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男性性と女性性

過日、ジョンとヨーコの『DOUBLE FANTASY』展を見に行きました。ビートルズの曲は子供の頃から聴いていたものの、ジョンとヨーコの活動については知らないことがあまりにも多く、彼らの圧倒的な熱量と、ユーモアと、センス溢れる表現に、胸がいっぱいになりました。

さて、入口はいってすぐのところに、写真のような展示がありました。

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“若い頃の写真を見ると、僕はマーロン・ブランドのようになりたい自分と、繊細な詩人、つまりオスカー・ワイルドのようにしなやかで女性的な自分とに引き裂かれていた。その二つの間で常に揺れ動いていて、大抵は男らしい方を選んでいたんだ。もう片方の自分を人に見せるなんて、死も同然だったから。  ジョン、Rolling Stone誌、1980年”

何気ない場所にある何気ない言葉でしたが、世界的な大スターでも、時代のジェンダー意識に少なからず影響を受け、葛藤しているところが人間らしいなぁ、とホッとする思いでした。

多くの人が、出生時に身体的な特徴によって判別される「性」を生きることになりますが、LGBTQの認識も広まり、男性か女性か2択ではないことは常識になってきています。とはいえ、一般的なイメージとしての「男性性(例えば、「合理的、論理的、物質的」)」と「女性性(例えば、情緒的、感覚的、非物質的」)」があると仮定した場合、男性がいわゆる男性性だけを100%持っているわけではなく、女性性も必ず持っていて、その割合が個性であったりもします。個々に備わっているはずの十人十色の個性は、時代や環境がつくりだす性イメージによってゆがめられ、無意識に望まれる性イメージを選択し、演じてしまうことがあるのだと思います。

さて、この展示を見にいった後、五輪組織委員会の森元会長が女性蔑視発言で辞任しました。テレビをつけると、後任の議論がなされていて、主に下記のような意見が出ていました。

女性を会長にして、世界にアピールする
・「女性を会長に」という表面的に形を整えようとすること自体が既に男性的考え。「人として」の適任者を選ぶべき
女性と男性、一人ずつ。または女性3人など、複数で担う
日本は男性社会が根強いので、一旦、思い切って女性を会長に据えてみないと、結局男性が選ばれて、変わらないのではないか
・「女性だから」と特別視すること自体が差別的と考えるか、あるいは、これまで女性の地位が低く、機会を十分に与えられていなかったから、意図的に女性の地位を高める施策をとる(女性の枠をあらかじめ用意する)か。

様々な議論がなされていて、興味深く聞いていました。そもそも、女性の地位についてマスメディアで真剣に討議されていること自体が、久しぶりのような気がして、新鮮に映りました。

世界「男女平等ランキング2020」、日本は121位で史上最低だそうです。読み書き能力、初等教育(小学校)、出生率の分野では、男女間に不平等は見られないという評価で、昨年同様世界1位のランク。一方、中等教育(中学校・高校)、高等教育(大学・大学院)、労働所得、政治家・経営管理職、教授・専門職、国会議員数では、男女間に差が大きいとの評価で世界ランクがいずれも100位以下。その中でも、最も低いのが閣僚数で139位。国会議員数も135位と低く、その他の項目でも50位以内に入った項目はゼロという結果です。

この数字にも表れているように、小さい頃は、「男女平等だよ」という教育を受け、性別に関係なく努力は報われると頑張っても、いざ社会に出ると、なぜかしっくりくる居場所が見出せない。教育と実社会にギャップが生まれているということになります。女性は「わきまえる」ように仕向けられたり、年齢を重ねるごとに、働くよりも子どもを産むべき、という価値観を肌で感じたりもします。一方、男性が幸福かというとそうでもなく、組織の中で苦しい思いをされている人も多いように感じてしまいます。一体、誰のための社会なのか、頭を捻りたくなりますし、おそらく経済やお金というものが深く関わっているのだろうと推察します。

さて、ジョンレノンは、オノヨーコと対等であるために、ジョン・ウィンストン・オノ・レノンに改名しました。コクヨは、2020年末に性別欄のない履歴書を発売しています。男性であること、女性であることが、単なる個性になる日は、近づいているのでしょうか。

最後に、世界最古の伝統医学アーユルヴェーダでは、人の体質を「五大元素(空風火水地)」のバランスで診断します。性別は個人を知るための一要素として活用しながら、居住環境やライフスタイルを含めたホリスティック(全体的)な視点で一人一人を診ていきます。西洋医学は、性別、年齢、病名でセグメント(区分け)することで効率的にたくさんの人を治療するために有効な治療法で、多くの命を救うことができます。どちらも大切なのですが、一人一人を救うための効率化が、いつのまにか、効率的であること自体が目的になり、一人一人が置いてけぼりになることってあるよな、と思うのです。

長文お読みいただき、ありがとうございます。ジョンレノンの『imagine』は、久しぶりに聴くとやはり良いものです。素敵な1日を。





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