[読書]隠密捜査8 清明 今野敏

隠密捜査のシリーズは全て読んでいるが、最新刊(といっても2020年1月発行ですが)については未読だった。

このシリーズは、物語の面白さももちろんだが、警察という舞台を借りながら、組織運営の在り方や、リーダーとしての振舞い方、部下の人心掌握を行っていく姿が描かれているところに魅力を感じる。もちろん、主人公の竜崎の魅力が大きいのだが、伊丹の存在も見逃せない。今回は、伊丹からも竜崎を心の支えにしていることをうかがわせるようなコメントもあり、それを含めて、芯がしっかりしている竜崎のおかげて、周囲が明確に自分の考えをまとめることができるようになっていることがわかる。

影響力がある人というのはこういう人のことだと思う。

今回から、神奈川県警のメンバーも新たに描かれているが、中でも神奈川県警本部長が好感を持てるように描かれている。

自分の仕事に誇りを持つ人々の話であり、すがすがしい読了感が味わえる。自分の仕事の誇りを持つためには、信念を持って、それに従って動く、ということが必要だ、ということだろう。それぞれの立場の人が、立場としての責任と権限を明確に理解して、それに沿った説明責任を果たす感情的なしこりを感じることなく働くことができるのだろうと思う。

昇進した竜崎が、自分の権限を意識しつつ、部下のやり方にも敬意を払う、という部分を読むと、昇進すると見える景色が変わることがわかる。

いつまで神奈川県警刑事部長でいるのかはわからないが、今後の活躍を期待したい。


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