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Our Story #4 - 1号店オープンまでの道のり

2013年 日本発の本格スムージーブランド「F&P」 (FICO & POMUM) 立ち上げのメイキングストーリーを追う第4回。

今回は、1号店オープンまでの険しかった長い道のりを明かしていきます。
語るも恥の失敗談は今ではもう笑い話? …でも当時は困難の連続でした。

それは、こんなエピソードです。
・・・


いつまでも決まらない物件


いくらコンセプトが優れていても、
商品やオペレーションの完成度が高くても、
場所がなければお店を開くことはできません。

飲食店の明暗は、立地で9割が決まるとも言われるのです。


2012年、F&Pを創業した西野は、
ひたすらに出店候補地となる物件を探していました。

これから作ろうとしている店舗の構想は1枚の企画シートにまとめられ、
それだけを武器に、地場の不動産屋さんや商業施設のディベロッパーさんに飛び込みをかけていきます。


IT業界出身の西野にとっては、
飲食業も物件探しも、経験のあるものではありません。

無数の物件情報から目利きができるようになるには時間もかかりました。

そのうえ、未経験ということでは信用もなく、
不動産業界の専門用語も知らない中で、
「未だ形のないもの」を売り込むのには骨が折れました。

なにせ当時は、「スムージー」と言ってもさほど言葉が通じる時代ではありませんから、毎回そこの説明から始まるのです。

「いい物件」の情報は簡単には表に出ませんし、獲得の競争も激しい売り手市場です。

出店交渉が最後まで進んでも、最終的に大手企業との政治競争になるとひっくり返されてしまい、幻に終わってしまった候補地もありました。


出店場所は決まらなかったにも関わらず、すでに採用されたメンバーだけは取り残されてしまいました。

物件を探し始めてから、1年半以上の月日が流れました。
開業前の人件費はかさんでいき、焦りばかりが募っていきました。

しかし、一向に物件は決まりませんでした。

西野は、そうして集まったメンバーで改めて創業チームを結成し、企画開発をともに1からやり直すことを決意します。



渋谷で200人のアンケート調査


新しいチームは事務所をラボとして、まだ完成度の低かったスムージーメニューとオペレーションのリバイス開発に着手しました。

「日本にはない本格スムージー」は、創業メンバーチームによって改めてレシピやマニュアルに落とし込まれていきます。

一定の完成度に達したとき、メンバーたちは「商品を試してみたい」と思い立ちました。

そして実施されたのが、「会場試飲調査」です。

渋谷のテスト会場で、試飲を伴う大規模なアンケート調査が行われました。

2日間にわたり、事前リクルートや該当キャッチで集めた200人の消費者を対象として、試飲テストを実施したのです。

それは、新しいスムージーの商品としての評価のほか、スムージーに対する市場認知度、イメージなどの意識調査、生活習慣アンケートなどからなる、かなりの深いマーケティング調査でした。

こうして、2013年時点の日本国内における「スムージー」と消費者を結ぶ実態が、前例を見ないような貴重なデータとして得られたのです。


すべては海からはじまった


さて、マーケティング調査や商品テストの次は、オペレーションのテストです。

2013年の夏、創業チームがスムージーのプロトタイプテスト販売を行ったのは意外にもなんと、鎌倉・由比ヶ浜の「海の家」でした。

当時、由比ヶ浜は若い人たちが多く集まる海水浴場で、大手メディア系やレコード会社さんたちが出店競争して、おしゃれな海の家がこぞって進出していたのです。


なかなか正式な出店物件も決まらないメンバーたちは、
知人の伝手を頼りに、 ビーチハウスの一角でコラボ店舗を出させてもらい、一夏の間お世話になることが決まります。

ブレンダーを背負い込んで販売したこの時のラインナップは

トリプルベリー Triple Berry
トロピカルパッション Tropical Passion
グァバピーチ Guava Peach

という3種類で、それぞれにオプションで MALIBU (ココナッツリキュール) をプラスすることができる、というものでした。

思いっきりビーチ仕様に寄せていますよね。

フィコポム史によると、このビーチハウスプロジェクトが、1番最初にF&Pのスムージーを売った記録となっているのですが・・・

F&Pが始まったのが実は海の家からだった、というのは今ではなかなか想像できないトリビアですね。



ついに決まった1号店と幻の看板


こうした経緯を経て、2013年夏の終わり頃には、ようやく待望の出店候補地が決まっていきます。

麻布、恵比寿、六本木一丁目、晴海、神谷町・・・

1号店の候補地には、東京の一等地が名を連ねていましたが、
最終的に決まったのは、東京駅八重洲口の「グラントウキョウノースタワー 17F ロビー」でした。

都会で働く忙しい人々に、自然からの恵みを届ける。

そのコンセプトにふさわしい東京のど真ん中に、F&Pの1号店は晴れてオープンすることになりました。


さて、F&P立ち上げ時の店名である「FICO & POMUM JUICE」 は、当初、「FICO & POMUM JUICERY」を屋号案として出店準備が進んでいました。

そして、グラントウキョウノースタワー店のオープン前1ヶ月を切ったところで、悲劇は起こります。

ブランドネームの「JUICERY」がすでに第三者の個人によって商標登録されている事実が発覚し、ほんのタッチの差で横取りされてしまったのです。

商標登録では、出願中の約半年間は調査をしても全く表に引っ掛からない潜在期間があるため、周到に事前調査を行っていても、このような偶然の事故が起こりうるのです。

代理人を通して慎重に交渉が行われたものの、
結局、急遽ブランド名を「FICO & POMUM JUICE」に変更することを決断し、
今まで準備をしていたブランドロゴ入り制作物は、オープン直前にして全て訂正や作り直しをすることに・・・

スリーブ、パンフレット、ノベルティグッズなどがオープン前に夜な夜なの訂正作業に追われました。

すでに取り付けていたお店の看板までもが、なんと一度取り外して作り直したものに取り替えることになりました。


そしてそうした制作物の一部は、今もお蔵入りの秘蔵品として眠っているとか。

しかしそれはまた、いつか別の機会にでもこっそりとお見せすることにいたしましょう。

まだ世にない新しいものをつくりだす。誰も知らない何かを立ち上げる。
という行為は、いつもこうした苦労や困難なしには成し得ないものだとは思いますが、

いやはや、開業にまつわるこんなトラブルは、できればもう起こってほしくないものですね…



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