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夏至のタイムリープ

夏至の数日前に、以前から取りたいと思っていたアクセス・バーズの資格を取った。ファシリテーターのユキちゃんには何年も前から受講したいことを伝えていたけど、私のタイミングが整わなかったため、数年の時を経て実現した。
中3の息子も一緒に講座を受けて資格を取ったので、もしかしたら息子の成長待ちだったのかも知れない。

アクセス・バーズは脳の思考や情報を断捨離するもので「自分のものじゃない」情報や価値観、感情、思い込みなどから解放される。
「本来の自分」とは羽のように軽くて気楽な存在だから、重くしているものをリリースすることで不安から解放されたりする。(私の体感では、やっぱり集合的無意識の影響って大きいなぁと思う)
そんなアクセス・バーズを取得した二日後に、アイソレーションタンクに入ってきた。
アイソレーションタンクとは、視覚・聴覚を遮断し、体温と同じくらいの塩水に浮かぶことで皮膚感覚や重力からも解放される装置である。
10年ほど前に3回ほど入ったことがあり、当時はまだサイキックを封印していた頃だったのにも関わらず、鮮明なヴィジョンと共に過去世や冥界、金星などにもアクセスできた。
Netflixのドラマ「ストレンジャー・シングス」の中で、サイキックなヒロインが度々入っているのを見ていたら、ふと入りたくなったのだ。
今の私が入ったら、何が見えるのだろう?と。
以前入ったアイソレーションタンクのサロンは現在タンクを扱っていないため、ネットで調べてピンときたサロン「セルフロッテ」に申し込む。
偶然にも予約が取れた日は夏至だった。

10年ぶりに対峙したアイソレーションタンクは、オーナーさんの緻密なセッティングにより只事じゃないオーラを放っていたので、思わず言ってしまった。
「宇宙船みたいですね」

実際、タンクに入って浮かび徐々に水の揺れが収まると、ピタッと体が静止するのだが、体感としては、物凄い速さでどこかへ流れていくような感覚に陥って、とても驚いた。
何度か耳栓から空気が漏れたりしてタンクから出たり仕切り直したけど、ようやく変性意識なのか、無の感覚へ落ちていく。
今回、霊視のように何かの情報を“取りに行く“ことはせず、今の自分に必要なところへ繋がることを意図した。

最初に見えたのは壁紙だった。それから柱の質感、食器棚、祖母の部屋。
これは久しぶりの「懐かしい実家」だ。それも、ごく初期の頃の。
すぐ横で私のメイン・インナーチャイルド、「3歳のさっちゃん」があちこち案内してくれた。
階段の壁紙、そうだった、こんな柄だった。家の前の塀はこんなデザインだった。そうそう、こうやってよく塀に座ってたっけ。ヴィジョンの中で姉や近所の友達と一緒に塀に座って写真を撮ってもらうシーンも見えた。
(その時の写真は実際に古いアルバムにも入っている。)
一番懐かしくて感動したのは、すっかり記憶から消えていた三輪車だった。
大好きだったレトロなオレンジ色の三輪車は、ハンドルのとこにカラフルなヒラヒラがついていて、少し色が剥げて鉄の質感が見えていた。
「3歳のさっちゃん」はとてもご機嫌に飛び回っていて、重力を持たない彼女は屋根に登ったかと思えばすぐ横に降りてきたりした。
そして、懐かしい実家ツアーが自動的に進んでいくと、今度は二階で「3歳のさっちゃん」が面白くて仕方ないような顔で、声を立てないように小さな手で口を抑え、もう片方の手で何かを指差した。
そこには、寝っ転がって野球中継を観ている母がいた。
これは、記憶にも残っている「あるシーン」が再現されていたのだ。

当時、3歳か4歳くらいだった私はひとりでレゴで遊んでいて、母は寝っ転がって野球中継を観ていた。
その時の母は怒ったような顔をして、普段ほとんど興味のないはずの野球中継を観ていたので、不思議に思えたのだ。
何と声をかけたらいいのかわからず、
「どっちを応援してるの?」
と聞いた。すると母はぶっきらぼうに
「負けてる方」
と答えた。私は少し考えてから、
「同点になったらどうするの?」
と聞いてみると、その瞬間、母は怒鳴った。
「うるさいわね!いい加減にして!」
そんなセリフだった気がする。私は驚いて大泣きしてしまったことを未だに覚えているので、よっぽど驚いたしショッキングだったのだと思う。

現れたヴィジョンでは、やはりテレビから野球中継が流れ、しかめ面の母が寝っ転がって眺めていた。だけど「3歳のさっちゃん」は嬉しそうにその光景を見せているから、まだ怒鳴る母も、怒鳴られてしまう私もいない。
これは、どうしたらいいんだろう?
そう思った瞬間、何かを理解した私は、しかめ面の母の頭を触り、アクセス・バーズを始めた。

すべての工程はできなかったものの、母の表情はだんだん穏やかになり、緩み始め、寝てしまったようだった。
それからしばらくすると、どこかから音楽が聴こえてきた。
徐々に現実に引き戻されていく。タンクの終了時間を告げる音楽が少しずつ大きくなっていき、私はようやく起き上がった。
(この音楽で戻ってくる感じは、映画「インセプション」の現実に帰るシーンとそっくりだった)

後日、アクセス・バーズのファシリテーターをしてくれたユキちゃんにこの時の話をしたのだが、「母がテレビを観てて怒られたシーン」としか伝えなかったのに、開口一番
「私の知り合いの野口整体の先生が、野球中継を観ていた時にね」
と言い出してめちゃくちゃ驚いた。野球中継とは言ってないのに!
とにかく、ユキちゃんの話はこうだった。

野口整体の先生が野球中継を観ていると、とある選手のフォームが良くなくて実力が発揮されていなかったらしい。それで先生は画面越しに「愉気」をすると、選手のフォームが改善され、試合の流れも変わったというのだが、実はその野球中継は録画なのだ。
録画だったのに、影響を与えることができた。
あるいは、未来の先生が影響を与えることが織り込み済みだったのか…?
正解はわからない。けれども、時空を超えて影響を与えることができるのかも、ということをユキちゃんは話してくれたのだった。

「3歳のさっちゃん」は、バーズを取得した私なら過去の母を癒すことができるとわかっていたから嬉しそうだったのだろうか。
潜在意識って、一体どこまで見通せるのだろう。
そしてどこまで未来を織り込み済み?

私はどこまで私をわかっていて、あなたはどこまであなたをわかっている?

そんな夏至の日の空は、やはり摩訶不思議な色をしていた。


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