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スイカとじいちゃんたまにばあちゃん

じいちゃんが亡くなってから、そろそろ5年くらい経つだろうか。じいちゃんに会わなくなって、スイカを食べることがめっきりなくなった。

夏になって、お盆にじいちゃんとばあちゃん家に行くと、みかん農家だったじいちゃんはいつもスイカを出してくれた。じいちゃんは孫のぼくたちにただ「美味しいから食べ」と言って、ばあちゃんは地下水で冷やしたスイカを銀色のボウルに入れて持ってくる。

美味しい。べつに驚くほど美味しいわけじゃない。シャインマスカットみたいなあの美味しさとは違う。正直たまにかすかすになって微妙な時もあったよ。でもじいちゃんの畑でとったスイカを、ばあちゃんが出してくれて、特に何を話すわけでもなく、あの場所で食べるスイカは美味しかった。

家に行ってばあちゃんが「畑よ」と言ったら、デニムの帽子を被ったじいちゃんを畑に迎えに行くんだ。戦争も、両親や兄弟のことも全部乗り越えてきたんだ。かっけーぜ。じいちゃん。優しいぜ。ばあちゃん。

ばあちゃんが先に逝って。じいちゃんも。久しぶりにお家を見に行ったら、人気の名残がだいぶなくなってたな。

じいちゃん元気かなー。スイカ食べたら、ちょっとじいちゃんとばあちゃんに会えねーかなー。


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