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めんどくささの爆発。

 先日、2、3ヶ月振りに知人から連絡をもらった。
 文面は『久しぶり!辞書でも書いてるんか!』と言う、下手でつまらん小説なんて書いてないで、たまには連絡よこせ的な、チクリとしたイヤミ入りの他愛もないものだった。
 これが2週間とか3週間振りのラインであったなら、私は例によって知らぬ存ぜを決め込んだおそれがあったが、なんと言っても随分と間を開けてしまっている。これはなにかしら返信せねばさすがにマズいだろうと予見した。
 通常であれば私は、『お疲れ様!』とか、『おっ!お久やねー』的な当たり障りのない書き出しで送るのだが、『わー!久しぶり〇〇さん!』などと言う、なぜかテンション高めの書き出しで返信してしまった。
 その後、お互いに変わり映えのない近況報告をし終わると、私は非常に困ってしまった。
 話題がないのだ。そもそもこの知人とはとあるバンドが好きという共通点以外、余り接点がないのだ。更に悪い事に、この知人も私も、趣味らしい趣味を持たない。
 せめてどちらか一方がなにか趣味を持っていれば『この前趣味の〇〇してさ』的に話題を膨らませる事ができるだろう。
 余り話す事が思いつかないので、ついつい私の返信も、短文かつぎこちないものになってくる。するとついに知人が強烈な1言
『元気無さ気なん?』を放ってきた。

 その一言に私の困惑は極点に達した。
 私は元来パリピ気質でも熱血スポーツ気質でも無く、どちらかと言うとぼそぼそ喋るし、見た目が奇抜な割に大人しいと評される位だ。
 根暗陰湿とまでは言われないけれど、普通にしてても『元気だしなよ〜』などと言って肩を叩かれたりするような始末の人間だ。
 すなわち私は知人に気を使ってやり取りしていたのに、いつの間にか無用の心配をされ始めていたのだ。
 こうなると私には悪い癖がある。
そう、『めんどくさい』が頭をもたげて来るのだ。しかも私の中に巣食うめんどくさいは非常な速度で膨張し、一瞬で人の皮を被っためんどくさいに変化してしまう。
 とはいえせっかく勇気を出して(憶測ではあるけれど……)久しぶりに連絡をくれた知人に対して、このままでは余りに申し訳ない。
 そこで『いつも元気無さ気が取り柄だから笑』
と言う冗談に転じてみた。すると今度は
 『いつも元気無いかは知らんけど……』
 『陰にこもっとるんか?』
 などとついに本格的に心配をされ始める。
 最早私のめんどくさいは爆発寸前だった。
 それでも窮地を打開しようと私は、
 『陰キャだからさ笑』と言う一言の後に笑ってる可愛らしいスタンプを送信した。
 数分後、『陰キャやめなよ』
 と言う無情な一言が私の携帯に届き、その瞬間めんどくさいが爆発した。私は携帯を放り投げ、睡眠に耽った。
 そして今に至るまでなんら返信をしていない。このままではまたしても音信不通気味の薄情者と揶揄されてしまうだろう。
 けれどなんと返信するべきか、その後もまたこじれた会話になったらどうしよう?なんて思案すると『あ、めんどくさい』となってしまうのだ。
 私の中のチャンピオン『めんどくさい』様に打ち勝つ方法。誰か知っているなら、
 是非ご教授願いたいものである。
 
 

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