見出し画像

演奏者への本番前事前説明会

 本番の1~2週間くらい前に団員向けに演奏会当日のスケジュール、役割分担、諸注意などをするための本番事前説明会(ミーティング)を開く。演奏会前日では遅い。説明をして質問を受け付ける中で、万が一修正点が発見された場合、前日では軌道修正ができない。1週間前なら不明点を再度ホールに問い合わせをすることもできるし、軌道修正のために考える時間もある。集合時間、解散時間、持ち物、服装などについては準備の都合もあるので1週間前ではなくできるだけ早くにアナウンスしておいた方がいい。特に大学1年生で初めてステージに乗る人は黒の礼服を準備しなければならなく時間を要する。

 演奏会当日のタイムスケジュールなどを説明するために資料(当日マニュアル)を作成する。いい資料が作成されれば、その資料(当日マニュアル)に沿って説明するだけとなり、説明を受ける側としても理解しやすい。また、本番当日は資料(当日マニュアル)に沿って行動すればいいようにしておくべきである。資料(当日マニュアル)には次のような事項を記載すべきである。

 ・集合時間、集合場所、解散予定時間
 ・服装、持ち物
 ・昼食
 ・楽屋の割り振り
 ・タイムスケジュール
 ・ホールのフロアマップ
 ・役割分担、各役割の仕事内容
 ・注意事項
 ・当日連絡先(緊急連絡先)

 集合場所については、詳細に説明しないとホールの裏口(楽屋口)はわかりにくいものであるので迷子になる人がでる。単に「ホール集合」と書いてもわからない。ホールの正面玄関なのか、楽屋口(裏口)なのか、ホール内なのか、具体的に資料(当日マニュアル)に記載する必要がある。もし、楽器を当日朝トラックに積み込むのなら、楽器積み込み担当の人の集合場所は学校になる。その後、ホールに向かうことになるが、ホールに遅れて到着する場合はどのようなルートで入るのかわかるようにしておいた方がいい。ホールのセキュリティーは緩いところから厳しいところまである。緩いところでは表側も裏側も開館時刻にすべてオープンにしてしまう。厳しいところでは、楽屋口の1か所だけを開けそこで名簿チェックということもある。裏口(楽屋口)はわざとわかりにくくして一般のお客さんが間違えて入ってこないようにしてあるため、初めて利用する演奏者にとっては探しにくいこともよくある。集合場所と合わせてホール内への入り方についても詳細な説明が必要である。

 解散予定時間は生徒から保護者に知らせるためにもアナウンスが必要である。演奏会終了後の保護者との待ち合わせについても団内で取り決めておいた方がいい。小学生や中学生の学校では、演奏会終了後、保護者と帰宅する人も大勢いる。スクールオーケストラの場合、楽器を保護者に持って帰ってもらう人が多いからである。また、花束や贈答品も保護者に持ち帰りをお願いし演奏者自身は身軽になることも多い。出演者と観客(保護者含む)の面会を認めていないホールもあるので、その場合はホール敷地外(最寄り駅など)で会うことになる。

 服装については、可能な限り早くに知らせるべきである。中学生や高校生なら制服で済むかもしれないが、ステージ用に特別な服を準備することもある。制服が学ランの場合はステージ上の服装はブレザーに変更することをお勧めする。学ランではバイオリンやビオラが楽器を保持することができないし、管楽器も顎を引いた状態で演奏しにくい。女性もステージ用にスカート丈を直さなければならないことがある。流行の制服のスカート丈ではステージに乗るには短すぎる。ステージは客席よりも高い位置にあり、客席最前列の人の目線の高さはステージの床の高さとほぼ同じである。自分のつま先の高さにお客さんの目線があることを理解したうえで服装を決めてほしい。

 大学一年生は演奏会を機に黒の礼服や黒や白のブラウス、黒のロングスカートを購入するといい。特に男性は、卒業しても結婚式や葬式で黒礼服を使うことになるので、そのつもりで黒礼服を選ぶといい。また、黒か白の蝶ネクタイ、あるいは白の棒ネクタイも準備することになる。団によりどのタイプのネクタイを使用するかが異なるので注意が必要である。もしオーダーメイドのスーツを購入するなら、採寸時に楽器を持っていくか楽器の構えをした状態での採寸をリクエストするといい。現在は細身のスーツが流行っているが、それだと弾きにくいことがある。

