21年8月8日 東京五輪マラソン観戦記
東京五輪2020・・・東京都が開催地に立候補したのは11年、東日本大震災の混乱の最中だった。「復興五輪」と言うキャッチフレーズが腹立たしく、「被災地が復興を目指しているのに、東京五輪が決まったら人・物・金が首都圏に流れてしまう」と危惧し、誘致から猛反対であった。13年9月に東京開催が正式決定したときも怒りしかなかった。その後、建築資材は高騰し、人件費も高騰し、まさに復興の足を引っ張る五輪となった。
19年9月、MGCでマラソン日本代表の男女各2名(中村匠吾、服部勇馬、前田穂南、鈴木亜由子)が決まった。MGCは東京五輪の夏のマラソンのデモも兼ね、コースもほぼ本番通りで開催された。それなのにその翌月・・・いきなりIOCが「東京五輪のマラソンは札幌開催としたい」と表明。11月に決定した。小池都知事の「合意なき決定」の恨み言が空しい。ま、「東京五輪自体が国民の合意はないわい!」と思った次第。この辺りからIOCの強権、日本の無力を感じたのかな。
20年1月、新型コロナ禍が世界を襲う。日本でも2月中旬からあらゆる規制が始まった。
その中で、3月1日東京マラソンで大迫が男子の、8日名古屋ウィメンズマラソンで一山が女子の、最後の一枚の切符を勝ち取った。
しかしながら3月24日、東京五輪の1年程度の延期が決まった。「延期?中止じゃないのかよ」との感。
21年7月、東京五輪が開幕。新型コロナ禍で東京都は緊急事態宣言下。なんだかなぁ、IOC・・・。
「新型コロナに免疫はできていないが、緊急事態宣言には免疫ができた」という戯言に強く共感できるのが悲しい。
8月7日、女子マラソン開催。スタート予定は7:00だったが、前夜に6:00スタートと前倒しが決定した。すでに就寝中の選手もいたという。考えられんな!「暑さ対策、アスリートファースト」と言われたら表向き反対はできないのだろうが、それなら東京五輪自体に無理があったのは明白。なんといっても誘致の際に「この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」と謳っていたのだから。
翌8日、男子マラソン開催。男子は予定通り7:00スタート。前日に比べて少し気温が低いからとのこと。本当にIOCは場当たり的だな。
結果は日本人入賞男女各1名、優勝者は男女ともケニア勢。妥当なところでしょう。
以下各論。
◆入賞者
女子・一山8位、男子・大迫6位。ともにMGCではなく最終切符を取ったランナー。「MGC敗退の悔しさをバネに意地を見せた」というところだろう。今、世界のマラソン界はアフリカ系ランナー、特にケニア勢が席巻している。その中で日本人の入賞はお見事!開催国のメンツを保ったというところか?
女子2位もケニア。3位はアメリカ、白人のメダル獲得は大健闘だろう。男子2位、3位はオランダ、ベルギー。ただし共にルーツはソマリアで、2人は練習も一緒にしていたそうである。それを後から知り「だから2位のランナーが3位のランナーを鼓舞していたのか!」と腑に落ちた。そういう話はライブで中継してほしいよな。2人してラスト100mでケニアの選手を振り切ってのメダルゲットはお見事でした。
◆暑さ対策
日本選手の特別な暑さ対策として目に付いたのは、大迫が氷入りのキャップを被り、かつ頻繁に交換していたこと。ほかには服部が両手に氷を握りしめながら走っていたくらい。日本の暑さ対策ってそんなもの??東京五輪2020で日本の技術を結集した暑さ対策が披露されると思っていたのだが・・・。
大迫のキャップは競歩チームがメーカーと共同開発したものという。マラソンチームは、東京五輪が決まって7年、何をやっていたのだろうか?競歩よりマラソンの方が人財も金もありそうだけど、科学的な対策が見られなかったのは非常に残念。
アームカバー、ネッククーラーをしている選手が国内外、男女を問わず、いなかったのも意外。暑さ対策としては非常に有効なギアだと思うのだけどね。ランシャツだって工夫の余地はある。女子のセパレートのようにはできなくても、ランシャツの裾をランパンの腰の高さでチョン切れば腰から空気が入って涼しいのよ!素人ランナーの方が余程工夫しちょるわい。
◆テレビ実況中継と解説
女子は日本テレビ、男子はNHKが担当。
日本テレビの中継はひどかった。「実況」中継じゃないんだよね。アナウンサーが「鈴木が遅れていますね」って言っている映像を見たら、その鈴木のすぐ後ろを前田が走っているのよ。「おいおい、さっきまで前方を走っていた前田が遅れている方が深刻だろ!同じ日本のユニフォームを着ているランナーが前後して走っているのに、なんで気が付かないのか?映像見てないのかよ!」って思ったわ。解説者の増田明美は「細かすぎる解説」とかおだてられ調子に乗り、実況を解説するのではなく、自らが仕入れた小ネタ話を披露するタイミングを見計らっているのだろう。日本テレビのアナウンサーは絶叫するタイミングを窺っているのかな?箱根駅伝中継でも「令和初の箱根駅伝、ここ権太坂で、今、13位が入れ替わりました!!」ってな風に絶叫するのが日本テレビのやり方だもんな(笑)。NHKアナが同じシーンを実況したら「後方の権太坂で〇〇大学が13位に上がったそうです」って淡々と流すだけだと思う。
その後、一山が遅れたときも「実況」中継はなし。しばらくしてから「ここは頑張って」って「素人かよ!」と増田明美とアナウンサーに突っ込みたかったわ。
NHKはその点は心配なし。ただ解説の高岡寿成は浅かった。大迫のキャップ交換を「乾いているキャップに換えているのですかね?」だと!暑さ対策のキャップなんだから濡れている方が効果的に決まっているだろ!
