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夜間清掃員が見た某テーマパークの裏側~人類が娯楽を追い求めていった先の未来は~

私は現在某テーマパークで夜間清掃員をしています。

どこのテーマパークかって?
それを言うとね、私消されちゃうかもしれませんから……。

私はゲーム業界から清掃業に転職しました。
正直、最初は「非正規雇用の夜間清掃員」になったことに劣等感を覚えていました。社会的地位の低さを感じていたんです。
※いまは清掃員である自分に誇りを持っていますし、現役清掃員の方を尊敬しています。

世界中から観光客が来るようなネームバリューのある場所で働けていること
は、そんな劣等感をやわらげてくれました。
清掃の仕事も肌に合っていて、私はこの場所で働くことが結構好きでした。

地球にやさしい生き方をしようと思うまでは。

使っている薬剤に「水生生物に毒性」って書いてあるんだけど!?

ふとあることに気づきました。

「自宅で使う洗剤は自然由来のものに買い替えたけど、仕事で使っている薬剤って結構やばいんじゃ……」(顔面蒼白)

さっそく調べました。
現場で使われている薬剤には必ず取扱説明書みたいなものがあって、それを現場に設置する義務があります。
分厚いし字も細かいし難しい言葉がゴチャゴチャと並んでいるので現場清掃員も責任者もマネージャーもろくに読んでいないのが実情です。実際私もパラッと目を通したことがあるだけでした。

改めて自分たちが使っている薬剤の説明を見てみると、

  • 水生生物に毒性

  • 吸引すると生殖能に障害の恐れ

  • 反復ばく露で肝臓に障害の恐れ

おい!!!(怒)

「水生生物に毒性」がある薬剤はトイレ清掃でガンガン使って排水しています。
「吸引すると~」のやつは、なんとスプレーボトルに入れて使っています。

清掃業に限らず現場で仕事する系の職全般に共通することですが、現場は安全第一であることが求められます。
何なら社訓にも「安全」の言葉があります。

こんな薬剤使っていてどこが安全なの!?

私は職場にある薬剤を使うことをやめました。
水できれいになるところは水だけで。というかもともと過剰なんです、清掃の仕方が。
どうしても洗剤必要だなという場面では、自宅から安全な洗剤持ってきてこっそり使ってます。※職場的には完全にアウトです。内緒だよ♪

提案書を作ってみたけれど……

「私ひとりが薬剤を使うのをボイコットしたところで、このテーマパークからやばい薬剤が排水され続けるのは止められない」

「変えなければ……気づいた私が呼びかけなければ……!」(使命感)

パートタイマーの清掃員に過ぎない私ですが、現場を変えるために提案書を作ることにしました。

調べてみると業務用の薬剤でも自然由来のものがあって、生分解性も公的な機関で保障されているものが見つかりました。すばらしい製造会社もあるんです!
「この薬剤に変えませんか?」という内容で提案書を作成。
「環境汚染が~」なんて言っても通じなさそうなので「従業員の安全のために~」という切り口で。

マネージャーに提案書片手にプレゼンし、提案書を渡しました。
反応は悪くなかったです。
マネージャーに薬剤を変える権限はないので「(さらに上の上司に)提案書渡しておきます^^」「どうもありがとう」と、快く提案書を受け取ってくれました。

とりあえず私にやれることはやった。あとは吉報を待とう。

数日後。
プレゼンしたのとは別のマネージャーが私のところにやってきてこう言いました。

「あなたが提案してくれた薬剤なんだけど、調べたら値段がいま使っているやつの5倍するんだよね~^^;」
「使う薬剤って〇〇さん(クライアント)に許可取る必要があって~……」(※うちは外部の委託会社)
「あ、でも変えられないか上とちゃんと掛け合ってみるから! ほら、いま使ってる薬剤って白残りするじゃん? 目詰まりもするし。そのへん説明して変えられないか交渉してみるね!」