 持ち物は楽器と譜面さえあれば通常は問題ない。演奏会に合わせて何かイベント的な催し物をする場合は、それに合わせた持ち物が必要となる。友達をたくさん演奏会に招待した人は、花束や贈答品をもらえる可能性が高くなるので、それらを持ち帰るためのカバンや袋を準備しておくといい。演奏会時の忘れ物で多いのが、洋服関係の小物である。男性だとベルトやネクタイを忘れたり、女性ではヘアピンがなくて右往左往したりしている人を時々みかける。男女ともに多いのが靴の忘れ物である。貴重品を本番中にステージ上に持ってでるわけにはいかないし、盗難の心配もあるので財布の中身は最低限の方がいい。

 昼食は、各自で持ってくるか、団で宅配弁当を手配する。最近はコロナの影響と財政難とで各自持参の方が多くなっている。ホールの近くにコンビニがあったとしても、時間の制約で買いに行けないことが多いし、楽屋口から出るのに手続きを踏まなければいけないこともあるので、持参する方が賢明である。飲み物は多めに準備した方がいい。ホール内は乾燥しているし、ひな壇の設営などで動き回っていると汗をかき喉が渇く。

 社会人のアマチュアオーケストラにもなればホールのフロアマップが添付されることは少ないが、初心者が多いスクールオーケストラでは資料(当日マニュアル)につけておいた方がいい。フロアマップを事前に見ておき、当日迷子にならないようにある程度イメージを作っておくべきである。ワンフロアに楽屋口、搬入口、楽屋、舞台、客席前方扉があればそんなに迷子にならないが、上下に分かれていると混乱をきたす。特に、楽屋から下手あるいは上手のどちらに行けるのかを把握しておかないと、舞台袖に上がってからでは反対側に行けないことがある。学校みたいに上下の階が同じ構造になっていれば混乱しないが、どのホールも上下の階で景色が全く異なる。また、舞台と客席に段差があり、客席が傾斜しているのも混乱の原因である。傾斜によりどこが1階でどこが2解なのかわかりづらくなり混乱する人が多い。ホールがビルの2階に入っている場合、ビルの2階が1階席で、ステージの下の奈落がビルの1階というようなこともよくある。

 役割分担や仕事については、かなり詳細な説明が必要である。それぞれの係にわかれて各係の長が個別に説明するのでもかまわないが、お互いに何をしているのかを把握するために全員に対して全部の係の説明をした方がいい。

 演奏会終了後の流れについても忘れずに説明しなければならない。一般的には、お客さんが客席内から出払うまでの時間に楽器を片付け、お客さんが客席からいなくなった頃を見計らってステージの片づけとなる。ステージの片づけと同時に大型楽器をトラックに積み込む。その他、楽屋の片づけもあるし、各自の着替えもしなければならない。それらのことを30分から1時間の間に終わらせなければならないので、想像以上に慌ただしい。これらの片づけの中で受付の片づけがどうしても最後まで残ってしまう。お客さんがなかなかにロビーから動いてくれないからである。大きな声で呼びかけるのも興ざめである。そういう場合は、お客さんにお帰りくださいとアナウンスするのではなく、お客さんと話している団員に声をかけるか、ロビーの電気を徐々に消してしまうとお客さんも察してくれる。受付の荷物をトラックに積み込んだのを確認して、トラックの出発となる。トラックが出発する前には、主要なメンバーに声をかけて忘れ物がないか確認してから出発した方がいい。意外と積み忘れの物がある。

 注意事項の説明は団からの注意事項もあるし、事前打ち合わせでホール側から指示された諸注意の伝達もある。説明をしおわったら、団員から疑問点を聞き出すことも重要である。全員が当日の流れを理解できていれば、当日の準備や片付けの時間が短縮される。逆に当日右往左往してしまうとステージリハーサルの時間が短くなってしまう。

 当日に向けた事前説明会が終わると、そこから一気に本番モードとなる人が多いのではないだろうか。私もその一人である。風邪をひかないように生活自体を節制するようになるし、天気を毎日チェックするようになる。スケジュールやマニュアルは全て暗記するために何度も見返し、頭の中で様々なことを想定したシミュレーションも行う。初めてステージに乗る人は、説明会から当日に向けて徐々に緊張が高まるものである。この時期に、本番に向けて楽器を磨く人も結構いる。事前説明会はそういう作用もあるので、本番に向けてお互いにいい方向に動けるようになってもらいたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?