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私を汚い用水路から掬い上げてくれた人は、美しかった。

どうも、はじめまして。
この記事は、一介のアラサーが『美しい彼』という素晴らしいドラマに救われたお話です。
自分自身の心の整理のために、そして今の感情を忘れないために、記します。

作品のネタバレを含む可能性があります。また鬱の表現が出てきますので、苦手な方や心に余力のない方はブラウザバックされることを推奨いたします。

『美しい彼』とは、こちらですね。
私はU-NEXTで視聴しましたが、どうやらNetflixでも配信が始まるようです。



それは完全に、偶然だった。でも、必然だったのかもしれない。
今年、2023年の7月中旬、初めて『美しい彼』のドラマを見た。自分の周りのフォロワーさん達はタイムリーに放送を見ている方が多かったので、当時とても良い作品だとタイムラインが賑わっていたのを覚えている。ただ、私はその時一切見ようとは思っておらず、マイリストに登録していただけだった。
見始めたきっかけは何だっただろう。正直なところ、単純に時間ができたことが大きかった。そう、仕事を辞めたのだ。そして仕事を辞めた理由の一つが、鬱になったことだった。

元来、私の興味関心は国外に向いていた。もう10年以上K-POPアイドルを追いかけていたし、パンデミックにより韓国遠征ができなくなってからは、タイドラマを鑑賞して過ごしていた。だから日本の曲を聴くことなんてなかったし、テレビドラマでさえ家族が見る番組を一緒に見るくらい。日本のエンタメからはかなり遠ざかった生活をしてきた。

そんな私が、鬱になった。鬱になって一番辛かったことは、今まで楽しめていたことでさえ、何一つ楽しく感じなくなったことだった。それがどれ程の衝撃だったか。一番熱中していた時なんて、普通に働きながら毎週末韓国に行っていた、そんな私が、だ。
心が動かないのだ。大好きなアイドルのステージを見ても、お気に入りのドラマを見ても、今まで心躍っていたもの全てが、灰色になった。好きだった推し事が苦痛になった。それに周りの人たちが盛り上がっているのを見ることも辛かった。今までであれば同じテンションになれたのに、なれない。いいな、すてきだな、そう思ってもすぐに心が平坦になる。無になる。耐えられなかった。

そしてもう一つ、外国語に対する許容範囲が一気に狭まってしまった。脳が処理しきれなくて映像コンテンツを見続けられないのだ。今までであれば、韓国語やタイ語のコンテンツを日本語、もしくは英語の字幕を読みながら楽しむことが当たり前だった。10年以上そうやって推し活をしていたから、頭を使っている感覚がなかった。
それなのに、ある時から字幕が読めなくなった。音も頭に入ってこない。字幕を読みながらドラマを観ることができなくなった。観ようとすると、ものすごく疲弊するのだ。好きなものに触れて心を癒すことさえ、叶わなくなった。

安心していただきたいのは、今はもう発症から約2年経ち、9割近くそれまでと同じ生活ができていることだ。幸いにも早い段階で病院に行けたことと、心が砕け散る前に、持病の悪化から身体の方が先に駄目になってくれたことで、早期に療養に入れたからだと思っている。
休職を挟みつつ続けた仕事はとても好きだったけれど、自分の心を十分に休める働き方ができないと判断し、復帰してしばらく働いたものの心が落ち着いてきたタイミングで退職してしまったのだが。今は余暇を友人と楽しんだり、ちょっとした趣味を見つけてみたり、ごくごく普通の日常生活を、問題なく送れるようになっている。


ただ、好きなものを心から楽しむこと。
その力だけは、2年経ってもなかなか回復しなかった。

そんな私が出会ったのが、『美しい彼』だった。
本当に気紛れで見始めた。今までの私は、言語が理解でき過ぎる日本語のドラマはどうしても台詞がこそばゆくて、見ていられないと思っていた。でも、また充実した生活に戻りたいと思ったとき、私にとってエンタメは外せない要素だった。今までどんなに辛いときも、大好きで大切な推し達に助けられてきたから。
また前のように、心ときめく瞬間を感じたい。ああ、生きていて楽しい、そう思いたい。でも今まで大好きだったコンテンツを見て楽しむ体力がない。新しく積極的に何かを発掘する気力もない。だから半分体力作りのような感覚で、片っ端から日本のBLドラマを見漁った。BLドラマを選んだ理由は、単純に自分が腐女子だったからというのと、タイドラマを視聴していたので日本のBLドラマもオススメに挙がってきており、検索の必要がなかったからだ。

ドラマを見るといっても、じっくり観ることは難しくて、ベッドに横になりながら流している感じだった。最初、『美しい彼』を見たときもぼんやりと流れる画面を目で追っているだけだった。ただ、シーズン1の最後、理科室のシーンを見たとき、私は衝撃を受けた。

え、待って。
清居奏って攻めじゃないのーーー????

