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FOMCのドットチャートをバイオリンプロットで見やすくする

目次
 1. FOMCのドットチャートとは
 2. ドットチャートの見にくい理由を考察する
 3. ドットチャートをビジュアル化してみる
 4. さらに進化させてみた
 5. 味気ないドットチャートも工夫次第で生き生きと

1.FOMCのドットチャートとは

 FOMCのドットチャートとは、米連邦準備理事会(FRB)が毎年3、6、9、12月に公表している米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの政策金利予想のことである(図1、2024年3月に発表)。FOMCメンバーは現在19人おり、各人の金利予想をドット分布として表現したもので、世界経済に大きな影響を与える米国政策金利の見通しを示す重要なチャートである。 ドット分布の中央値から、市場は今後の利上げや利下げの回数を予想することになるのだが、FOMCの予想は当たらないという揶揄もよく聞く。経済は生き物と考えれば致し方ないと思うが、そもそもドットチャートがわかりにくいのでFOMCのコミュニケーションツールとしての機能が弱いという側面はないだろうか。ドットチャートを進化させて、FOMCの意図をより正確に理解できるチャートに進化できれば金利予想の精度が上がるのではというのが、本投稿の動機である。

図1. FRBのデータを元に著者が作成

2.ドットチャートの見にくい理由を考察する

 図1が示すように、ドット分布は一見点の集まりである。分かりにくい原因は、①意見の分布の視覚化が不十分、②中央値がどこか分からない、③現在の政策金利が表示されていない、④メンバーの意見の集約である平均値と中央値のギャップを明示できていないためと考えた。
 補足すると大事なのは将来の政策金利を表す中央値なのだが、現在FOMCメンバーを表した19個の点の下から10番目の点である。探すのに一苦労である。
 現在の政策金利も示しておく必要がある。政策金利は0.25%の幅で表示される。さらに1回あたりの変動幅は0.25%である。現政策金利とのギャップの大きさで金利の上げ下げの回数が推測できる。

3. ドットチャートをビジュアル化してみる

 上記を踏まえ、まずバイオリンプロットで視覚化を強調したものが図2である。大分印象が変わったのではないか。意見のブレが各プロットの縦軸の上下の幅で明示できているし、金利が何%に集約されているかは横軸の幅で視覚化されているからである。2025年はタカ派とハト派で政策金利に最大2.7%、その差は2026年に至っても2.5%と縮まっていない。また1名極端なタカ派がいることが分かる。

図2. FRBのデータを元に著者が作成

4. さらに進化させてみた

 さらに②中央値と③現在の政策金利の表示をしたものが図3である。これでさらに分かりやすくなったと思う。赤丸が中央値なのでFOMCメンバーが考える各年の政策金利である。利下げの幅は0.25%/回が基本だから、2024年は3回、2025年は6回、9回の利下げと考えていることが分かる。
 なお、Longer runは点が18個しかなく正しい中央値は下から9番目と10番目の間になるので少し下にあるが、今回はご容赦いただきたい。

図3. FRBのデータを元に著者が作成

 さらに平均値の推移を緑の点と線で表した。2024年についてはFOMCメンバーの平均的な意見は実はもっと高い年2回の利下げに近いが、1名の意見で辛くも年3回の利下げに見えたというのが実情ということが分かる。
 さらに2025年と2026年のように意見のばらつきが大きい年は、両極端な意見の影響を除くという点で中央値の採用は正しいのではないかと推測する。
 平均値ベースで見ると、極端なタカ派の影響を受けているにも関わらず中央値から下にあることからどちらかというと利下げしたい人が多い、つまり2024年末から2025年にかけて経済が減速するとみている人が多いというのが2023年3月時点の姿と見てとれる。
 最後に改めて図1. と比較してみた。皆さんの印象は変わっただろうか。

図4. FRBのデータを元に著者が作成
図1. FRBのデータを元に著者が作成

5. 味気ないドットチャートも工夫次第で生き生きと

 ただの点の集まりから工夫次第で色々な情報が読み取れることが分かった。次回は2024年の政策金利予想が過去から現在に至るまでどのように変化してきたのか、それを踏まえて6月のFOMCがどうなりそうか考察したい。
 なおビジュアル化をするために用いたのはPythonのプログラムである。次回のFOMCのドットチャートの発表が俄然楽しみになってきた。

6. 最後に

 読者の皆様、最後までお読みいただきありがとうございました。 

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