどん長くなる今回のテーマで和んだところで導入トークです。

まずは、前回の内容確認と論点整理を行いました。その中で、農業の事業承継支援の重要性を確認しました。また、幹事メンバーによる準備段階の話し合いや前回の参加者から出てきた声、現在お役所で農業の事業承継支援はどのような扱いになっているかを整理しました。

何をしたらよいのかわからない、専門知識がないと難しそう、という事業承継支援への認識が、第6回終了後のアンケートでは、自分にもできることはありそうだ、というポジティブな印象に変わったことがわかります。

これらを踏まえて幹事メンバーでは事前に、公式な業務として事業承継支援をするにはどうしたらよいか、具体的な取り組みについて検討を重ねてきました。

その結果、今後取り組んでいきたい事業承継支援のために、どのような組織の体制整備が必要か、支援の対象は誰か、具体的な支援内容についてある程度整理ができました。

また、この後ゲストのお二人に提案する内容が支援策のうちのどこにあたるのかを確認しました。

(2)クロストーク&ディスカッション

続いては、具体的な事業承継支援の案を4人の幹事から提示し、ゲストからコメントを頂くことに。(⇒がゲストからのコメント)

① 経営承継の必要性を意識させるために「認定農業者の更新時に60才以上の方に、経営承継のアンケート」を実施
⇒「気づかせるのは大事、その際に自分たちの貴重な経験を引き継がせたいと思わせるのも大事」「農水省作成のヒアリングシートなどを活用して、シートをどんどんブラッシュアップすべき」

② 「承継=相続、死」ではないことを気づかせるために、承継後の自分のための「第2の人生キラキラセミナー開催」
⇒「加えて、継承者もその気にさせるセミナーもよいかも」「農業者は意識が低いわけでなく、皆葛藤している。そこを理解した上でどんどん進めるべき」

③ 「就農時から意識させるため、就農のための講習プログラムに事業承継を学ぶ&取り組む講習会も含める」
⇒「パッケージ型の講習会というアイデアはいい」「親と子の価値観のズレを補正するための支援が大事」「親父の攻略法教えます、といったアプローチもよいかも」

④ 家族の問題に首突っ込むのが難しい、そんな行政職員が声掛けしやすくできるような「お役人声掛け知恵袋」を作りたい
⇒「集合知が重要」「一人では難しいが百人の知恵が集まれば素晴らしいヒント集ができる」

最後に「事業承継に行政の支援が必要か?」という根本的な問いに対し、お二人から「もちろん。中小企業に対する事業承継支援並みに重要。スマート農業の普及よりも重要」と力強いコメントをいただきました。

(3)感想交換タイム(ブレイクアウトルーム)

クロストーク&ディスカッションの後は、お役人カイギ恒例、少人数のグループに分かれての感想交換タイムです。ゲストとのディスカッションを聞いた感想や事業承継について考えていることの共有などが行われました。

思考を深める際には、具体的な事例を集め物事を整理・抽象化して考えた上で、その抽象化した概念から、自身の具体的な行動を考えるという形で、「具体」と「抽象」を行き来することが非常に効果的です。

今回のお役人カイギでも、事業承継をテーマに、①全国の事例をみんなで共有する②事例のディスカッションを通じて考えを整理する③整理した内容を基に、自分達の具体的な行動を考えるという流れで思考を掘り下げることが出来たのではないでしょうか!

まとめ

今回はテーマを決めてから、4ヶ月以上にわたって幹事メンバーを中心に議論を重ねながら、2回のイベントを実施するなど、長期間にわたって「事業承継」を掘り下げてきました。

事業承継を支援する上では、親世代などの譲る側を中心に対して、まずは事業承継をする気になってもらう動機づけの段階、その後実際に承継を進めていく実行支援の段階に分かれます。

それぞれの段階において、お役人としてどう関わるのかということが大きな課題ですが、まずは取っ掛かり(足場)を作るという意味でも、今回のイベントで紹介のあった4つの提案が参考になると思います。 

さらに、「事業承継は、スマート農業よりも優先順位が高い」とゲストの伊東さんの発言にあったように、事業承継を組織のビジョンや方針に施策として明確に位置づけ、通常業務として強力に推進する必要性を改めて確認したところです。

なお、今回のイベントのテキストとも言えるのが、ゲスト2人の共著である以下の著作になります。事業承継を考える際には、必読の書籍です。

『今日からはじめる農家の事業承継 2万人の跡継ぎと考えた成功メソッド』

さらに、イベントでも紹介がありましたが、第2弾として、ワークブック形式で、書き込みながら事業承継計画を完成することが出来る以下の書籍が11月16日に発売予定となっています。興味のある方は、以下のリンクから注文すると良いでしょう。

農家の事業承継ノート: 書き込み式でよくわかる

延長戦・座談会

イベント本体より盛り上がる⁈延長戦。
ゲストお二方も参戦いただき、
・竹本さんが父を振り切り(!)成功したイタリア米のお話
・伊東さんが今支援されている承継の実践講座のお話
などを通じて、
「最適解(例えば親父の説得(!))を環境が許してくれないこともある、セカンド・サードベストの選択肢提案も行政の役割」
「ダメ元の精神で小さい事からでも支援を進めていく」
「親子間に第3者の立場で"通訳"として入りしっかり話を聞く」
「承継支援は難しくない、1度ファシリテーションを経験すれば誰でもできる」
「農家同士、みんなで取り組んでいる空気感を作ることも大事」
「承継に取り組むのは中学生からでも早過ぎることはない」
といった金言をお二方から授かり、今回も充実の延長戦となりました。

参加者のご感想やアンケート結果

今回参加した方々の感想やアンケート結果の一部を紹介します。次回のイベント参加のきっかけになればと思います。

参加者から以下のような回答が聞かれました(一部抜粋)。
「伊東さんの『絶対に最優先で必要、スマート農業よりも』という気迫のこもった言葉に頷いた。現場ニーズはとても大きいことを実感できた」
「事業承継を最優先事項とするよう業務に位置づけられるようにしたい」
「4人の提案は解決に繋がりそう。(ゲストからの助言のとおり)農業者側にどんな支援が必要か聞きながら、取組みを進めていくべき」
「リタイア後の農業者でグループを作る、表彰するという取り組みは面白い」
「カイギでは(他地域の状況を知ることで)自身の思い込みや認識の枠が外れる、すごくありがたい機会」
「事前の予習から提言、それについてのグループディスカッションと流れがよかった」

なお、39名から回答があり、満足度は5段階評価で平均4.6と、今回も高い評価をいただきました。


主催者、本件に関する連絡先

主催者:ファームサイド株式会社
FARMSIDE Inc.|佐川友彦|農業界の課題解決ファームサイド株式会社は農家の経営改善と農業界の課題解決に貢献します
farmside.co.jp


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