いやいや、どう見ても清居奏は受けだろ! と、今の私なら思うのだが、当時内容がうまく頭に入ってきていなかったので、私のずっと使われていなかった脳は『オレ様キング=攻め』『気弱そう=受け』という何とも安直な誤認識をしたまま、そしてそれを疑うことなく最終回まで見進めていたのだ。深く物語を理解する力が欠落していたし、その上、調べてみるとドラマが放送されていたころは鬱症状が一番酷く、休職するかしないか、そんなタイミングだったようだ。おかげでドラマの情報が何も入ってきていなかったし、記憶にもなかった。前情報ゼロ、完全なる初見状態だ。
だからもう、本当に驚いた。衝撃的だった。頭を鈍器で殴られたような感覚とは、正にこのこと。それまで流し見るだけで見返すことのなかったドラマを、一から見直した。観た。じっくりと観た。そして主人公である平良一成と、清居奏から目が離せなくなった。


久し振りに、心の奥の奥が、激しく揺さぶられた瞬間だった。


もう本当に、ただただ嬉しかった。どうしようもない感情が湧き上がってくる。惹きつけられて仕方がない、離れられない。
それを感じられたことが堪らなく嬉しくて、幸せで。正直、ちょっと泣いてしまうくらいに。

私はずっと、怖かった。これから先一生、この干乾びた心が大きく動くことなく、ときめくことなく、ずっとこのままつまらない日々を過ごしていくのではないかと、半ば諦めていたから。
『美しい彼』に魅せられて、世界が段々と色付いていって、温度を上げていくような感覚を覚えた。きっと、そのストーリーはもちろんのこと、平良一成と清居奏を演じてくれたお二方が、本当に素晴らしかったからだと思う。2年間、試行錯誤しても何も感じなかった心が、お二人の演技に、いや、あれはもう演技なんて言葉では言い表せられない。演じていると分かっているのに、本当に『平良と清居』が生きているようだった。そんなお二人の『平良と清居』に、心が動かされた。突風のように私の心を掻き回してくれた。きっと、このお二人でなければ、こうはならなかったと思う。
ドラマはシーズン1と2、共に何度も観た。映画も何度も観た。体力が付いてきてからは原作小説も読み漁った。昔からハマると一直線なタイプだったことを思い出した。そう、思い出せた。

灰色だった私の世界が、今、光り輝いている。
感謝してもしきれない。麻痺した心が、二人の心の機微に気付けるほどに回復してきている。

私が『美しい彼』に惹かれた理由として、前述したとおり、役者のお二人や作品自体の素晴らしさはもちろんなのだが、きっと文字を読む体力のなかった私にとって、小説ではなくドラマという映像作品であったこと。日本語のドラマであったから、辛いときは軽く聞き流すことができたこと。そして少しずつ、私自身の『何かを愛でる』体力が戻ってきていたことも大きいと思う。
もし、体力を戻そうと一番最初にこの作品を見ていたら、ここまでハマっていなかったかもしれない。救われていなかったかもしれない。
全てのタイミングが揃っていたから、私の心は大きく動かされた。そう考えると、この出会いは偶然であり、でも、どこか必然めいたものも感じてしまう私がいる。

『美しい彼』という作品に出会えて、本当によかったと心から思う。私は今が、堪らなく楽しくて、幸せだ。心が動き過ぎて疲れることもあるけれど、そのじんわりとした疲労感さえ、じっくりと噛み締めたい。

『平良と清居』
彼らはまるでキングのようだった。私のような一介の人間の意志なんて知らないというように、ずかずかと心の中に踏み入ってきて、野分のようにひどく荒らしていった。

でもそれが、私にとって最大の救いだった。

ああ、私を汚い用水路から掬い上げてくれた人は、
否、救い上げてくれた人は、本当に美しかった。




そして以下、余談ですが……

元来、受けと攻めであれば受け側のキャラクターを好きになりがちだった私は、清居奏というキャラクターを大好きになったんですよね。まぁ、これは優劣を付けたわけではなく、無条件に受け属性に魅かれてしまう一種の性癖みたいなものです。あと、昔から曲線の多いお顔が好きというのもあります。
そしてドラマや映画で物足りなくなった私は、キャラクターを演じてくださった俳優さんのことも調べるようになったわけですよ。有難いことに、平良と清居を演じてくれたお二方でのインタビューや映像がたくさんあり、キャラクターだけでなく、役者さんとして魅力的なお二人自身にも、惹かれるようになったわけです。そんな時に、見つけてしまったんですよ……


清居奏を演じた八木勇征さんが、『FANTASTICS from EXILE TRIBE』のボーカルとして歌っている映像を。

……ええ、そりゃもう、10年以上アイドルを推してきた私が陥落しないわけないじゃないですか。
演技が素敵だったから役者さんだと思っていたのに、まさかアイドル(と形容するのが正しいのか、日本のエンタメに疎いので分からないのですが)だっただなんて。しかも、私、今までストライクゾーンがすっごい狭い人間だったはずなのに、そのお顔立ちも、歌声(ここはかなり重要)も、人柄も直球ストレートど真ん中だなんて……

落ちるなって方が、無理でしょう?

そう、最近はもっぱらFANTASTICS from EXILE TRIBEさんにどっぷりハマり、八木勇征さんだけでなくメンバー皆さんに癒されながら、毎日楽しい日々を過ごしております。

あーー! ヲタクって、やっぱり最高だなーー!
生きるの、楽しいーーー!

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