…………。

地球環境や従業員の安全より金か。そりゃ会社だから経費について考えなきゃいけないのはわかるけど。

私は「従業員の安全のために」という切り口で提案したのに、なんでか「白残りするから、目詰まりするから」っていう機能性を理由にされてるし……。

提案書を渡してから3週間が過ぎました。まだ返事はありません。
お盆休みで社員が休んでいたのもあるし、組織ってどうしても動くのが遅い。
こうしているうちにも、このテーマパークからは水生生物に毒性がある薬剤が垂れ流れ続けています。

続報があればこの記事に追記しますね。

薬剤だけじゃない。地球にやさしくないテーマパークの裏側

植物に撒かれる薬剤

テーマパーク内にはいろんな植物が植わっているのですが、虫が寄り付かないよう薬剤散布が定期的になされています。
薬剤散布の範囲内にいる人間は屋内に退避するよう呼びかけられます。
薬剤散布する方はガスマスクのようなものを被って作業。
植物のなかには実をつけるものもあるんですが、鳥も虫も絶対に口をつけません。

希薄な節電意識

深夜の誰もいない施設に空調がガンガンに効いています。
事務所のPCモニターの電源も大抵つけっぱなしです。

ペットボトルの大量消費

従業員用のペットボトル用ゴミ箱は、夏場はいつもあふれています。
捨てるときはラベルを剥がすのがルールなんですが、ラベルを剥がして捨てている人は少数派です。
(ちなみに休憩室に給水できる設備あります。マイボトル派にはありがたい環境なのに)

香害

夏場の女子更衣室は制汗剤の匂いで満ちています。
私は化学物質過敏症ではありませんが、それでも更衣室入ると「うっ」となります。
ゴミ箱には使い捨ての汗拭きシートがうず高く積もっています。

フードロス

レストランの厨房に廃棄した食品の量と金額が書かれていたのですが、1か月で廃棄した食品の金額が私の月収を上回っていました。
テーマパーク内にはたくさんのレストランがあります。すべてのレストランからこんな感じでフードロスが出ているかと思うと……。

ひとりでに息絶えるゴキブリ

生命力の強さで知られるゴキブリさん。テーマパーク内にもめちゃくちゃいらっしゃいます。会わない日はないくらい。
でも、床のど真ん中で仰向けになって息絶えていることが多々あります。
いったいどんな薬剤がこの空間に漂っているんでしょうか。

娯楽は大事だけど、このままでいいのかな

いろいろ書きましたが、テーマパークという存在を否定しているわけではありません。
人類に娯楽は必要です。私だってテレビゲーム大好きです。

でも、地球を食いつぶすような娯楽の提供には反対です。

プロジェクションマッピングなるものがありますよね。
すごいきれいだと思いますし、こういう作品を作れるクリエイターに尊敬の念も抱きますが、あれたぶんすごい電力使ってると思います。
人類だけが楽しい娯楽のために、そんなエネルギーを使っていいんでしょうか?

私たちは地球がないと生きていけません。

ゴミを出し、海を汚し、無駄なエネルギーを使い、ほかの生き物の命を粗末にする。

そこまでしないと楽しくないですか?
そこまでして楽しみたいですか?

「夢の国」という表現があります。
現実の問題から目を背けてきれいな夢だけを見させるこのテーマパークは、たしかに夢の国でしょう。

私はそのうちここの清掃員を辞めます。
もしかしたら提案書が効いてうちの会社の薬剤は安全なものに変えられるかもしれない。
けれどほかの清掃会社は?※いろんな清掃会社が外部委託で入っています。
備え付けのハンドソープは大丈夫なの?
レストランの厨房で使われる食器用洗剤は?

このテーマパークの全部を変えることは、外部委託会社のパート清掃員には難しい。そう認めざるを得ません。

もっと地球にやさしく生きる人たちを増やさないと。
国民の大多数が地球にやさしく生きる必要性を感じたなら、大きい組織もきっと方向転換するはず。

そういう思いでこの記事を綴りました。
いつか気づいてくれますように。
地球にやさしい人たちがひとりでも増えますように。

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