前記の男子2、3位のランナーの件も何も触れず。レースの最中に「ソマリア出身の2人が力を合わせてケニアの1・2フィニッシュを阻止すべく励まし合っています」なんて解説があれば外国勢同士のメダル争いももっと盛り上がったことだろう。高岡は元マラソン日本記録保持者とは言え現在も実業団カネボウの監督だから、他のランナーの取材はしていないのだろう。
増田明美は細かすぎるし、高岡寿成はネタがないし・・・・有森裕子と金哲彦あたりで解説をしてくれれば良かったのにな!
◆コース
「前半10km過ぎまで」と「北大から赤レンガ旧道庁まで」は北海道マラソンのコースとほぼ同じ。北海道マラソンを3回走ったことのある我が身にとっては懐かしかった!
北海道マラソンの開催日は例年8月最終日曜日。私の出場した3回とも快晴で25℃前後だった。五輪マラソンより条件は良くても真夏のマラソンであることは同じ。コースは北海道マラソンの方が厳しいので、暑さに耐え抜いて38kmで北大キャンパスに入ると、深い緑に蓄えられた空気が冷んやりと感じたもの。そこを五輪では3回通るのはうらやましい。
テレビ中継を見ていて「北大の緑が深くなっているな」と思ったのだけど、よく考えたら通過時間が違うのだった。私が北海道マラソンを走った時の北大突入時間は12:30過ぎ、太陽はほぼ真上にあったのだ。「東京五輪はまだ午前中、陽射しが低いから緑が濃く、深く見えたのだ」と理解した。
選手が2度渡った豊平川はやっぱりきれいだった。20年前に札幌に住んでいた時はあの河川敷から真駒内公園周回が私の練習コースだった。当時は北海道マラソンにチャレンジするほどの距離は踏んでなかったから、前座の10kmレース(真駒内公園発着豊平川河川敷がコース)に出ていたのだよな。その後50歳を過ぎて再度北海道勤務になり、北海道マラソンを3度完走できた次第。いつかもう一度走ってみたいな!
今回の五輪コースが北海道マラソンのコースにならないかな?北大を3回走れるのは気持ち良いだろう。いや、待てよ?あのような10km3周回だと、SUB3ランナーに周回遅れを喰らう訳か!仕方ないこととはいえ、なんか悔しいな!今までと同じコースで良いや!(笑)
◆日本選手
前記の通り、一山、大迫の入賞はお見事!大迫のピアスは嫌いだけどね。少しでも負荷を小さくするのがプロだと思う故。MGCの時のようにネックレスが口にまとわりついていないだけまだマシだったかも。
女子では前田推しだったけど、体調を合わせられなかったようね。鈴木は暑さに弱いから上位は無理だと思っていた。
男子では(大学駅伝で駒澤大学ファンなので)中村を応援していたが、故障上がりで最初から遅い集団に入っていたのは残念。服部は最後ふらっふらで完走したのには感動。大和魂を感じたけど、このダメージは相当尾を引くと思う。再起不能とまでは行かなくても、下手したらリカバリーには年単位でかかると思う。しっかりとケアしてゆっくり休養してもらいたい。
◆沿道の応援
多かった。密だった。大きな声援も飛び交っていた。なんだかなぁ。
◆ペースメーカー
やっぱりペースメーカーがいないレースの方が観ていて面白い。ペースメーカーが引っ張ている間はレースじゃないもんな。
◆東京からパリへ
3年後なんてすぐだよね。MGCからもう早2年経つのだから。パリでも日本選手の入賞を期待したい。
以上
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