Windows最強の刺客 Qualcom Snapdragon X Elite
1. WindowsノートPCに搭載予定のチップ ”Snapdragon X Elite" は省電力で高性能
皆さんは、クアルコムと言う会社を知っているだろうか？
クアルコムは移動通信体の半導体や通信技術の開発を行っている企業である。半導体分野ではモバイル用SoC ”Snapdragon”を展開し、ハイエンドのスマホを中心に高いシェアを持っている。また技術力が非常に高く、特許ライセンスビジネスに長け、法廷紛争にも強い印象がある。例えばアップルはクアルコムとの法廷闘争に勝てず、2019年に訴訟を取り下げ和解金を支払うとともに、6年間のライセンス契約を結ぶことになった。
そのクアルコムが昨年来猛烈プッシュしているのが、Snapdragon X Eliteである。WindowsノートPC搭載予定で非常に高性能らしい。当初リークされたベンチマークの値に疑問の声もあったが、6月と言われる発売時期が近づくにつれ、自信を深めたのか宣伝に余念がない。WindowsノートPCでMacbookのような電池持ちの良いノートPCが果たして発売されるのか興味を持ったので調べてみた。
2. Apple Silicon M3、M3Proと単純比較してみた
Macbookの心臓部はApple Siliconである。2020年11月にARMの技術を用いた新しいチップのM1を「省電力シリコンとしては世界最速のCPUコア」とAppleが発表、実際その優れた性能でMacの世界ではIntelが駆逐された。X Eliteも同じARMの技術を用いたチップである。クアルコムはWindowsノートPCで同じ離れ技を実現したいのだろうか？そこでベンチマークの比較できるサイト”cpu-mokey”を使ってApple Silicon M3、M3 Proと単純比較を行った。
表１は各々の技術仕様を並べたものである。
X Eliteは性能重視のコア構成であるにも関わらず、消費電力も低そうだ。AI性能も高いがAppleも含めてこれで何が嬉しいのか現時点ではよく分からない。ただ最大メモリ容量が大きい。AIモデルをPCに載せるためにはメモリが大量に必要になると言われている。Windowsはメモリの増設コストが安いので嬉しいのではないか。
次にベンチマークの結果を表２にまとめた。X Eliteの数字は検証前のもののため信頼できないが、性能はM3に勝りM3 Proに迫るものにも見える。私はM2 Proを用いて全く不満がないので、X Eliteの性能は控えにみてもかなり期待できるのではないか。
3. IntelやAMDのチップとも比較してみた
次にWindowsノートPCで主力となっているIntel, AMDのチップと比較をしてみた（表３）。チップの種類が多く比較対象の選択が難しいが、できるだけ最新の高性能のものと比較した。表３を見ると性能も省電力性能も圧倒的にように見えてしまう。
4. 普及のネックになることは
では弱点はないのか。それは、これまでのWindowsソフトが動かせるかと、価格ではないか。
実はARM版のWindows（Arm版Windows 10、2017年）は昔からあるが、結局普及しなかったようだ。理由は、Windowsで普段使えているソフトが使えないケースがある、性能も中途半端、でも値段が高い、一言でいうとコスパが悪かったと集約できそうである。
今回X Eliteは、ほとんどのWindowsゲームで実力を発揮できると主張している。MacになくてWindowsにあるのは豊富なゲームのソフトだろう。ゲーム分野の対応状況の説明は、ある種の差別化戦略の意図と受け取れるが、全部とは言ってはおらず実際は販売後でないと分からない。
値段も不明だが、どうも高いようである。これから明らかになるAI性能含めて、このチップでしかやれないことを期待してしまう。
5. 結論
これまでをまとめると、Snapdragon X EliteはWindowsノートPCに一石を投じそうである。もしかしたら普及するかもしれない。となると儲かるのはどこか？クアルコムなのか？それともARMホールディングス（ARMアーキテクチャの知的財産ライセンス提供会社）なのか？当初後者と思っていたが、そうでもないようだ。クアルコムは買収したNuviaという会社の独自技術を用いていると、ARMホールディングスには主張しているらしい。
今度はクアルコムという会社に興味が湧いてきたいので、調べてみようと思う。
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