当事者の会代表平本淳也氏の発言を検証する②
前回の記事も合わせてお読みいただくと、多少は話の流れが分かりやすいかと思います。よろしくお願いいたします。
はじめに
前回の記事では、平本淳也氏がBBCの取材に対して「僕そこまでやられてないんで。だから被害にも何も遭っていない」と語っていたことに触れた。そして、それが取材者の見解のとおり、自分の身に起きたことを「整理して受け止めることができ」ていないがゆえの言葉だったのか、ということについて考察した。
そして、受け止めることができていなかったわけではない、という結論に至った。
とはいえ、私個人としては、平本氏がこれまでに語ってきたような行為をジャニー喜多川氏が実際に行っていたのだとすれば、それは犯罪行為だと思う。された側がその行為についてどう思っていても、たとえ気にしていなかったとしても、犯罪行為であることに変わりはないと思う。今回の記事は、このことを前提として書いている。
平本氏はBBCに証言を口止めしていた?
さて、平本氏はBBCの取材について、最近までこう説明してきた。
これは6月6日の記事だ。その後、9月13日の記事ではこう書いている。
なんと、「被害を受けた」という話は「放送されるのが怖いから止めてもらった」のだという。
長きにわたって実名・顔出しで情報を発信しつづけ、ニューヨーク・タイムズの取材を受けたこともあるという平本氏が、何を恐れたのかは分からない。しかしこれが事実ならば、取材者も平本氏が「整理して受け止めることができ」ていないわけではないと、分かっていたことだろう。平本氏は自身が受けた被害について語り、その上、怖いから放送には乗せないでくれとまで言ったのだから。
(そして、前回の私の考察はほとんど無意味だったということになる。)
立場の変化
しかし、そんな「放送されるのが怖いから止めてもらった」ほどの平本氏が、7月には「当事者の会」の代表に就任した。少し不思議な感じがする。
理解のヒントを得るため、改めて平本氏のブログを読んだところ、以下のようなことが書かれていた。カウアン・オカモト氏の会見の翌日、4月13日の記事だ。
「立場も変えないとならない」とある。
この文章を読んで、先ほど引用した平本氏の発言を改めて思い出した。
おそらく平本氏は、時と場合に応じて立場を選ぶことができる人なのだろう。元ジャニーズJr.として、ジャニーズ事務所を愛している者の立場。そして、被害者としての立場。それらを選択しなおした結果、平本氏は当事者の会の代表に就任することになったのかもしれない。
ジャニーズを宣伝してきた平本氏
しかし私は、平本氏のこうした態度は、よいものだとは思えない。
前回も書いたように、平本氏はジャニーズ事務所に関して暴露もしてきたが、一方で褒め称え、宣伝もしてきた。女性たちには周囲の少年を事務所に入れるように勧め、事務所に入りたいという少年に対してはオーディションの指南をして、本人の談によれば「結構な合格率で送りこんでいる」という。
また、ジャニーズJr.の保護者から、指導を仰がれることもあったそうだ。
親が子供に性接待のような行為を勧めるのは、明らかに虐待だ。こうした質問に対して、平本氏がどう答えていたのかは分からない。だが、少なくとも、「咎めた」という話はしていないため、看過してきたようにも聞こえてしまう。
「ジャニーさんは強要しなかった」?
そもそも平本氏は、ジャニー喜多川氏の「加害」行為に対して、全否定的な見方はしていない。以下は6月6日、そして6月8日の記事からの引用だ。
「被害」に対する平本氏の見方
これらの発言だけをみると、平本氏が「被害などなかった」という自己暗示をかけているようにも思えるかもしれない。しかし、実際に平本氏が伝えたいのは、そういうことではない。
平本氏の中では、「被害者」が明確に定義されているのだ。その定義とは、「ジャニー喜多川氏から性的接触があったか否か」ということではない。このことについて明確に書かれているのが、6月5日のブログ記事だ。
そして、こうも書いている。
「売春」というショッキングな表現に驚かされる。
つまり、平本氏にとっては、あくまで被害を告白した者だけが被害者なのであり、性行為の対価を得たタレントたちは被害者ではない、ということなのだろう。
ジャニーズ事務所の所属タレントたちは児童虐待の被害者なのか、それとも黙認してきた加担者なのか、という盛んに議論されている問題も、平本氏の中では方がついているようだ。
「打倒ジャニーズ」ではない当事者の会
さて、こうした平本氏の見解を要約すると、「ジャニー喜多川氏からの性的接触は、拒んだり逃げたりすることが可能だった。だから、そこに留まったタレントは、自ら行為を受け入れたといえる。よって、被害者ではない」となる。
性的被害に関心がある人々と平本氏の間には、やや温度差があるのではないだろうか。
そしておそらく、ジャニーズ事務所の解体を望んでいる人々との間にも、少なからず温度差がある。
平本氏は、事務所の存続を強く望んでいるようだ。
平本氏の理論に則って考えるならば、被害者とはあくまで被害を訴え出た人々のことであり、現役の所属タレントは被害者ではない。だから平本氏は、彼らが被害者のために稼ぐことに関して、問題があるとは捉えていないのだろう。
さらに言えば、平本氏は自身が人々に対して事務所入所を勧めてきたことについても、問題があるとは思っていないのかもしれない。ジャニー喜多川氏から性的接触があったとしても、嫌ならやめればいいだけで、その選択は本人に委ねられている。だから、入所を勧めたこと自体に問題はない……そんなふうに考えているのかもしれない。
ここまで書いたところで、弁護士ドットコムニュースから新たに、平本氏のインタビュー記事が出た。
平本氏がこれまでジャニーズ事務所に肯定的な書籍や記事を書いてきたのはなぜなのか、その理由について話している記事だ。
それについても取り上げたいが、このまま書き続けると長くなってしまうので、記事を分けることにする。
↓こちらの記事に続きます。