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ある元銀行員の話③ 大変だったこと

数年前まで銀行員だった私の経験談、その③です。よろしければ①、②もご覧下さい!

今回と次回の2回に分けて、銀行にいて大変だったこと&よかったことを書いてみます。1つの記事でまとめるつもりが、予想以上に長くなったので分けました。私は窓口業務の経験がないので、主に事務目線での話になります。窓口の方ですと大体営業目標が課されることになるので、また違った大変さがあるかと思います。

まずは大変だったことの方から。正直これは書き出すとキリがないので、3つに絞りました。

大変だったことその① 銀行事務はとにかく細かい

お金を扱うという銀行の性質上、当然と言えば当然なのですが…金額に関することには常にシビアでならないため、銀行事務というのは物凄く細かいです。例えば、伝票の金額欄の頭部は、必ず「¥マーク」を付けなければいけません。(¥10,000のように)お客さんの記入がもれてしまったまま手続きを進めたら、アウトです。

記入を間違えてしまった時の訂正の仕方も決まっています。銀行の書類を書いたことのある方はご存知かと思いますが、二重線を引いた上から印鑑を押す必要があります。これ以外は訂正として認められません。修正テープなんて絶対ダメです。ちなみに金額欄を書き間違えた場合は新しい伝票に書き直しです。

チェック欄の記入もれ、なんていうのもよくありました。例えば5箇所あるチェック欄のすべてにチェックが必要なところを1箇所でもチェックがなかったら、手続きができません。お客さんが帰った後、いざ手続きしようと伝票を見たら記入がもれていて、お客さんに急いで電話してお店に戻ってきてもらう…というケースは珍しくありませんでした。というか、私もやったことがあります…

あとは、フリガナがもれている、印鑑の押し忘れ、マルの付けもれ、などなど…「それもダメ!?」と思うような細かい所まで事務規定でキッチリ決められています。

銀行事務は事務規定が絶対ルールでして、自己流なんてのは許されない世界です。ちなみにこの事務規定とやらは非常に膨大で、なおかつ読みにくいです。メッチャ重要な事がさらっと一文でしか書かれてないこともあります。知らなかったり分からない事務手続きをする際には、この事務規定を目を皿のようにして読み込まないといけません。お客さんを待たせている時にイチから読まなきゃいけないとなると、非常に焦ります。

ですがイレギュラーな事務の場合、規定に書かれていないこともよくあります。そんな時は上司に相談したり、本部に電話で聞く必要があります。そして、この事務規定はしょっちゅう改定されます。法改正(例えば消費税8%→10%へ変更など)の影響を受けたり、新商品の発売に伴った取扱い事務が増えたりと改定理由は様々です。事務担当者は常に最新の規定をチェックし、それに則った手続きを取らないといけません。当然覚えることは多くなります。

銀行ではお金に加えて個人情報も扱うことから、モノの扱い方についても厳格なルールが存在します。離席する時は個人机の施錠とパソコンの画面ロックを忘れずに。顧客情報の書かれているメモやファイルなどを机上に放置しない。個人情報の入っているキャビネットは帰る前に必ず施錠する。パソコン上の指定フォルダ以外の場所に顧客情報を含むファイルは保存してはならない。などなど…これまたとんでもない量の規定があります。これを守れていないと、店内検査や監査(銀行内の監査部が支店に対して抜き打ちで行う検査)で減点を喰らいます。

私が銀行から銀行以外の業種に転職した時は「え、事務ってこんなにユルくていいの!?」と驚きました。銀行にいる当時はそれが当然のルールでしたが、銀行の外に出て銀行事務の厳しさを実感することとなりました。

大変だったことその② 時間外の業務が多い

定時を9時〜17時としたとすると、その時間内に収まらない仕事というのが多かったです。

まず、9時というのは銀行が開く時間ですから、開店の準備はその前に済ませておく必要があります。たとえ台風が来ようと、大雪が降ろうと、何がなんでもお店を開けなければなりません。私の銀行では主に新人さんが朝の準備を担当していて、8時前には支店に来ていました。他には、開店前の朝礼や勉強会、日経新聞の読み合わせをしているところもありました。

17時の定時後も、勉強会が開催されることがよくあります。先程書いたように法改正やら新商品やらがしょっちゅう出てくるので、それに合わせた勉強会が多かったです。今はコンプライアンスも厳しく問われる時代なので、コンプライアンスへの理解を深める勉強会もあったりします。

勉強会の他には、会議も多いです。支店内プロジェクトのメンバー会議やら、若手社員中心の会議やら、事務品質向上のための会議やら、課長会議やら。その支店の支店長や次長の意向次第で、会議の頻度や時間はかなり変わります。会議のための会議、みたいなのをやってた時も…。今はどうか分かりませんが、業務外の会議もありました。支店の表彰パーティーやクリスマスパーティーの打ち合わせとか。私の銀行では新人さんは「新人芸」といって出し物をしないといけなかったので、私も新人時代は業務後に支店の会議室を使って必死にダンスの練習をしてました。

平日以外の土日祝日でも、土曜営業の日は担当者が持ち回りで出勤していました。これは出勤扱いになるので、お給料に換算されるし平日に振替休日も取れます。しかし、これとは別に銀行主催のイベントや組合会議などに参加しないといけない日もあったりします。こちらは大体「業務外」の扱いになるので、言ってしまえばボランティアです。ただ、普段話さない先輩と話すいい機会だったり、上司の意外な私服姿を見ることができたりと、楽しい面もありました。

大変だったことその③  常に勉強が必要

とにかく覚えること、勉強が必要なことが多かったです。早くは入社前の内定者時代から、銀行や金融の基礎知識についてのテキストが配られ、確認テストや研修がありました。

取得しなければならない資格も多いです。宅建やFPや証券外務員や生命保険・損害保険関連の資格に加え、銀行業務にまつわる検定というものがいくつも存在します。代表は銀行業務検定で、これは銀行員のための資格です。試験会場に行けば周りはもれなく銀行員。通常業務と並行して、これらの資格試験の対策もする必要があります。出社前の朝の時間や、帰宅後の時間、土日休みを勉強時間にあてたりします。業務にもまだ慣れないのに必須資格もたくさんあった新人の頃が一番大変だった気がします。勉強嫌いの私にはなかなかツラい日々でした。

そして、覚えた知識というのは常に最新のものにアップデートしていかなければなりません。本部からの通達を毎日こまめにチェックして、規定をスミからスミまでよ〜く読み込み、古い知識を上書きする。「昔はこうだった」が通用しません。



大変だったこと…というワケでネガティブなことが中心になってしまったので、よかったこともありますよー!という話をまた後日書きます。